ペアリング28 その昔栄えし港ラムネ飲む 岸本尚毅

追記:グルーガン/2019.7.23、セーター/2019.6.20、薔薇・白桃・桃/2018.9.10

ペアリング28

◎糸の長さ

針のひく糸の尾ながき弥生やよいかな  久保田万太郎

春昼しゅんちゅうや糸の尾長くグルーガン  利普苑りーふぇんるな

夕鵙ゆうもずやはじめは長き刺繍ししゅう糸  鶴岡加苗

 

 

◎朝昼夜

朝寒ぢや夜寒ぢや春はくるるのぢや  佐藤紅緑   こうろく

朝昼と降つて雨夜の桜かな  ハードエッジ

こほろぎの夜鳴いて朝鳴いてひる鳴ける  内田百閒    ひゃっけん

 

 

◎百の幻影

ゆらぎ見ゆ百の椿が三百に  高濱虚子たかはま きょし

ぼうたんの百のゆるるは湯のやうに  森澄雄

 

 

◎薄光

かたまつて薄き光のすみれかな  渡辺水巴    すいは

あけがたやうすきひかりの螢籠ほたるかご  大野林火   りんか

まゆ干してうすきひかりの信濃しなのかな  高浦銘子

 

 

◎ガラスとハンカチ

硝子戸がらすどのハンカチがし今日すこと  細川加賀    かが

硝子戸にはんけちかわき山眠る  久保田万太郎

 

 

◎宵と明け

よいよりもあかつきさみし螢籠  成瀬櫻桃子なるせ おうとうし

あかときは宵よりさびし鉦叩かねたたき  星野立子

 

 

◎斜陽

その昔さかえし港ラムネ飲む  岸本尚毅    なおき

栄えたるころの金庫や冬館ふゆやかた  阿部元気

咲き切つて薔薇ばらかたちえけるも  中村草田男   くさたお

白桃のいたみながらのよい匂い  池田澄子

いたみつつ桃のかたちをしていたり  池田澄子

セーターの上にセーター街古りぬ  小宅容義おやけ やすよし

 

 

◎海に競う

きそふとも見えぬ遠さのヨットかな  三村純也

前後して競ふ帆柱秋の潮  川崎展宏    てんこう

 

 

◎白牡丹

白牡丹といふといへども紅ほのか  高濱虚子

紅ほのかてふ白牡丹目のあたり  後藤比奈夫

 

 

◎重厚良し

羽子板の重きが嬉し突かで立つ  長谷川かな女

日めくりの厚きがうれしお元日  阿部元気

 

以上です