春 【桜餅】 丸善に檸檬わが家に桜餅 ハードエッジ

追加:振仮名/2019.3.5、デパート/2018.3.22

春は桜

しかし、春には、
花の桜以外にも、
桜鯛、桜貝、桜餅等、
桜の付いた美しい季語があるんです

今回は桜餅のご紹介
色や香り、天気や場所、家族等で分類してみました

なお、
手元のデータベースには桜餅の句が300超あるんですが、
なぜか、

甘い、塩っぱい等の味で捉えた秀句は見当りませんでした

 

◎桜の花とともに

花はまだ二分どころなり桜餅  富安風生とみやす ふうせい

花の雲言問団子ことといだんご桜餅  正岡子規  しき
花より団子

もたいなや花散る中の桜餅  ハードエッジ
拙句は無論、
もたいなや昼寝して聞く田植唄  小林一茶
雑煮食うてねむうなりけり勿体な  村上鬼城
等を、踏まえています

 

 

◎色の濃淡です

さくらより少し色濃し桜餅  森澄雄

あくまでも紅うすきこそ桜もち  山口青邨    せいそん

葉にめづるうすくれなゐや櫻もち  久保田万太郎

てゝ薄色うすいろせず桜餅  渡辺水巴   すいは

色を濃いと捉えるか、薄いと捉えるか
どっちもアリのようです

 

 

◎色の対比です

白髪はくはつ純白じゅんぱくにしてさくらもち  小澤實おざわみのる

佛壇ぶつだん金色こんじきやみ桜餅  ハードエッジ

丸善まるぜん檸檬れもんわが家に桜餅  ハードエッジ  ←梶井基次郎さんの『檸檬』!

うす紅の中の暗黒桜餅  ハードエッジ
暗黒(あんこく)の中に餡子(あんこ)が内蔵された高等テク \(^o^)/

 

 

◎香りです

とりわくるときの香もこそ桜餅  久保田万太郎

どの山のさくらの匂ひ桜餅  飴山實あめやま みのる

冷たくてほのと色香や桜餅  ハードエッジ
cf.美しき冷えをうぐひす餅といふ  岡本眸

 

 

◎葉っぱです

葉のぬれてゐるいとしさや桜餅  久保田万太郎

れてゐる葉のうら表さくら餅  高濱年尾たかはま としお

しつとりと葉の濡れてをり桜餅  下田實花しもだ じっか

桜餅裸の如く葉を去れり  篠原温亭しのはら おんてい

 

さくらもち葉をみ切れる快ありぬ  小澤實

葉ごと食べよと桜餅食べる人  鷹羽狩行たかは しゅぎょう

歯に当ててぱりりと音や桜餅  ハードエッジ

濡れている葉にどうプラスアルファするか
葉を食べる派、食べない派

 

 

◎数です

桜餅一つあまりてゆきわたる  松尾静子

三つ食へば葉三片や桜餅  高濱虚子
私の記憶では「葉三枚」だったのですが、
「葉三片」だったようです
読み方は、さんぺん、でしょうか?
三枚より、ぶっきらぼうに聞こえます

はさんぺんや、では6音ですので、
はぁさんぺんや、と7音に読みます
定型化の方便ですね
下五に置いた「日短」を、ひぃみじか、と5音で読む類

 

 

◎容器です

の中にかご美しや桜餅  高濱虚子

さくら餅籠の風流ふうりゅうつたへけり  水原秋櫻子  しゅうおうし

からつぽのにほへる桜餅の箱  長谷川櫂     かい

ひもとけば重箱じゅうばこふたとれば桜餅  ハードエッジ

 

 

◎季節とか天気です

桜餅二月の冷えにかなひけり  久保田万太郎

桜餅草餅春もなかばかな  正岡子規  ←トリプル季語!!

大風の障子しょうじとざしぬ桜餅  芥川龍之介

雨かしら雪かしらなど桜餅  深見けん二  ←色の対比も
かしら、という口語が、いかにも桜餅

さくら餅食ふやみやこのぬくき雨  飯田蛇笏   だこつ

競漕の雨となりけり桜餅  高野素十   すじゅう
競漕=きょうそう=レガッタ
私は長らく競艇(きょうてい)と誤読してました/部外秘

温泉の宿に降りこめられて桜餅  富安風生

れ傘をかたわらに置き桜餅  鈴木鷹夫

どうも、俳人は雨を降らせたいみたいですね

 

 

◎人生とか家族とか

桜餅うき世にみれんあればかな  久保田万太郎

さくらもちそなへたる手をあはせけり  久保田万太郎

父へもうで母へ買ひきし桜餅  原裕

さくら餅死んでも夫の誕生日  石田あき子

 

すぐへるところに姉妹桜餅  山田弘子

いもうとのままに老いたり桜餅  平沢陽子

桜餅子が寝て夫婦水入らず  西宮舞

 

 

◎製造と販売です

桜餅食うて抜けけり長命寺  高濱虚子

桜餅これよ長命寺桜餅  山口青邨

道明寺さまのほしいの桜餅  大橋敦子   あつこ

餅米・糯米(もちごめ)の加工品が干飯・糒(ほしい・ほしいい)、砕くと道明寺粉
粳米(うるちまい)は普通の米。漢字が似ててややこいです

尼寺の道明寺さま桜餅  ハードエッジ
東京=長命寺=ちょうめいじ=のっぺり皮の短い筒形、餡が見える。小麦粉
大阪=道明寺=どうみょうじ=つぶつぶの丸形、餡が見えない。道明寺粉

参考:東西の桜餅比較画像/グーグル
お米の主成分(8割近く)の澱粉には種類があって、
アミロペクチン+アミロース(20%前後)=粳(うるち)=普通の米
ほぼ100%アミロペクチン=糯(もち)=もち米
だそうです
でも、字面からすると、
糯、、、濡れているなら柔らかそう
粳、、、硬いのは、おこわ・強飯(こわめし)の原料か
と思うんですが、対応する漢字は逆なんですね
どうなってんの、、、?
なんか、誤解してる??
が、これ以上は私の手に負えないので各自自習でヨロシク (^_^;;;

海の見えるデパートで買ふ桜餅  ハードエッジ

 

 

◎その他

さくらもち長き湯治とうじとなりにけり  大橋櫻坡子おおはし おうはし

一門の下戸げこばかりなる桜餅  河野静雲

むつごとはこのごろとんと桜餅  茨木和生

参考:増殖する俳句歳時記、桜餅

おまけ:小倉餡の名前の由来  餡子/ウィキ

異説として、
小豆の粒が鹿の斑紋に似ていることから、
鹿と言えばモミジ、
モミジと言えば紅葉で有名な小倉山(京都)、
との連想からというものもある
(改行は引用者による)

蛇足:
炊飯器の中で異常分裂、、、八岐のうるち米

以上です