ペア94
◎ふ
あたたかや布巾にふの字ふつくらと 片山由美子
淋しがるかげろふのふがついてきて 小西瞬夏
◎分身
雨粒は雲の分身花篝 ハードエッジ
木に草に青き分身青蛙 ハードエッジ
牛丼は牛の分身秋の風 ハードエッジ
◎海の船
海の船遅日の河を遡る 日野草城
夕東風や海の船ゐる隅田川 水原秋櫻子
◎子供の発言
春雨の子どもがやむとゆうてやむ 田中裕明
日のくれと子供が言ひて秋の暮 高濱虚子
◎告げず、言へず
星涼しいのち宿るをまだ告げず 日下野由季
犬ふぐり指さし物はまだ言へず 西村和子
◎汝が胸
汝が胸の谷間の汗や巴里祭 楠本憲吉
汝が胸に草矢の楔うち込みし 成瀬櫻桃子
汝が胸の汗にしづもる鎖かな 小澤實
◎無宗教
神佛にすがらぬ花篝高く 黒田杏子
神佛もなくて庵や更衣 原石鼎
神仏に頼らず生きて夏痩せて 鈴木真砂女
行く秋の我に神無し仏無し 正岡子規
◎素数
その数も素数なりける素足かな ハードエッジ
重陽の素数ならざること惜む ハードエッジ
神もまた素数を愛す七五三 ハードエッジ
五に七に素数きよらに初句会 ハードエッジ
素数・素敵・素十・素人初句会 ハードエッジ
◎正装
着飾りて馬来女の跣足かな 高濱虚子
香水や両肌脱ぎの夜会服 ハードエッジ
◎困り
困るほど生姜をもらひ困りけり 西村麒麟
鮟鱇を丸々貰ひ困りをり 亀山こうき
初夢を奉行に聞かれ困りけり ハードエッジ
以上です