追記:「割る」・豆の飯・踊り子・夜の梅・早乙女・蝉の穴・日向ぼこ・着ぶくれ・手毬唄/2018.9.2
◎和語俳句、わ行の「わ」です
◎忘る=わする
庭掃きて雪を忘るる帚かな 松尾芭蕉(ばしょう)
※帚=ほうき
亡き人がわれを忘るる夜の梅 鈴木鷹夫
蝶が蝶に出遇ふしばらく花忘れ 鈴木鷹夫
※蝶=ちょう、出遇ふ=であう
早乙女の手足忘るるまで疲れ 津田清子
水底に暑さ忘るる豆腐かな ハードエッジ
忘られし水鉄砲や水の上 ハードエッジ
崩れつつ蝉を忘るる蝉の穴 ハードエッジ
秋草の吹かるるままに忘らるる ハードエッジ
雪の降る町といふ唄ありし忘れたり 安住敦(あつし)
→UT、内村直也作詞、中田喜直作曲、倍賞千恵子歌『雪の降るまちを』
吾子とゐて吾子をわするゝ日向ぼこ 五十崎古郷
今をすぐ忘るる母や着ぶくれて 山田みづえ
湯上りの蜜柑忘るな柚子買うて ハードエッジ
※蜜柑=みかん、柚子=ゆず
手毬唄それも忘るるもののうち 後藤比奈夫
鉛筆の遺書ならば忘れ易からむ 林田紀音夫(きねお)
※無季俳句
◎詫ぶ=わぶ
柔かに出来しと詫びて豆の飯 高野素十
踊り子は掌の冷たさを詫びて云ふ 西東三鬼
水仙剪る錆びし鋏を花に詫び 桂信子
寒夕焼お詫びの如く赤くある ハードエッジ
◎割る=わる
割れ割れて砂に紛るる桜貝 ハードエッジ
馬の尻の綺麗に割れて菫咲く 中村和弘
怪獣の背中が割れて汗の人 加藤静夫
柔かに割れてしまひし蝸牛 ハードエッジ
秋草の中や見事に甕割れて 波多野爽波
大石や二つに割れて冬ざるる 村上鬼城
みづからの力に割れて鏡餅 伊藤通明
鏡餅暗きところに割れて坐す 西東三鬼
以上です