削除:1ペア/2021.3.13
ペア76
◎飼ふごと
水替へてひと日蜆を飼ふごとし 大石悦子
山中に火を飼ふごとし夏炉焚く 鷹羽狩行
飼ふごとく僧の見てゐる蟻地獄 橋本榮治
月影の銀閣水を飼ふごとし 藤村真理
釣堀に囲ふ冬日は飼ふごとし 鈴木鷹夫
色欲を猿飼ふごとく枯の中 矢島渚男
◎蝶の指紋
初蝶に指紋のこさぬやうに触る 仮屋賢一
わが指紋とどめはるかへ黒揚羽 片山由美子
◎ぱか、ぱかん
改札のぱかんと開いて更衣 金子敦
ぱかと開く缶ペンケース夏の蝶 ハードエッジ
猫缶の蓋をぱかんと大旦 菊田一平
◎勉学の居眠り
聴講に居眠り多き暑さ哉 会津八一
苦学とは時に居眠り流れ星 ハードエッジ
◎船の旅
白妙の入道雲や船の旅 ハードエッジ
月涼し韓国へゆく船の旅 小川軽舟
夕焼も日々平凡に船の旅 ハードエッジ
こんな船も、
風船の旅家々の昼餉どき 渡邊千枝子
◎伸びたり、消えたり
吸はるれば伸ぶる乳首や冷房裡 森下秋露
ふくませて乳首が消ゆる秋桜 鈴木鷹夫
◎拒絶
嫌がりぬ瀕死の金魚突つつけば 北大路翼
いやいやをしながら水洟を拭かれ ハードエッジ
◎2度目
もう一度神輿のとほる秋日和 柏柳明子
再びの除雪車は灯を蹴散らして ハードエッジ
更けて又除雪車街をゆつくりと 深見けん二
◎雪の針金
錆生えた有刺鉄線雪の果 葛城蓮士
何を守る雪降る有刺鉄線は ハードエッジ
鉄条網ひとつひとつの棘に雪 金子敦
雪載せて有刺鉄線ひそかなり 北大路翼
以上です