削除:1句/2019.4.16、
追記:土塊/2020.3.15、土まろばせて・欠ける岨/2020.1.26、寒明&春の雪/2019.12.4、崖自身/2019.11.20、眞處女/2019.8.12、猫の子/2019.3.18
ペアリング34
◎大時計の今
春立ちし大時計鳴りつづきをり 上野泰
春暁の大時計鳴りをはりたる 木下夕爾
◎おんなのひげ
暖かし若き叔母なる口ひげも 永井龍男
眞處女の薄鬚けぶる五月かな 高橋睦郎
ほのかなる少女のひげの汗ばめる 山口誓子
◎崩壊過程
寒明けの崖のこぼせる土赤く 木下夕爾
崖の土抱きこぼしゐる春の雪 右城暮石
ほろほろと土まろばせて山笑ふ 星野立子
うららかや崖をこぼるる崖自身 澤好摩
寂寞と遅日の崖が砂こぼす 岡本眸
かげろふやほろほろ落る岸の砂 服部土芳
苗代に落ち一塊の畦の土 高野素十
水吸うて崩ゆる土塊つばめ来る 南うみを
絶壁のほろほろ落つる汐干かな 前田普羅
ほろほろと欠ける岨ありきじの声 大島蓼太
乾きては土こぼす畝揚雲雀 林昭太郎
満月や永遠に零るる崖の土 ハードエッジ
氷上に少しく土の崩れ落ち 波多野爽波
◎容れ物
猫の子のもらはれていく行く袂かな 久保より江
貰ひ来る茶碗の中の金魚かな 内藤鳴雪
◎水尾の如き
金魚売過ぎゆき水尾のごときもの 鷹羽狩行
年過ぎてしばらく水尾のごときもの 森澄雄
◎拭き掃除
拭き了へし階段に腰かけて秋 岡本眸
階段を拭いて降り来る小春かな ハードエッジ
◎虚の誕生
もの置けばそこに生れぬ秋の蔭 高濱虚子
物浸けて即ち水尾や秋の川 高濱虚子
◎月と虫
虫の音のたかまりくれば月出でん 今井つる女
鳴く虫も月に力を得たりけり ハードエッジ
月出でゝをらむ鈴虫鳴き澄むは 岸風三楼
虫鳴くやあたかも月のあるごとく 依光陽子
◎ちりはら
ばさと落ちはらはらと降り松手入 片山由美子
ちりと鳴きちりちりと鳴き月の虫 後藤夜半
◎句稿ほかほか
腹稿を暖めて居る懐爐かな 正岡子規
句を玉と暖めてをる炬燵かな 高濱虚子
以上です