ペアリング7 花菖蒲たゞしく水にうつりけり 久保田万太郎

追記:枯蓮/2020.12.23、古暦+再分類/2019.8.25、毛虫/2019.8.9、焚火/2019.4.7、流氷/2018.10.18、石鹸玉/2018.9.18、初時雨/2018.9.14、1ペア移転/2018.9.4、追加:茄子/2018.7.7、葱/2018.6.19、花菖蒲/2018.6.2、推敲:蛾/2018.3.24
ペアリング7

◎ひも吊り

ランドセルに吊るす四月の定期券  清水良郎

甚平の紐に都電の定期券  館岡沙緻(さち)
  ※甚平=じんべい、紐=ひも

 

 

◎回転体

夏草に汽罐車の車輪来て止る  山口誓子(せいし)
  ※汽罐車=きかんしゃ

走馬燈消えてしばらく廻りけり  村上鬼城(きじょう)
  ※走馬燈=そうまとう

 

 

◎揮発性

美しきものはく消えしやぼん玉  鷹羽狩行たかは しゅぎょう

夕焼のはかなきことも美しく  稲畑汀子(ていこ)

過ぐといふこと美しや初時雨はつしぐれ  京極杞陽きょうごく きよう

初雪の消ゆるものとし美しき  嶋田一歩

 

 

◎類推

少女かもしれぬ初蝶はつちょう通してやる  鈴木鷹夫

狡さうな鳩が歩きて宵閻魔  岸本尚毅(なおき)
  ※狡さう=ずるそう、宵閻魔=よいえんま

約束を守らぬやうな蛾が飛び来  ハードエッジ
  ※蛾=が

男かも知れぬ毛虫を踏みにけり  中尾寿美子

 

 

◎礼儀正しく

蓑虫みのむしを無職と思う黙礼もくれいす  金原まさ子

焚火たきび離る誰にともなく会釈えしゃくして  鈴木鷹夫

外したる古暦ふるごよみなり一礼す  山田みづえ

 

 

◎液体調味料

麦秋のソースじやぶりとアジフライ  辻桃子

ちりちりと醤油を弾く秋刀魚かな  ハードエッジ
  ※醤油=しょうゆ、秋刀魚=さんま

 

 

◎怪音奇声

きょお!と喚いてこの汽車はゆく新緑の夜中  金子兜太(とうた)
  ※喚いて=わめいて、新緑=しんりょく

ひつじ草未の刻にヴェと鳴けり  谷口智行
  ※未の刻=ひつじのこく=現在の午後2時の前後2時間頃

採る茄子の手籠にきゆアとなきにけり  飯田蛇笏(だこつ)

 

 

◎つかむ

  →和語俳句「つ」掴む にも別の例句があります
散る花を掴まんとする赤ん坊  ハードエッジ
  ※掴まん=つかまん

天瓜粉何摑まんとする手足  西村和子
  ※天瓜粉=てんかふん

初秋の蝗つかめば柔らかき  芥川龍之介
  ※蝗=いなご

虫時雨猫をつかめばあたたかき  岸本尚毅
  ※虫時雨=むししぐれ

赤ん坊つめたき葱をつかみをり  岸本尚毅

 

 

◎水に映る

花菖蒲たゞしく水にうつりけり  久保田万太郎

桔梗濃し水面に影を頒ちても  池田秀水
  ※桔梗=ききょう、水面=みなも、頒ち=わかち

冬の水一枝の影も欺かず  中村草田男(くさたお)
  ※一枝=いっし、欺かず=あざむかず

枯蓮かれはすをうつす水さへなかりけり  安住敦あずみ あつし

 

 

◎何処まで

いざさらば雪見にころぶところまで  松尾芭蕉(ばしょう)

探梅や人目に霞むところまで  福永耕二
  ※探梅=たんばい、霞む=かすむ

 

以上です
最後までありがとうございました