追記:緑蔭/2019.11.26、◎残り時間3句/2019.10.25、雪達磨/2019.9.24、香水瓶/2019.5.14、クーラー/2019.5.12、茸狩/2018.9.16、ひばり/2018.9.14、たんぽぽ/2018.8.9
ペアリング27
◎翼よ、翼
大いなる春日の翼垂れてあり 鈴木花蓑
扇風機大き翼をやすめたり 山口誓子
バスを追ひ雪の角巻翼ひろぐ 岸田稚魚
ラッセル車翼たたみて鴉に似る 宮津昭彦
凍鶴のひらかんとせし翼かな 永田耕衣
凍鶴が羽根ひろげたるめでたさよ 阿波野青畝
開きゐて真白き翼新日記 小澤克己
松が枝に初日の翼ひろげけり ハードエッジ
◎不在時
姉ゐねばおとなしき子やしやぼん玉 杉田久女
母居ねばおとなしき子や秋の雨 野村泊月
子等居ねば子を忘れをり懐手 中村汀女
◎予感予告
食はるるを鶯餅はまだ知らず ハードエッジ
ひばりひばり明日は焼かるる野と思へ 櫂未知子
たんぽぽに踏まるるつもりありにけり 山田露結
虹自身時間はありと思ひけり 阿部青鞋
落ちながらこはるると知る金魚玉 辻美奈子
明日は角切らるる日とも思はずに ハードエッジ
溶けながら考えている雪達磨 鈴木六林男
火の迫るとき枯草の閑かさよ 橋閒石
◎残り時間
香水に残り時間のありにけり 倉持梨恵
一生の残り時間の夜干梅 岡本眸
牡蠣食べてわが世の残り時間かな 草間時彦
◎空美し
雲ありて空美しや揚雲雀 ハードエッジ
炎天の空美しや高野山 高濱虚子
かたちなき空美しや天瓜粉 三橋敏雄
◎事実と解釈
燕のゆるく飛び居る何の意ぞ 高濱虚子
秋蝶の黄なるが訪ひ来誰の忌か 安住敦
◎生意気
飯蛸に猪口才な口ありにけり 中原道夫
小癪なる香水瓶の小兵ども ハードエッジ
鳰小癪なしぶきあげにけり 加藤静夫
◎からからと
囚はれの身をからからとラムネ玉 ハードエッジ
からからと雨戸を廻す杜若 長谷川櫂
からからと鳴子の音の空に消え 高濱虚子
晴天にからからとひく鳴子かな 村上鬼城
からからと落葉追ひ来て追ひ越しぬ 星野立子
からからと初湯の桶をならしつつ 高濱虚子
◎一巡
灯台を廻る楽しさ夏燕 ハードエッジ
行く我をひとめぐりして秋の蝶 星野立子
◎犯行現場
冷房が止まり人質めいてくる 加藤静夫
「でも犯人はクーラーをつけてくれました」 北大路翼
犯人の飲み掛けアイス缶コーヒー 守屋明俊
投降のごとく下り来る茸採り 中村孝史
◎本の質感
緑蔭や脇にはさみて本かたき 藤田哲史
冬ぬくし絵本の厚き一頁 鶴岡加苗
雪の夜の閉ぢて絵本は板の如 ハードエッジ
以上です