角川俳句賞2024 落選作 プランB 引力を楽しむ春やゆやゆよん

角川俳句賞 2024
プランB「甘き空缶」50句
落選作

◎葉書俳句

 

 

 

◎テキスト

あたたかで長閑のどかな日々が続きます ハードエッジ

日々/自作:
なによりも日々日の永くなりしこと ハードエッジ

横にして傘をバサバサ梅雨の日々 ハードエッジ
夕焼も日々平凡に船の旅 ハードエッジ
ハンカチと生れて日々を清らかに ハードエッジ
早寝早起き避暑地の日々に少し飽く ハードエッジ
蟻地獄日々の手入の行き届き ハードエッジ

朝顔に日々新しき朝が来て ハードエッジ
朝顔や命の日々を咲き捨てて ハードエッジ

引力を楽しむ春やゆやゆよん ハードエッジ

引力:
ぶらんこの引力圏を脱すべく ハードエッジ
引力も長閑に花と遊ぶなり ハードエッジ

プール出て引力圏に戻りけり ハードエッジ
万緑は引力窓に身を乗り出し 広渡詩乃

うすうすと月の引力鮭帰る 藤村真理
柿熟れて引力の効きはじめたる 大串章

数へ日の引力圏に引き込まれ ハードエッジ

喜色きしょくとは朝寝りたる子のつぺ ハードエッジ

喜色:
春燈に喜色ありけり自づから ハードエッジ
宵といふ喜色を以て春燈 藤田湘子

冬至なり一番星に喜色あり 相生垣瓜人

繭玉の揺るるは喜色こぼすなり 上田五千石
福寿草よりかも苔に喜色あり 後藤夜半
福寿草一つ一つを喜色とし ハードエッジ

歌ふなり、はああるの、う、らあらあの ハードエッジ

武島又次郎作詞、滝廉太郎作曲『花』

春の麗ら:
旗上げて春のうららのバスガイド ハードエッジ

塩辛しおからき海に驚く雪解川ゆきげがわ ハードエッジ

塩辛:/名詞の「塩辛」を除く
落椿海に落ちなば塩辛き ハードエッジ
あんパンに花びらのへそ塩辛き ハードエッジ

胡瓜揉み塩辛き手を舐めもして ハードエッジ
ひた泳ぐ自由は少し塩辛い 櫂未知子
夏休み海は大きく塩辛い ハードエッジ
蛞蝓の泣いて涙の塩辛き ハードエッジ

新涼や味噌塩醤油塩辛き ハードエッジ

霜晴の鶏冠のきつと塩辛き ふけとしこ

春の土ほこり豊かにふるひけり ハードエッジ

篩ひ:
おとなしく風篩ひこむ簾かな 正岡子規
篩ひたる如きまさごや蟻地獄 山本歩禅

花のみつなめて再びさえずりに ハードエッジ

花の蜜:
菜の花の蜜は上味蝶の吻 平畑静塔

夜はひそと花の蜜吸ふ蚊喰鳥 村上喜代子

交流のかよふ電線百千鳥ももちどり ハードエッジ

電線:
電線の段を違へて囀るよ ハードエッジ
電線の揺れを共にす鳥の恋 正木ゆう子
電線と旧知のつばめ来たりけり 鷹羽狩行
電線のあるうちは来よつばくらめ 鷹羽狩行
蔦若葉ゆく電線を芯として 斉藤志歩

電線のつなぐ家々大夕焼 林昭太郎
発電所より電線が青嶺攀づ 右城暮石

電線の大河をよぎる良夜かな 奥坂まや
電線のからみし足や震災忌 京極杞陽
架空なる送電線や蚯蚓鳴く ハードエッジ

海底を走る電線稲の花 山口昭男
電線の芯痒からん凍月夜 池田澄子
電線のたわみたわみの冬田かな ハードエッジ
送電線深海をゆくクリスマス 遠山陽子
電線がつなぐ電柱枯るる中 西東三鬼
電線につながれて枯深む家 行方克巳

電線にあるくるくるとした部分 上田信治

同じたねが同じ高さに芽吹めぶくころ ハードエッジ

同じ高:
飛行機と同じ高度に雲の峰 山口誓子
今年竹同じ高さに二本かな 高野素十
蓮の葉と芋の葉同じ高さなり 山口誓子

今の今以降は未来卒業歌 ハードエッジ

今の今:
赤富士と云へる彩とは今の今 柳澤仙渡子
腐に金蠅いまのいままでいづこにゐし 山口誓子
メロン切る事を決しぬ今の今 中原冴女

石鹸玉しゃぼんだま手玉てだまに取つてみたきかな ハードエッジ

手玉:/お手玉除外
紙風船春を手玉にとるごとく 高澤良一
諳んじて九九を手玉の涼しさよ ハードエッジ

潮干狩しおひがり吾子あこ旋毛つむじがよく見ゆる ハードエッジ

旋毛:
暖かやつむじ右巻き左巻き ハードエッジ
群れなして黒きつむじや柳鮠 馬場龍吉

みどりごの旋毛をなぞる涼しさよ 広渡敬雄
牛の仔の涼しき額のつむじかな 飯島晴子

巻きそめし眉間のつむじ黒仔牛 正木ゆう子

墨磨すみするに今朝けさすみれしずくかな ハードエッジ

墨磨:
墨磨つて水に色やる星月夜 上田五千石
夜の雪や墨磨るときの息づかひ 村上鞆彦

大いなるピアノブラック桃の花 ハードエッジ

別案:
ハイヤーはピアノブラック春の雪 ハードエッジ

飛ぶ虫も飛ばざる虫も花によ ハードエッジ

飛ばざ:
飛ばざれば醜し燕の子が並び 山口波津女
元日や鶴も飛ばざる不二の山 正岡子規

花の雨しだるる枝にしたたるよ ハードエッジ

枝垂るる:
一夜明け雪に枝垂るる桜かな ハードエッジ
雪どけの中にしだるる柳かな 芥川龍之介
五六本寄りてしだるる柳かな 向井去来
山吹の上にしだるゝ柳かな 正岡子規
山吹のしだるるさまは離れみる 富安風生

枝垂るるに一瞬の間や大花火 ハードエッジ

葉桜はざくらの緑したたる水面みなもかな ハードエッジ

水面かな:
花の雨大きな川の水面かな ハードエッジ
凧の糸たるみて来たる水面かな 橋閒石
一つ浮く蝌蚪とどまりし水面かな 飯田蛇笏

滴りを跳ね返したる水面かな 片山由美子

舟べりの霧しづかなる水面かな 飯田蛇笏
放生会待てる静かな水面かな 山田弘子

寒鮒の釣り上げらるゝ水面かな 前田普羅

松竹に五月の風の美しき ハードエッジ

松竹/松竹梅を除く:
松竹に美しき日や七五三 山口青邨
松竹の間を濤に初日哉 幸田露伴

新緑しんりょくの「ボール取らせてください」と ハードエッジ

ただのボール:
天井に挟まるボール卒業式 藤雪陽

スタンドへボールを運ぶ風涼し 阿久津学
夕焼の中へボールを取りにゆく 金子敦

子らにまだボール見えゐる秋の暮 寺島ただし

春待つや力をこめてボール蹴る 波多野爽波
冬晴れや力をもつて打たれしボール 細見綾子
金網にボールがはまり冬紅葉 川崎展宏

古茶こちゃすす古書こしょの山にも手を伸ばし ハードエッジ

手を伸:
手を伸べて座に着けまつる内裏雛 山口波津女

縦に寝て横に手を伸べ昼寝人 岸本尚毅
早乙女や手甲をかくる手を伸べて 高野素十

手を伸し足のばし落て行く水か 井上井月

中指長し風花へ手を伸ばすとき 池田澄子
冬服着る翼のごとく手を伸べて 岩田昌寿

きん出るきおひに次の花菖蒲はなしょうぶ ハードエッジ

イマイチ

赤青黄その他黴類かびるい研究所 ハードエッジ

研究:
その人の名の研究所涼しけれ 田中裕明
朝焼の研究室に校了す 杉田菜穂
野暮の出る江戸研究や土用干 加藤郁乎

爽やかに熱帯植物研究所 上野泰
考古学研究室の夜長かな みやこわすれ
図書館も研究室も蔦紅葉 石野ちづ子

かみなり歓心かんしんを買ふ避雷針ひらいしん ハードエッジ

避雷針:
雷に照らし出されし避雷針 ハードエッジ
子規の忌の天まで伸びる避雷針 中原幸子
真つ先に避雷針射す初日の出 平畑静塔
愛なき日避雷針見て引返す 寺山修司

サイダーの甘き空缶あきかんかごぐ ハードエッジ

空缶:
空缶の水沸いてをり野火の果て 北村保
空罐にたまる雨水種苗店 桂信子

空缶に鉄やアルミや秋の風 ハードエッジ
空き缶となって身軽な秋の風 綿引さかえ

木枯も空缶も鳴り去りしかな 高橋欣也
落葉道空缶あれば蹴つ飛ばし ハードエッジ

熱き地の1ミリ上をありあゆむ ハードエッジ

熱き地:
熱き地を擦つてはじまる盆をどり 南うみを
熱き地を歩みて蟻の終戦日 川名将義

家来けらいなき青大将あおだいしょう行方ゆくえかな ハードエッジ

家来:
少年に家来数人草の笛 次井義泰
葬送や跣足冷たき家来達 村上鬼城
雪明り家来の雉子など現れよ 佐々木六戈

岩陰いわかげかにのがにまた遁走とんそうす ハードエッジ

遁走:
蠅生れ早や遁走の翅使ふ 秋元不死男

無数蟻ゆく一つぐらゐは遁走せよ 加藤楸邨
遁走のげぢげぢの脚揃ひけり 村上喜代子

麻薬打てば十三夜月遁走す 石田波郷
蟷螂の遁走斧を恃まずに 大橋敦子

ものらの先頭を行く毛虫なり ハードエッジ

先頭:
先頭へ車輛のなかをゆく日永 小池康生
連凧の先頭寂しからざるや 佐々木六戈

捕虫網幼き兄を先頭に ハードエッジ
二次会へ行く先頭のサングラス 金子敦
貌を先頭にして蛇長し ハードエッジ

先頭がつぶての速さ稲雀 若井新一
先頭の雁に話がしたい後尾の雁 細谷源二
先頭は早稲の香に入る葬の鉦 鈴木鷹夫

一月の先頭を切る寒さかな ハードエッジ
渋滞の先頭にゐしラッセル車 杉原祐之

夜濯よすすぎのつまみ洗ひでますもの ハードエッジ

済ます:
罐詰で済ます昼餉や春の雷 鈴木真砂女
駅ビルで済ます夕餉や初つばめ 岡本眸
キッチンで済ます朝食初ざくら 鶴岡加苗

トーストで済ます朝食夏つばめ 羽吹利夫

てんやもので済ます夕食漱石忌 斉田仁

八月はてられしせみから ハードエッジ

脱ぎ捨:
ぬぎ捨てて一夜明けにき花衣 山口波津女

脱ぎ捨てて早も水着の疎ましき ハードエッジ
脱ぎ捨ての水着表も裏も砂 野崎海芋
脱ぎ捨てて縮む水着の重さかな 佐藤郁良
脱ぎ捨ててひとふし見せよ竹の皮 与謝蕪村

木々は脱ぎすて人々は着ぶくれぬ 松井百枝
ジャンパーを脱ぎ捨ててすぐ仲良しに 高田正子
脱ぎ捨てて重たかりしよ雪合羽 堀米秋良

脱ぎ捨てて春著の色を崩しけり 上野泰

不発ふはつかと思ひし空に花火ず ハードエッジ

魚籠びくあげてむ水抜けてしまひけり ハードエッジ

魚籠:
春の道魚籠さげて水滴らす 大串章
春嵐魚籠を上ぐれば水抜けて 茨木和生
鯉入れて魚籠音もなし春の水 長谷川櫂
磯遊び魚籠に仔猫を入れゐたる 茨木和生
花びらや鰻ぬるりと魚籠の底 長谷川櫂

魚籠の目を噴き出す潮や夜光虫 岡田耿陽
鯰ぞと灯かざす魚籠の底のもの 水原秋櫻子
新緑やしたたる魚籠を土間に置き 鷹羽狩行
魚籠の中しづかになりぬ月見草 今井聖

魚籠さげて踏切ぬらす秋の暮 鷹羽狩行

色なくてさびしからずや秋の風 ハードエッジ

色無く:
涅槃図の月は色無く光無く 笠原みわ子
空に色なくなつて来し夕端居 深見けん二
枯葦の色なく立てる日矢の中 鷲谷七菜子

赤く長く茄子なす一族の唐辛子とうがらし ハードエッジ

一族:
虚子忌なり虚子一族の累々と 藤田湘子
一族は亀鳴く村に住むと云ふ ハードエッジ

一族は茶の装束に蟬時雨 ハードエッジ
筍を掘る一族の墓の前 猪俣千代子

いふなれば一族の名か秋の風 ハードエッジ

一族は寺に安らぎ掛大根 ハードエッジ
冬紅葉一族ここに討たれしと 高田風人子

一族の揃ふ庭園初御空 ハードエッジ
水族館に海の一族注連飾 ハードエッジ

遺品あり岩波文庫『阿部一族』 鈴木六林男

灯台が黄泉路よみじらす野分のわき ハードエッジ

黄泉路:
日に汐に灼かれ黄泉路のトタン板 攝津幸彦
嬉々として黄泉路に鳴ける蚯蚓かな ハードエッジ
白桃や黄泉路の旅の安かれと ハードエッジ
黄泉路にて誕生石を拾ひけり 高屋窓秋

心臓しんぞうに遠き血管けっかん手足ゆ ハードエッジ

血管:
製油所の銀の血管鳥ぐもり 磯貝碧蹄館

血管の青く浮きたる暑さかな ハードエッジ

血管の全長おもふ秋暑かな 内田美紗
朝寒の血管叩き出すナース 溝淵久子

大寒や血管の図の青と赤 岡本眸

切られては角なき鹿しかさき顔 ハードエッジ

小さき顔:
洗髪束ね小さき顔なりし 高濱虚子
太閤の小さき顔やお風入れ 西村麒麟

下戸げこ鰤大根ぶりだいこんつかまつる ハードエッジ

下戸:
下戸の子の上戸と生れ春暮ぬ 炭太祇
一門の下戸ばかりなる桜餅 河野静雲
浮世とは下戸の嘘なり花に酒 正岡子規

薫風や下戸に戻りし老が宿 炭太祇
ちびちびと下戸の嗜む梅酒かな ハードエッジ
下戸にして梅酒造りに長じたり ハードエッジ

下戸同士団子はどうぢや後の月 尾崎紅葉
下戸なりし師も神にます新酒召せ 林翔
下戸なれど新酒の頃の酒の粕 ハードエッジ
夕山や下戸と上戸のむら紅葉 正岡子規

下戸は食ひ上戸は唱ひ年暮るる 上村占魚

関東をカントとなま関東煮かんとだき ハードエッジ

関東:
関東平野夜明け一本目の田植 大串章

暗黒や関東平野に火事一つ 金子兜太
関東のあまねく晴れる寒卵 林昭太郎
関東や葱を真白に醤油濃し ハードエッジ
関東の風は野太し葱畑 佐藤郁良

角なくば関東武士の餅ならず 鈴木朗
関東の空の青さよ達磨市 小島健

め切れば障子しょうじ隙間風すきまかぜ聞こゆ ハードエッジ

閉め切:
閉め切つてこその障子の白さかな 川名将義

ゆく年やしめきりてきく風の音 久保田万太郎
輪飾にしめきつてある小門かな 正岡子規

短日たんじつ露地ろじに遊ぶよつむじ風 ハードエッジ

つむじ風:
つむじ風移りゆくなり芒原 下村梅子
枯れ葉くるくる都会の好きなつむじ風 岩間民子

新年

をさな子のただにうれしきお正月 ハードエッジ

ただに:
ただにただ空あをかりし蓬餅 森澄雄

見出でたる緑蔭たゞに見て過ぐる 相馬遷子

家なくてたゞに垣根や草紅葉 松瀬青々

雨降るも晴るるもただに春を待つ 右城暮石
悴みし我が手のただに腹立たし 右城暮石

羽子板や唯にめでたきうらおもて 服部嵐雪
福寿草唯に目出たき根ざし哉 琴風

今年はやふつつか者の二日なり ハードエッジ

ふつつか:
ふつつかな娘といふは狩の犬 茨木和生

ラグビーの母校ぼこうといふも中退ちゅうたいで ハードエッジ

母校:
ぶらんこも代替りせし母校かな ハードエッジ
田のわれにとどく母校の卒業歌 中川博秋
桜咲く母校ならねどなつかしく 小川軽舟

神として来ませ母校は風薫る 及川貞
浴衣着て母校に集ふ花火の夜 ハードエッジ
蝉鳴いて母校に知らぬ師の多し 寺山修司

ホ句とチョコ、切干きりぼし、するめ冬籠ふゆごもり ハードエッジ

するめ:
春雪にするめ色なる蚕屋障子 飯田龍太
鯣(するめ)の香夜長の猫と我をつなぐ 加藤楸邨

枯枝かれえだに枯れざる枝に雪が降る ハードエッジ

枯れざ:
枯れし木の枯れざる枝や芽をふきぬ 正岡子規

毒草の萎えて枯れざる大旱 岡野よしを

焚火爆ぜ枯れざるもののうとまれる 土生重次
枯れざりし木もその声を嗄らしけり 相生垣瓜人
枯れよとも枯れざれよとも教へけり 相生垣瓜人

雨音の消えしは雪か子の寝息ねいき ハードエッジ

寝息:
暗中に聴きえし寝息あたたかし 加藤楸邨
春昼のかすかに寝息たて給ふ ハードエッジ
子の寝息確かめ消しぬ春灯 西村和子
どの鼻の寝息子猫の詰め合せ 田中勲

熱とれて寝息よき子の蚊帳のぞく 杉田久女

良夜かな赤子の寝息麩のごとく 飯田龍太

寒の暁ツィーンツィーンと子の寝息 中村草田男
寝息あるはうへ寝返り冬の暁 谷口桂子
ひそやかな赤子の寝息ま夜の雪 ハードエッジ
ねんねこの中の寝息を覗かるる 稲畑汀子
冬眠の小さき寝息をこそ思へ 正木ゆう子
水鳥の寝息にそそぐ雨の糸 飯田龍太

我が聞く家族の寝息除夜の鐘 ハードエッジ
子の寝息やすらに年のしらみけり 金尾梅の門

大寒だいかん皺腹しわばらかゆむしる ハードエッジ

掻き毟:
掻きむしる髪の乏しき熱帯夜 亀田虎童子
あおむけの蟹炎天を掻きむしり 小宅容義
灯ともせば玻璃かきむしり兜虫 加藤楸邨

大鷲の爪あげて貌かきむしる 加藤楸邨
死に近き蟷螂闇をかきむしり 加藤楸邨

有難ありがた風邪寝かぜねの床に薬法師やくほうし ハードエッジ

薬包紙:
虫鳴くや母へ解きやる薬包紙 影島智子

雪もよひ家のかたちに薬包紙 齋藤朝比古
一葉忌折目を六ツに薬包紙 秋元不死男

薬包紙に過ぎざれば燃え尽す 林田紀音夫

春待つや紙石鹸かみせっけんのいい匂ひ ハードエッジ

 

◎初案50句

あたたかなのどかな日々のありしこと ハードエッジ
うらららかやうの字にらの字ふたつある ハードエッジ
引力を楽しむ春やゆやゆよん ハードエッジ
花の雨しだるる枝にしたたるよ ハードエッジ
春の土篩にかけて塵埃 ハードエッジ

雪解け清流海へ塩辛き ハードエッジ
喜色とは朝寝足りたる笑みの中 ハードエッジ
石鹸玉手玉に取るは難しき ハードエッジ
卒業や未来の中の今日明日 ハードエッジ
よく見ゆる吾子の旋毛や潮干狩 ハードエッジ

囀や喉を潤す花の蜜 ハードエッジ
交流の通ふ電線百千鳥 ハードエッジ
墨するは今朝の菫の露にかな ハードエッジ
芽吹きたる隣りも同じ芽吹きなり ハードエッジ
飛べる虫も飛べない虫も花の頃 ハードエッジ

大いなるピアノブラック桃の花 ハードエッジ
松からの風竹からの風薫る ハードエッジ
雷の歓心を買ふ避雷針 ハードエッジ
捨てられしストローにまだサイダーが ハードエッジ
古茶を啜り古書の山にも手を伸ばし ハードエッジ

夜濯の白くて薄きもの二三 ハードエッジ
熱き地の1ミリ上を蟻あゆむ ハードエッジ
蟹哀れ音の濁りをがにまたと ハードエッジ
毛ものには入れてもらへぬ毛虫なり ハードエッジ
蛙呑む青大将に兵も無き ハードエッジ

蟬の殻空気に触れてしまひけり ハードエッジ
近所の子「よもぎ取らせてください」と ハードエッジ
葉桜の緑枝垂るる水面かな ハードエッジ
青黴を育む湿気大切に ハードエッジ
抜きん出て次の蕾や花菖蒲 ハードエッジ

心臓に遠き手足の冷え初むる ハードエッジ
色なくて寂しからずや秋の風 ハードエッジ
寒波来るぞと灯台の灯の廻る ハードエッジ
澄む水が魚籠より抜けて魚籠残る ハードエッジ
諦めたころに大きく揚花火 ハードエッジ

鹿や角ふるひ落して顔小さし ハードエッジ
干乾びて茄子一族の唐辛子 ハードエッジ
つむじ風しばらく露地に遊びけり ハードエッジ
皺腹の痒きところや着膨れて ハードエッジ
新緑や紙石鹸で手を洗ふ ハードエッジ

閉め切つて障子の隙間風生る ハードエッジ
雨音の消えしは雪か子の寝息 ハードエッジ
着膨れてゐれば暖か木々に雪 ハードエッジ
関東をカントと言へり関東煮 ハードエッジ
薬法師と思はんでもなし風邪薬 ハードエッジ

傍らに俳句その他冬籠 ハードエッジ
ラグビーや母校といへど中退で ハードエッジ
下戸の座に鰤大根をつつくなり ハードエッジ
幼子の只に嬉しきお正月 ハードエッジ
今年はやふつつか者の二日なり ハードエッジ

 

◎推敲一覧/pdf

原句102句/推敲総数634句
最終稿50/383句、途中放棄52/251句
ここでは最終稿に残った推敲分を記載

全50句/7枚

角川俳句賞 2024 プランB 推敲 テキスト

 

◎A4推敲 原稿/pdf

全33枚

角川俳句賞 2024 プランB A4推敲 原稿

 

◎A4推敲 加筆/pdf

全31枚
take-32、take-33 は省略(さして加筆なし)

角川俳句賞 2024 プランB A4推敲 加筆

 

◎葉書俳句表側

 

 

◎データベース画面/桐v10

※最終稿の少し前、面倒なのでこのまま

 

◎落選葉書一覧リンク

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以上です