解説細部修正/2018.8.23
俳句類題 連体詞
【大いなる】おおいなる
「大いなる」を使った俳句です
口語の「大きな」と較べて、
古臭いと思うか、
いや、
俳句っぽくて、いいじゃないか、
と感じるか、、、
私は結構好きなんですけどね
わが俳句データベースの収録数は、
「大いなる」は「大きな」の半分強です(370 vs 700)/2017.5
両方取り上げたいのですが、なんせ、数が多いので、
まず、今回は、「大いなる」俳句です。「大きな」は着手未定
以下、各グループ内では、だいたい季節順に並んでます
◎季節・天文です
大いなる春といふもの来るべし 高野素十(すじゅう)
人智を超えた領域
春待つといふ大いなる言葉あり 後藤夜半(やはん)
大いなる春か、大いなる言葉か
大いなる春日の翼垂れてあり 鈴木花蓑(はなみの)
解けかかってます
夜といふ大いなるもの花の冷 ハードエッジ
大いなるものが過ぎ行く野分かな 高濱虚子 ←野分=のわき=台風
同様の句に、
年を以て巨人としたり歩み去る 高濱虚子
個人的には、この辺は、あまりに稚拙で、どうもピンと来ませんが、、、 m(_ _)m
大いなる月を掲げて神の旅 ハードエッジ ←掲げて=かかげて
大いなるものに大陸寒気団 ハードエッジ
海の生む大いなるもの初日の出 高橋逸郎
初空といふ大いなるものの下 大峯あきら
◎地理です
国や湖から浜辺まで
春の浜大いなる輪が画いてある 高濱虚子
闘志いだきて、丘から降りてきたところでしょうか? (^_^;;;
しかし、私としては、
秋、誰もいない海、その浜辺に画いてみたいです ←トワ・エ・モワ
大いなる海原がこい梅雨の国 池田澄子
海原が濃い、じゃなく
海原が来い、でもなく
海原囲い、です
ふと、梅雨明けのこんな句を思い出しました
沖縄は浮かぶ花束梅雨明ける 川崎展宏(てんこう)
寒燈をめぐらせ琵琶湖大いなる 山口誓子(せいし)
寒燈囲い、です
淡海といふ大いなる雪間あり 長谷川櫂 ←淡海=あわうみ=琵琶湖
囲まれた琵琶湖の正体です
これを見に来しぞ雪嶺大いなる 富安風生(ふうせい) ←雪嶺=せつれい
晴れて良かったです
◎人や物です
春泥を来て大いなる靴となり 上野泰(やすし) ←春泥=しゅんでい
靴が泥んこになったら、、、俳句のネタ、ゲット!
大いなる身をはばからず寝釈迦かな 長谷川櫂 ←寝釈迦=ねしゃか
大いなる柱で見えぬ寝釈迦かな 阿波野青畝(あわの・せいほ)
見えずとも、寝釈迦は寝釈迦です
王様の裸に大いなる日傘 ハードエッジ
日焼にご用心
きっかけは、
大きな日傘を差し掛けられたピカソの写真です
念の為、ググってみたら、
ピカソが傘持ちなのでした
→「ピカソ日傘」/ggl
末の子に大いなるかな掛蒲団 上野泰 ←掛蒲団=かけぶとん
大人になったなら、
夏掛けのみづいろといふ自愛かな 能村登四郎
大いなる家の暗さに昼寝覚め 行方克巳(なめかた・かつみ) ←昼寝覚め=ひるねざめ
大いなるレンブラントや鉦叩 ハードエッジ ←鉦叩=かねたたき
洋物に手を出しました
レンブラントの「夜警」(1642年)は、3.63 m x 4.37 m、だそうです
鉦叩が潜む暗がりは充分あります
大いなる鏡を置きて毛皮店 岩崎純子
膨らんで見えます
大いなる毛皮をとりておじぎかな 星野立子
礼儀をわきまえてます
大いなる葱の束ある年の市 ハードエッジ ←葱=ねぎ
板のような束です
赤ん坊に敷く大いなる宝舟 有馬朗人(ありま・あきと)
即ち、
宝船目出度さ限りなかりけり 高濱虚子
◎動植物です
蜂の巣の甕の如くに大いなる 瀧澤伊代次(いよじ) ←甕=かめ
甕の如くといえば、、、
相模太郎膽如甕=相模太郎(北条時宗)胆甕の如し
春が甕なら冬はというと、、、
仏頭のごとくに冬の蜂の巣は 夏井いつき
大いなる蟻出て来たり虚子の墓 辻桃子
虚子先生なら、
蟻に限らず、何でもござれ、かと、、、
虚子の忌の蛇・蜘蛛・毛虫合ッ点じや ハードエッジ 2017.5.11
「合ッ点」は以下の句の借用です
春寒きわが誕生日合ッ点じや 高濱虚子
高浜虚子=1874年〈明治7年〉2月22日 – 1959年〈昭和34年〉4月8日
初めて読んだ時、ズッコケました
これが虚子?
桃子さんによる虚子忌の名句はこちらです
虚子の忌の大浴場に泳ぐなり 辻桃子
大いなる梨困惑のかたちなす 和田悟朗 ←困惑=こんわく
梨の少し歪な感じ
もしかして、
林檎に劣等感持ってないかね?
大いなる幹のまはりの栗ひろふ 長谷川櫂
大きな栗の木の下で、、、 >^_^<
大いなる熊を眠らせ山眠る ハードエッジ
◎最後に、
好きな句をもう一度
春の浜大いなる輪が画いてある 高濱虚子
春泥を来て大いなる靴となり 上野泰
蜂の巣の甕の如くに大いなる 瀧澤伊代次
以上です。お読み頂きありがとうございました