追記:目刺・鳥雲に・桜草/2020.8.12、星のひかり・月見草/2020.6.1、十六夜・初電車・歌留多/2020.3.21、暗幕・真昼/2019.9.24、1句改/2019.1.9
ペアリング29
◎川を越す
春の川いくつも越えて友嫁けり 黛まどか
川にあらねど、
嫁ぐ妹と蛙田を越え鉄路を越え 金子兜太
鉄橋で越す雪解の大井川 山口誓子
電線の大河をよぎる良夜かな 奥坂まや
鉄橋を夜汽車が通り鮭の番 草間時彦
大年の水道管が川を越す ハードエッジ
鉄橋にちらと富士見ゆ初電車 ハードエッジ
◎影というもの
影といふものの色めき雛飾る 村田脩
硝子にも影といふもの梅三分 林昭太郎
箒木に影といふものありにけり 高濱虚子
秋風に影といふものなかりけり ハードエッジ
搗く餅に影といふものなかりけり ハードエッジ
◎年の差
目刺焼くや一つ違ひの女房と 長谷川零餘子
従姉妹とは一つ違ひや花衣 星野椿
鳥雲に契りて今も七つ違ひ 鷹羽狩行
どちらか死ぬまで九つ違ひ桜草 小川軽舟
いつまでもひとつ年上紺浴衣 杉本零
麦笛や一つ年上女の子 高濱虚子
年下の亭主持ちけり玉子酒 五所平之助
年下の兄嫁よりの御慶かな 橋本榮治
歌留多とるいつよりかみな年下に 渡邊千枝子
◎鯛と鯉
近海に鯛睦み居る涅槃像 永田耕衣
谷に鯉もみ合う夜の歓喜かな 金子兜太
◎光の表裏
暗幕の向うあかるし鳥の恋 田中裕明
満月の裏まつくらや沈丁花 小川軽舟
星のひかり地球で止まりさくら満つ 和田耕三郎
日輪を隠す日光日日草 池田澄子
月光の途中に地球月見草 小川軽舟
満月の丸き真昼がこちら向き ハードエッジ
◎印影
石鹸の刻印深き立夏かな ハードエッジ
饅頭に濃き焼印の端午かな 池田澄子
◎橋々
日本橋京橋銀座春の雪 ハードエッジ
久松橋蠣浜橋や雲の峰 久保田万太郎
十六夜の水の市ヶ谷飯田橋 川崎展宏
クリスマス地下に京橋日本橋 鷹羽狩行
◎ありどころ
夏シャツに見ゆる背骨のありどころ 青本瑞季
叱られて寝冷の臍のありどころ 嶋田麻紀
凩や東京の日のありどころ 芥川龍之介
凧きのふの空のありどころ 与謝蕪村
◎取扱注意
手で持つなてふ手花火の売られゐし 後藤比奈夫
洗ふ時やさしくせよといふ水着 ハードエッジ
◎外皮
だぶだぶの皮のなかなる蟇 長谷川櫂
いちまいの皮の包める熟柿かな 野見山朱鳥
以上です