ペア76 再びの除雪車は灯を蹴散らして ハードエッジ

ペア76

◎飼ふごと

へてひと日しじみを飼ふごとし 大石悦子

 

山中に火を飼ふごとし夏炉なつろく 鷹羽狩行たかは しゅぎょう

 

飼ふごとく僧の見てゐる蟻地獄ありじごく 橋本榮治   えいじ

 

月影の銀閣ぎかく水を飼ふごとし 藤村真理

 

釣堀つりぼりに囲ふ冬日は飼ふごとし 鈴木鷹夫   たかお

 

色欲しきよくさる飼ふごとくかれの中 矢島渚男    なぎさお

 

 

◎蝶の指紋

初蝶に指紋しもんのこさぬやうにる 仮屋賢一かりや けんいち

 

 

わが指紋とどめはるかへ黒揚羽くろあげは 片山由美子

 

 

◎ぱか、ぱかん

改札のぱかんと開いて更衣ころもがえ 金子敦    あつし

 

ぱかと開く缶ペンケース夏のちょう ハードエッジ

 

猫缶のふたをぱかんと大旦おおあした 菊田一平

 

 

◎勉学の居眠り

聴講ちょうこうに居眠り多き暑さかな 会津八一   やいち

 

苦学くがくとは時に居眠り流れ星 ハードエッジ

 

 

◎船の旅

白妙しろたえ入道雲にゅうどうぐもや船の旅 ハードエッジ

 

月涼し韓国へゆく船の旅 小川軽舟    けいしゅう

 

夕焼も日々平凡に船の旅 ハードエッジ

  こんな船も、
  風船の旅家々の昼餉ひるげどき 渡邊千枝子わたなべ      

 

 

◎伸びたり、消えたり

吸はるれば伸ぶる乳首や冷房裡れいぼうり 森下秋露    しゅうろ

 

ふくませて乳首が消ゆる秋桜あきざくら 鈴木鷹夫

 

 

◎拒絶

嫌がりぬ瀕死ひんしの金魚突つつけば 北大路翼きたおおじ つばさ

 

いやいやをしながら水洟みずばなかれ ハードエッジ

 

 

◎季節と薬

薬局の灯のあきなへる避暑名残ひしょなごり 行方克巳なめかた かつみ

 

秋めくや隙間すきまのめだつ薬箱 鶴岡加苗つるおか かなえ

  やがて、秋も深まった隙間は、
  隙間なくおさまる積木冬隣ふゆどなり 鶴岡加苗

 

 

◎2度目

もう一度神輿みこしのとほる秋日和あきびより 柏柳明子かしわやなぎ あきこ

 

再びの除雪車は灯を蹴散けちらして ハードエッジ

 

けて又除雪車街をゆつくりと 深見けん二

 

 

◎雪の針金

さびえた有刺鉄線ゆうしてっせん雪のはて 葛城蓮士かつらぎ れんじ

 

何を守る雪降る有刺鉄線は ハードエッジ

 

鉄条網てつじょうもうひとつひとつのとげに雪 金子敦

 

せて有刺鉄線ひそかなり 北大路翼

 

以上です