追加:保険屋/2021.1.31、涅槃像推敲&「鼻の穴」移動/2019.11.3、春の鼻の穴3句/2019.7.13、滝/2019.4.16、賀状/2019.1.9、ラブホ/2018.7.14、底抜2句・事故・散乱/2018.6.19、汽車/2018.5.1、お砂場/2018.2.2、2句/2017.11.21
◎ペアリング2
好対照の俳句を並べてみました
◎鼻の穴
あたたかや二つ並んで鼻の穴 ハードエッジ
仄暗きものに寝釈迦の鼻の穴 斉田仁
涅槃像の金の詰りし鼻の穴 ハードエッジ
推敲/2019.11.3:
鼻の穴に金の詰りし寝釈迦かな ハードエッジ
鼻の穴すずしく睡る女かな 日野草城
※睡る=ねむる
なきがらや秋風かよふ鼻の穴 飯田蛇笏(だこつ)
◎社会貢献と笑顔
金貸がティッシュを配る日永かな ハードエッジ
※金貸=かねかし、日永=ひなが
ラブホテル正午の水を打ちにけり 加藤静夫
金融の笑顔絶やさず水を打つ 北大路翼
※金融=きんゆう
掛大根くぐりて保険屋の笑顔 鎌田保子
◎限界突破
突支棒はづれて梅雨に入りにけり 加藤静夫
※突支棒=つっかいぼう、梅雨=つゆ
蓋あけし如く極暑の来りけり 星野立子
※蓋=ふた、如く=ごとく、極暑=ごくしょ
秋近き底ぬけぶりとなりにけり 久保田万太郎
淋しさの底ぬけて降るみぞれかな 内藤丈草
◎朱肉物語
これも黴底なし梅雨の朱肉壺 石塚友二(ともじ)
※黴=かび、壺=つぼ
峯雲や朱肉くろずむ村役場 土生重次(はぶ・じゅうじ)
※峯雲=みねぐも
◎氷の変身
氷挽く屑ましろなり夕桜 小川軽舟(けいしゅう)
※挽く=ひく、屑=くず
夏氷掻くや白雪にはかなる 日野草城(そうじょう)
※掻く=かく
◎断念
あきらめしもの何何ぞ誘蛾燈 小澤實
※誘蛾燈=ゆうがとう
小瑠璃飛ぶ選ばなかつた人生に 野口る理
※小瑠璃=こるり
熱燗の夫にも捨てし夢あらむ 西村和子
※熱燗=あつかん、夫=つま(業界慣用読み)
◎幽体離脱
滝をのぞく背をはなれゐる命かな 原石鼎
飛込の途中たましひ遅れけり 中原道夫
凍蝶の己が魂追うて飛ぶ 高濱虚子(きょし)
※凍蝶=いてちょう、己=おの、魂=たましい
◎どの花
籠に盛りてどの花となく涼しさよ 高濱年尾
※籠=こ
やすらかやどの花となく草の花 森澄雄
前句に比べて、
原因とか状況とかが書かれていない
「どの花、、、も」かと思うと、
「どの花となく」と、はぐらかされる
そういったボンヤリした表現自体も、
「やすらか」らしいかも?/2018.6.19
◎警告
毎日の朝寝とがむる人もなし 松本たかし
白日傘幼き兄を諭しゐる 大串章
※諭し=さとし
泳ぎ子を警め通る草刈女 清崎敏郎
※警め=いましめ
悴める掌を包みやり諭しけり 西村和子
悴める=かじかめる、掌=て※
大根にしみ入るやうに諭しけり 佐藤郁良
賀状みな命惜めと諭しをり 岡本眸
◎まとめの3句です
やすらかやどの花となく草の花 森澄雄
なきがらや秋風かよふ鼻の穴 飯田蛇笏
熱燗の夫にも捨てし夢あらむ 西村和子
以上、お読み頂き、ありがとうございました