全然堂歳時記 秋の部
【西瓜】すいか
全然堂歳時記=現在、本号を含め58記事=春夏秋冬–年末年始=21-9-15-10–2-1
/2022.8.28
◎葉書俳句
※表題【西瓜】の始めの 【 が消えているのはプリンタの目詰まりです
◎テキスト
臍の緒の長く伸びたる西瓜かな ハードエッジ
臍の緒:
生れ出て臍の緒もなし石鹸玉 ハードエッジ
子羊の臍の緒ゆらし駈ける夏 大木あまり
臍の緒をつけて糶らるる露の牛 坂本孝子
臍の緒になじみし紙のつゆけくて 長谷川双魚
ふるさとや臍の緒に泣く年の暮 松尾芭蕉
地下水を汲み上げてゐる西瓜なり ハードエッジ
地下水:
日盛りの地下水を吸ふ木の根かな ハードエッジ
十五夜の地下水脈の水の音 高野ムツオ
地下水をタンクに貯めし大西瓜 ハードエッジ
改訂版:
地下水を縞のタンクに西瓜かな ハードエッジ 2022.8.29
ガスタンク:
春昼や公園もあるガスタンク ハードエッジ
緑青のガスタンクまで野の雪解 飴山實
梅雨の夜の濡れて灯す瓦斯タンク ハードエッジ
炎天へ転がりさうなガスタンク 涼野海音
日盛や梯子貼りつくガスタンク 相子智恵
冬枯れし野に球形のガスタンク 今井杏太郎
どすんどすんと置かれし如く西瓜畑 ハードエッジ
どすん:
肥料袋どすんと水の温みけり 南うみを
夜空よりどすんと雷や花菖蒲 岸本尚毅
冷房のどすんと入る音の又 高澤良一
河骨にどすんと鯉の頭かな 岸本尚毅
砲丸のどすんごろんと天高し 金子敦
初富士をどすんと据ゑて句会かな 大谷弘至
大波のどすんどすんとどんど焼 ハードエッジ
抱へたる西瓜の縞の放射状 ハードエッジ
兵器庫の如く西瓜を縦横に ハードエッジ
縦横:
花散るや縦横に組む篝の字 ハードエッジ
襖みなはづして鴨居縦横に 高濱虚子
縦横に水羊羹の詰め合せ ハードエッジ
黒板を縦横に夏期講座かな ハードエッジ
切られるか叩き割られるかの西瓜 ハードエッジ
叩き割:
薄氷をたたき割りたる山の雨 大串章
初仕事コンクリートを叩き割り 辻田克巳
丸ごとの西瓜巻き取る象の鼻 ハードエッジ
丸ごと:
丸ごとの命なりけり石鹸玉 ハードエッジ
吉野発電車丸ごと花疲れ 今田幸正
鉄橋の丸ごと錆びて山桜 ハードエッジ
丸ごとは食へぬ柿梨皮を剥く ハードエッジ
重ね着を丸ごと脱いで湯に走る ハードエッジ
謎の輪は西瓜の尻に敷くらしき ハードエッジ
孕みたる如く西瓜を抱へ来る ハードエッジ
孕み:
ぼつてりと夜を孕みし桜かな ハードエッジ
大らかに孕み返しぬ夏暖簾 富安風生
鶏頭の種を孕みてより暗し 林昭太郎
かすみ網風を孕みて静かなり 高濱年尾
流水に回転中の西瓜なり ハードエッジ
包丁が西瓜に挑む心意気 ハードエッジ
心意気:
打水に襷掛なる心意気 ハードエッジ
向日葵の花大木の心意気 ハードエッジ
逝く秋のからくれなゐの心意気 桂信子
包丁も西瓜を切つて喜べり ハードエッジ
喜べり:
裸子がわれの裸をよろこべり 千葉皓史
秋晴の茅舎を訪へばよろこべり 星野立子
干柿を作り稚拙を喜べり 後藤比奈夫
待春の神事火の粉をよろこべり 中山純子
何か我頼もしきかな西瓜切る ハードエッジ
頼もし:
蜜蜂やしきりにとんでたのもしき 高野素十
たのもしや二尺の松の若緑 正岡子規
何降ると定めぬ冬ぞたのもしき 上島鬼貫
初湯して身のあからむもたのもしき 能村登四郎
頼もし/自作:
渦潮を見ての大地の頼もしき ハードエッジ
学僧の夏痩せたるも頼もしき ハードエッジ
遅れ来る音頼もしき花火かな ハードエッジ
返り花の蕾もありて頼もしき ハードエッジ
塩ふつて汗を補ふ西瓜かな ハードエッジ
子は膝のタオルに西瓜したたらせ ハードエッジ
素麺に添へて西瓜の箸休め ハードエッジ
添へて:
古竹に添へて青竹垣繕ふ 高濱虚子
涅槃会や供物の粥に匙そへて 野村玲子
一つづつ団扇を添へて革蒲団 高野素十
田植牛貸すや牛癖いひ添へて 西山泊雲
たくさんの百合添へて死を頂戴す 正木ゆう子
新藷のあかさを添へて施餓鬼棚 中嶋秀子
白妙のおろしを添へて初秋刀魚 ハードエッジ
落葉焚手紙も添へてやりにけり ハードエッジ
新月や西瓜に迫る謀 ハードエッジ
新月:
新月は真つ黒な月秋深し ハードエッジ
翌朝の西瓜の皮に力なく ハードエッジ
力無:
淡雪の積らんとして力なし 高濱年尾
力無きあくび連発日の盛り 高濱虚子
稲雀追ふ力なき案山子かな 高濱年尾
力なく毛見のすみたる田を眺め 高濱虚子
螻蛄鳴いてをるや静かに力無く 京極杞陽
風邪の子の力なき眼が我を追ふ 西村和子
死神を蹴る力なき蒲団かな 高濱虚子
人類が西瓜の縞を読み解く日 ハードエッジ
人類:
人類にして類想のあたたかし 山田露結
人類やプロメテウスが毛虫焼く ハードエッジ
人類を地球はゆるし鰯雲 南十二国
人類の若かりしとき葡萄摘 長谷川櫂
人類の太き親指栗を剥く 仲寒蝉
全人類を罵倒し赤き毛皮行く 柴田千晶
人類に拐はれてゆく海鼠かな ハードエッジ
人類の半分女初鏡 松野苑子
人類の旬の土偶のおっぱいよ 池田澄子
◎推敲過程/テキスト/pdf
全然堂歳時記 秋 【西瓜】 テキスト推敲◎推敲過程/葉書印刷+手書き/pdf
全然堂歳時記 秋 【西瓜】葉書推敲◎葉書俳句表側
◎データベース画面/桐v10
◎補遺
紅瓜と呼んでもみたき西瓜かな ハードエッジ 2022.8.30
以上です