全然堂歳時記 春の部
【朝寝】あさね
全然堂歳時記=現在、本号を含め113記事=春夏秋冬–年末年始=32-25-23-21–5-7
/2025.4.29
参考記事:「朝寝の俳句と切口」/note
目次
◎葉書俳句
◎テキスト
春眠の女神、朝寝の仏かな ハードエッジ
女神:
あたたかや一番星に女神の名 山口速
行く春や女神は老いず二千年 佐藤春夫
薔薇園の女神を濡らし雨降れり 茨木和生
色鳥や女神の守る秋津島 長谷川櫂
女神彫る氷塵の綺羅身に浴びつ 川島千枝
自らも朝寝楽しむ睡魔やも ハードエッジ
睡魔:
永き日の睡魔にまさる朋ありや 糸大八
春野より連れ戻りたる睡魔かな ふけとしこ
枕辺に朝寝の神と睡魔ども ハードエッジ
毛糸編む指に睡魔がからみだす 鷹羽狩行
早寝には疎く朝寝には親し ハードエッジ
早寝:
豆腐屋の早寝早起き冷奴 ハードエッジ
早寝早起き避暑地の日々に少し飽く ハードエッジ
虫の夜や父母早寝吾読書 成瀬正俊
鈴虫や早寝の老に飼はれつつ 後藤夜半
このごろの早寝といふも寒さゆゑ ハードエッジ
豆腐屋の早寝につもる夜の雪 関成美
雪降ると路地は早寝の灯を消しぬ 菖蒲あや
おでん屋をのこし早寝の小漁港 大島民郎
粕汁をすすり早寝の老夫婦 岸風三楼
早寝してなほりしほどの風邪なりし 稲畑汀子
朝酒と朝湯の前の朝寝かな ハードエッジ
朝湯:
この行や朝寝と朝湯意のままに 阿波野青畝
囀や旅にも朝湯かかされず 稲畑汀子
よべの火蛾浮ぶ朝湯に身を浸す 浅野右橘
飛込んてぬるき朝湯も秋なれや 尾崎紅葉
冬の日の眩しかりける朝湯かな ハードエッジ
朝酒と朝湯の熟睡お元日 ハードエッジ
初春の湯気たくましき朝湯かな 抜井諒一
朝湯して身を清めたる寝正月 ハードエッジ
朝酒も朝湯も辞せず寝正月 ハードエッジ
朝湯こんこんあふれるまんなかのわたくし 種田山頭火
朝寝してわが世の春と思ふなり ハードエッジ
我が世:
君が世は我が世ちる梅さく桜 池田澄子
子とあればわが世はたのし金魚玉 高橋淡路女
わが世のあと百の月照る憂世かな 金子兜太
踊うた我世の事ぞうたはるる 高濱虚子
凍滝の我が世の冬のしづけさよ ハードエッジ
牡蠣食べてわが世の残り時間かな 草間時彦
軽やかな空腹を知る朝寝かな ハードエッジ
空腹:
空腹も楽しからずや朝寝坊 ハードエッジ
空腹を彼に知らるな芹の花 池田澄子
空腹(すきばら)に雷ひゞく夏野哉 小林一茶
新茶よりはじまるけふの空腹か 加藤楸邨
空腹のここちよきまで秋澄みぬ 森澄雄
空腹の家路しみじみ秋の暮 ハードエッジ
空腹は春待つ如し春を待つ ハードエッジ
空腹や冬空に舞ふ葉一枚 小野あらた
空腹のたのしさ凍空の青さ 池田澄子
空腹の軽き体や初日の出 ハードエッジ
許されよ旅の朝寝の為体 ハードエッジ
許されよ:
紫雲英田にしばしの土足許されよ ハードエッジ
許されよ溽暑あやふき身ごしらへ 藤村克明
しばらくのこゝの端居を許されよ 高野素十
人生の朝寝の数をまた増やす ハードエッジ
増やす:
驟雨なりプールの水を増やすほど ハードエッジ
仔鹿の身舐めてつぶらな斑を増やす 長田等
甲虫硬き身にして子を殖やす 鷹羽狩行
ぐつすりと眠りて殖やす鰯雲 福永耕二
残業の一人となりて灯をふやす 広渡敬雄
よく晴れて二階を増やす柿の村 中拓夫
寂しくて嚔の数をまた増やす ハードエッジ
星の夜や睡りて殖やす木の葉髪 三嶋隆英
屋根の雪掻きて地上に雪増やす 茨木和生
朝寝して聞くや大根を刻む音 ハードエッジ
聞くや:
花の雨寝床に聞くや日曜日 ハードエッジ
琴やめて鶯聞くや下屋敷 正岡子規
夕立の足音聞くや橋の下 正岡子規
よもすがら秋風聞くや裏の山 河合曾良
船中の寝覚に聞くや秋の雷 村上鬼城
虫聞くや庭木にとゞく影法師 高野素十
虫聞くや例外のなき死といふ事 田川飛旅子
病牀に聞くや夜明の餅の音 正岡子規
喜色とは朝寝足りたる子の頬つぺ ハードエッジ
喜色:
春燈に喜色ありけり自づから ハードエッジ
宵といふ喜色を以て春燈 藤田湘子
冬至なり一番星に喜色あり 相生垣瓜人
繭玉の揺るるは喜色こぼすなり 上田五千石
福寿草よりかも苔に喜色あり 後藤夜半
福寿草一つ一つを喜色とし ハードエッジ
日曜は朝寝の後もだらだらと ハードエッジ
だらだら:
日盛のだらだら続く負け戦 ハードエッジ
母の日の母にだらだらしてもらふ 正木ゆう子
だらだらと続く残暑にだらだらす ハードエッジ
だらだらとだらだらまつり秋淋し 久保田万太郎
ニュースにもならずだらだら祭果つ 中本真人
雨二日だらだらまつり濡らしけり 大野林火
コスモスや貨物列車はだらだらと 秋元正
尿意には勝つ術もなし朝寝坊 ハードエッジ
尿意:
とぐろ解く蛇の尿意と思はるる ハードエッジ
ひぐらしや尿意ほのかに目覚めけり 正木ゆう子
恐竜の朝寝の朝や木々の雨 ハードエッジ
恐竜:
いまは最後の恐竜として永き春 高柳重信
恐竜の卵がかへる春の暮 秦夕美
恐竜の名を諳んじて雛の客 日原傳
恐竜は桜の花を知らざりき ハードエッジ
恐竜がずしんずしんと雲の峰 ハードエッジ
恐竜のころの海山雲の峰 ハードエッジ
恐竜は夕立に目を細めたり ハードエッジ
恐竜の骨を飾つて冷房す ハードエッジ
前脚の小さき恐竜みみず鳴く 加藤絵里子
にはとりに恐竜の爪鳳仙花 南うみを
かんじきの歩幅は恐竜の重さで 津田清子
初富士を登る恐竜ゐただらうか 西川火尖
啓蟄の蛇、蟻、蛙、吾は朝寝 ハードエッジ
蛇+蛙:
蛙子の長蛇の陣や水ぬるむ 青嵐
その下に蛇や蛙や誘蛾燈 ハードエッジ
蛙呑むさなかの蛇を打ちしこと 南うみを
長き夜の蛙の融ける蛇の腹 ハードエッジ
蛇蛙蜥蜴蟷螂鵙の贄 ハードエッジ
蛇の夢蛙の夢や春を待つ ハードエッジ
大人しくしてゐる冬田・蛇・蛙 ハードエッジ
眠りをる蛇や蛙や年新た ハードエッジ
朝寝して猫に叱られ叩かれて ハードエッジ
叩かれ:
叩かれて釘の頭や寒明くる ハードエッジ
抱く子に顔叩かれて婆涼し 高野素十
夕立にプール叩かれ叩かれて ハードエッジ
叩かれて鯵の面目なかりけり ハードエッジ
たゝかれてゆがみ走りや油虫 伊藤虹橋
叩かれて昼の蚊を吐く木魚かな 夏目漱石
叩かれて毛虫吐き出す庭木かな ハードエッジ
手袋を逆さに読んで叩かるる ハードエッジ
誰かれに頭叩かれ雪達磨 高倉和子
叩かれて餅に別れの餅取粉 ハードエッジ
朝寝して花見の酒を抜かんとす ハードエッジ
花見と酒:
花見とは地に筵莚敷き酒に酔ひ 星野立子
一群は花見帰りの酒臭く 尾崎紅葉
惜しまれて朝寝のふとん畳まるる ハードエッジ
惜しまれ:
来るを待たれ行くを惜しまれ夕立かな ハードエッジ
老いぬれば蚊帳の別れも惜しまれて 富安風生
朝寝にも飽きて早起き船の旅 ハードエッジ
船の旅:
雨着透く春分の日の船の旅 秋元不死男
船の旅積乱雲も見飽きたり ハードエッジ
夕立に島々消ゆる船の旅 ハードエッジ
夕焼も日々平凡に船の旅 ハードエッジ
船の旅バナナの皮は海へ投ぐ ハードエッジ
老人の朝寝昼寝の恙無き ハードエッジ
恙無:
京町の火事や桜は恙なし 正岡子規
つつがなき母の便やころもがへ 各務支考
恙なく玉になりしよ釣花火 正岡子規
恙なきわれにも割つて寒卵 山口波津女
恙なく葱大根の暮しかな ハードエッジ
恙なくただ古暦残すのみ 大熊輝一
俳句とは朝寝の後の大あくび ハードエッジ
大あくび:
咆哮の如し子猫の大欠伸 ハードエッジ
埓もなや蚊遣の妻の大あくび 日野草城
手袋の手にて押さへる大あくび ハードエッジ
◎初案18句/制作順
朝寝してわが世の春といふべかり ハードエッジ
空腹と秤にかける朝寝かな ハードエッジ
許されよ朝寝のための旅の宿 ハードエッジ
俳句とは朝寝の後のあくびとも ハードエッジ
早寝には疎く朝寝には親し ハードエッジ
惜しまれて朝寝の床の畳まるる ハードエッジ
啓蟄の蛇虫蛙我朝寝 ハードエッジ
朝寝から始まる朝の三揃 ハードエッジ
朝寝して猫と仲良くなりにけり ハードエッジ
恐竜の朝寝の朝や水の音 ハードエッジ
朝寝して聞くや何かを刻む音 ハードエッジ
喜色とは朝寝足りたる笑みの中 ハードエッジ
週末や朝寝の後もだらだらと ハードエッジ
朝寝にも飽きて早起き船の旅 ハードエッジ
余生には朝寝昼寝の二刀流 ハードエッジ
春眠と言へば体良き朝寝かな ハードエッジ
朝寝して花見の酒を抜かんとす ハードエッジ
自らも朝寝楽しむ睡魔とも ハードエッジ
◎推敲句一覧/pdf
全126句/3枚
全然堂歳時記 春 【朝寝】推敲一覧
◎A4推敲 原稿/pdf
全3枚
全然堂歳時記 春 【朝寝】 A4推敲 原稿
◎A4推敲 加筆/pdf
全3枚
全然堂歳時記 春 【朝寝】 A4推敲 加筆
◎葉書推敲 原稿/pdf
全5枚
全然堂歳時記 春 【朝寝】 葉書推敲 原稿
◎葉書推敲 加筆/pdf
全6枚
全然堂歳時記 春 【朝寝】 葉書推敲 加筆
◎葉書俳句秀句&振仮名面
◎データベース画面/桐v10
◎朝寝秀句
日曜と思ひながらの朝寝かな 下田實花
朝寝して吾には吾のはかりごと 星野立子
ふたり居のひとり逝きたる朝寝かな 根岸かなた
なきがらや大朝寝しておはすかに 長谷川櫂
毎日の朝寝とがむる人もなし 松本たかし
雛の間の闇うつくしき朝寝かな 原コウ子
法外の朝寝もするやよくも降る 高濱虚子
ものの音聞き分けてをる朝寝かな 野中亮介
院長や朝寝十分大股に 森夢筆
朝寝せり孟浩然を始祖として 水原秋櫻子
あらうことか朝寝の妻を踏んづけぬ 脇屋義之
よく眠る子をかたはらに朝寝かな 鶴岡加苗
美しき眉をひそめて朝寝かな 高濱虚子
カーテンの透けて紅来る朝寝かな 山口青邨
旅にあることも忘れて朝寝かな 高濱虚子
ものゝ芽のほぐれほぐるゝ朝寝かな 松本たかし
花を踏みし草履も見えて朝寝かな 与謝蕪村
◎未練句/補遺/在庫処理
枕辺に朝寝の神と睡魔ども ハードエッジ
後悔は先に立たねど朝寝かな ハードエッジ
好き嫌ひなくて朝寝も昼寝もや ハードエッジ
老人の花の朝寝と思ふべし ハードエッジ
朝寝から覚めて賜るホ句ひとつ ハードエッジ
朝寝から起きて傾くバルザック ハードエッジ
空腹も楽しからずや朝寝坊 ハードエッジ
足るを知る腹八分とは朝寝にも ハードエッジ
尿意には勝てず春眠終了す ハードエッジ
ぬるま湯のやうな朝寝にぬくぬくと ハードエッジ
てふてふが朝寝の家に来りけり ハードエッジ
蝶々に朝寝の輩はなかるべし ハードエッジ
以上です