冬 【湯豆腐】 吉良邸に湯豆腐囲む五六人

全然堂歳時記 冬の部
【湯豆腐】ゆどうふ

全然堂歳時記=現在、本号を含め110記事=春夏秋冬–年末年始=29-25-23-21–5-7
/2025.2.7

人気成分:雪、火、煮、葱、昆布、酒、冷、崩、命、死
※note の記事「湯豆腐の俳句、その切口」をご覧ください

※助詞について:
漢字の熟語が2つ続くのが嫌いです
なるべく助詞を入れて視覚的に分離したい

名詞+名詞は類語で置き換えて助詞を入れたり、
最悪「、」で区切ったり
名詞+動詞( or 形容詞)はぎりぎり許容範囲

今回の例では、
名詞+名詞接続は、
「れんげ穴」
名詞+動詞接続が、
「束買うて」、「土鍋取り出す」、「穴散らす」
「湯豆腐奉る」、「葱残る」、「湯豆腐囲む」
名詞+形容詞接続が、
「皿冷た」

自覚して意識的に推敲し始めたのは去年くらい
そのうち、どうでも良くなって、
2025年当時、そんな変な拘りがありました、になるかも
でも、一応明記しておきます

 

◎葉書俳句

◎テキスト

湯豆腐や時雨しぐれてゐてもゐなくても ハードエッジ

ゐてもゐなくても:
見てゐても見てゐなくても滴りぬ 江川虹村

人ゐても人ゐなくても赤とんぼ 深見けん二
木の実落つ誰かがゐてもゐなくても 石田郷子

猫ゐても猫ゐなくても炬燵なり ハードエッジ
人ゐても人ゐなくても田の焚火 ハードエッジ

湯豆腐に隙間風すきまかぜなきくらしかな ハードエッジ

暮しかな:
ふらここを乗り捨て今日の暮らしかな 野口る理
蓬萌えそめし燈台暮しかな 清崎敏郎

金魚玉吊りその後の暮しかな 岸田稚魚
いちまいの簾の奥の暮しかな 鈴木貞雄
日向水かぶりて其日暮しかな 森川暁水

栗虫を太らせ借家暮らしかな 篠崎央子
朝顔の紺の小さき暮らしかな 岡本猿人

温泉の町の氷柱の路地の暮しかな 清崎敏郎
セーターを編むこともなき暮しかな ハードエッジ
すぐ湯ざめしさうなひとり暮しかな 藤崎久を
恙なく葱大根の暮しかな ハードエッジ

湯豆腐に泥葱どろねぎたば買うてある ハードエッジ

泥葱:
泥葱のひげや涅槃の日と思ふ 鈴木鷹夫

泥葱の泥が廊下に日暮れをり 鈴木鷹夫
泥葱に痒い部分があるらしい 乾鉄片子
泥葱は考へぶかく貧しかり 栗林千津

湯豆腐の土鍋どなべ取り出す戸棚とだなかな ハードエッジ

土鍋:
蓋括り売らるる土鍋十二月 鷹羽狩行
時雨るるや土鍋の蓋の置きどころ 岩田由美
湯豆腐や黒き土鍋のすゑごころ 長谷川櫂
湯豆腐の土鍋大きく一人かな 松本ミツ子

小豆粥あはや土鍋をあふれんと 辻桃子

湯豆腐にガスのほのお真青まさおなり ハードエッジ

青い炎:/炎天除外
さみだれや瓦斯の炎の青きこと 小山玄黙
青梅に青き炎のある時に摘む 平井照敏

炎の中に青さの見ゆる門火かな 佐藤博美
かなかなにあをき煮炊きの炎かな 荒井正隆

ストーブの青き火の輪や緋の炎 小澤實
ストーブの青炎われら今若し 岡本眸
青き炎(ほ)をつつむ赤き炎久女の忌 岡田一実

青い火:
春寒きとろ火の青を家の隅 池田澄子
花冷えやガスの火青く鍋の底 鈴木了斎

青といふ涼しき色に煮炊の火 ハードエッジ
地下鉄は青き火花を夜の秋 長谷川櫂

露けしや船渠は青き火屑とび 五十嵐播水
炎の中に青さの見ゆる門火かな 佐藤博美

寒天の青に火の点く夕焼かな ハードエッジ
ガスの火の青き王冠時雨降る 籬朱子
ストーブの青き火の輪や緋の炎 小澤實
瓦斯工の地の底に焚く火やあをし 細谷源二
燭の火の根元の青きクリスマス 秋元不死男

湯豆腐の湯気ゆげ真上まうえ冬灯ふゆともし ハードエッジ

別案:
湯豆腐の湯気に天井さびしけれ ハードエッジ

湯豆腐で一人の部屋をあたたむる ハードエッジ

一人の部屋:
冬星やひとりの部屋の鍵の音 叶万里子
凩を連れて帰るよひとりの部屋 菖蒲あや
嚔して一人の部屋を大きくす 湯川雅
ストーブの位置も一人の部屋となる 岡本眸

湯豆腐のふたを置くべくおぼんあり ハードエッジ

鍋と蓋:
井戸端や鶯遊ぶ鍋の蓋 正岡子規
囀や鍋は弱火に落し蓋 ハードエッジ
鍋の蓋もて春菊を押さへけり 鈴木鷹夫

蓋括り売らるる土鍋十二月 鷹羽狩行
時雨るるや土鍋の蓋の置きどころ 岩田由美
寄せ鍋の大きな瀬戸の蓋を開く 星野立子
古びたる鍋蓋であり社会鍋 辻桃子

極月の煮立ちて唄ふ鍋の蓋 鍵和田秞子

鍋蓋で戯れ舞ひ神楽女正月 米田一穂

湯豆腐に散りぬるれんげ穴散らす ハードエッジ

潜水艦「アナアナチラス」号 \(^o^)/

湯豆腐のひかへ豆腐の皿冷た ハードエッジ

皿の冷:
花冷や血のみ残るる刺身皿 澤田和弥
かたぶきて花冷の皿沈みゆく 眞鍋呉夫

大皿のむかしの藍に冷し物 川崎展宏
皿の上に置けば即ち冷奴 ハードエッジ

湯豆腐に柾目まさめごと板昆布いたこんぶ ハードエッジ

柾目:
男みな柾目のごとし夏祭 佐藤郁良

湯豆腐の昆布こんぶぜいは言はずおく ハードエッジ

NHK俳句 2024「湯豆腐」落選作/木暮陶句郎選

言はず:
春暁やまだ一言ももの言はず 倉田紘文
黒ずみて落椿とはもう言はず 宮津昭彦
紅梅の莟は固し言はず 高濱虚子
土筆物言はずすんすんとのびたり 夏目漱石
桜とは言はずもがなの花吹雪 ハードエッジ

もの言はず団扇の風を送るのみ 千原叡子
もの言はず香水売子手を棚に 池内友次郎
キャンプの火囲みて誰ももの言はず 村上鞆彦

猫も犬もともにもの言はず秋の暮 久保田万太郎
高しとは言はず深しと言はむ天 相生垣瓜人

あまり寒くて寒きこと誰も言はず 山川安人
もう秋の雨とは言はず冬の雨 ハードエッジ
一番と言はず一号木枯吹く 右城暮石
外套の重くなりしを人に言はず 遠藤梧逸
着膨れてもう体力は物言はず ハードエッジ
玉子酒ものも言はずに作り来し 中村汀女
誰に合ふための寒紅かは言はず 鶴岡加苗
ジャンバーとこのごろ言はず翁の忌 ハードエッジ

数へ日となりしを言はず考へず 右城暮石

湯豆腐に肩までつかる豆腐かな ハードエッジ

こういう擬人法を安易に使うべきじゃない、かも

湯豆腐のゆらゆらゆられられけり ハードエッジ

「ゆ」が4つ、「られ」が2つの韻文精神!

百薬ひゃくやくちょうに湯豆腐たてまつる ハードエッジ

NHK 文芸選評 2025 「湯豆腐」落選作/堀田季何選

奉る:
細やかに刻んで雛に奉る ハードエッジ
花ふぶき給水塔をたてまつる ハードエッジ

一神事五月の風を奉る 高木石子
雷神を恋ふる一句を奉る ハードエッジ
豆めしを仏飯として奉る 深川正一郎
温泉の神に燈をたてまつる裸かな 飯田蛇笏
御沙汰あり大筍を奉る 高野素十
悪神に黴の五彩を奉る 林翔

新涼や仏にともし奉る 高濱虚子
弁天へ秋風波をたてまつる 川崎展宏
糸瓜忌に糸瓜の水を奉る ハードエッジ
柿の木のたわわを月に奉る ハードエッジ

御仏に春待つ花を奉る ハードエッジ
仏にも寒九の水をたてまつる 森澄雄

行く年に大き焚火を奉る ハードエッジ

玉川の新玉の水奉る ハードエッジ
山の神にうたたてまつれ手毬の子 木村蕪城

湯豆腐を醤油しょうゆにつけてねぎを乗せ ハードエッジ

葱と醤油:
関東や葱を真白に醤油濃し ハードエッジ

湯豆腐のこれはうずらの卵なり ハードエッジ

鶉の卵:
味噌汁に鶉の卵蕗の薹 ハードエッジ
この小さき鶉の卵から雛が ハードエッジ
松過の蕎麦の鶉の卵かな 藤田湘子

湯豆腐の湯にただようてねぎ残る ハードエッジ

漂うて:
花びらの漂うてゐる夜空かな 若杉朋哉
花火屑幾日か漂うてをり 山西雅子
夕空をただようてゐる寒さあり 今井杏太郎
放たれし鷹漂うてみせにけり 望月周

湯豆腐を食へば眠たく他愛たあいなく ハードエッジ

他愛:
他愛なく土に消え行く秋の雨 ハードエッジ
他愛なく薬に眠る布団かな ハードエッジ

吉良きらていに湯豆腐かこむ五六人 ハードエッジ

討入:
熱燗や討入りおりた者同士 川崎展宏
松に月義士討入の日なりけり 安住敦
討入りの日や下町に小火騒ぎ 鷹羽狩行
討入の日なり銀座に月を見て ハードエッジ

◎初案20句

湯豆腐やことこと昆布敷かれある ハードエッジ
湯豆腐や時雨れてゐてもゐなくても ハードエッジ
青白きゴムのホースや牡丹鍋 ハードエッジ
湯豆腐に隙間風なき暮しかな ハードエッジ
吉良邸に湯豆腐囲む五六人 ハードエッジ

湯豆腐の蓋を置くべきお盆かな ハードエッジ
湯豆腐の湯気天井の冬灯 ハードエッジ
湯豆腐に肩まで浸かる豆腐かな ハードエッジ
湯豆腐を醤油に漬けて薬味乗せ ハードエッジ
湯豆腐の湯を濁らせて葱残る ハードエッジ

湯豆腐の控へ豆腐の皿冷た ハードエッジ
湯豆腐の葱置いてある厨かな ハードエッジ
湯豆腐の土鍋隠るる厨かな ハードエッジ
湯豆腐にこれは鶉の卵かな ハードエッジ
湯豆腐に散りぬるれんげ花模様 ハードエッジ

湯豆腐に贅を尽して目に見えず ハードエッジ
湯豆腐に一人の家を温めたる ハードエッジ
湯豆腐に豆腐煮られて食はれけり ハードエッジ
湯豆腐に招かれし百薬の長 ハードエッジ
湯豆腐を食つて眠たき齢かな ハードエッジ

 

◎推敲句一覧/pdf

全91句/2枚

全然堂歳時記 冬 【湯豆腐】 テキスト推敲一覧

 

◎A4&葉書推敲 原稿/pdf

全7枚

全然堂歳時記 冬【湯豆腐】A4&葉書推敲 原稿

 

◎A4&葉書推敲 加筆/pdf

全7枚

全然堂歳時記 冬 【湯豆腐】A4&葉書推敲 加筆

 

◎葉書俳句表側

◎データベース画面/桐v10

 

◎湯豆腐秀句

鎌倉の夜の湯豆腐となりにけり 燕雀
永らへて湯豆腐とはよく付合へり 清水基吉
湯豆腐や傘寿卒寿と夢のまに 高橋将夫
湯豆腐の掬ふに合はす息のあり 稲畑汀子
湯豆腐やいのちのはてのうすあかり 久保田万太郎

こころいまここに湯豆腐古俳諧 石田小坡
湯豆腐やまた会ふ日など聞かずとも 大井邦子
湯豆腐に踊り加減といふがあり いのうえかつこ
湯豆腐もなつかしかりし人々も 高野素十
湯豆腐やほのと老母の恋がたり 久保千鶴子

湯豆腐も湯豆腐好きもよかりけり 北大路翼
湯豆腐や思へばこその口叱言 鈴木真砂女
湯豆腐や死後に褒められようと思ふ 藤田湘子
湯豆腐や善人死んで人泣かす 岡本眸
湯豆腐の冷めしごとくに死はありぬ 矢野景一

湯豆腐や兄弟だけの一忌日 渡辺いえ子
湯豆腐に夫婦やうやく老いむとす 後藤比奈夫
湯豆腐の湯気やんでをり老後なり 鈴木鷹夫
冷奴湯豆腐となる老いぬれば 山口青邨
湯豆腐や妻を恃みの病後食 伊東宏晃

湯豆腐の薬味すこしく華やかに 岩田由美
湯豆腐や淡交なりし悔少し 鈴木昭一
湯豆腐の鍋下されて冷えてあり 篠原温亭
湯豆腐のかけらの影のあたゝかし 飴山實
湯豆腐にうつくしき火の廻りけり 萩原麦草

池を見る湯豆腐の火の熾るまで 阿波野青畝
湯豆腐の底煮え立ちて来し音す 右城暮石
湯豆腐の端ふるへつつ煮られけり 高橋睦郎
湯豆腐や若狭へ抜ける京の雨 角川春樹
湯豆腐や雪積みそめし銀閣寺 安住敦

湯豆腐の一と間根岸は雨か雪 長谷川かな女
湯豆腐や雪になりつつ宵の雨 松根東洋城
湯豆腐や又帰るべき夜の雪 野村喜舟
湯豆腐や障子の外の隅田川 庄司瓦全
さゝ濁りして湯豆腐の湯の熱さ 日野草城

湯豆腐の薬味青くてわれは下戸 鷹羽狩行
湯豆腐や輪飾残る薄みどり 渡辺水巴
湯豆腐の浮けば召せよの京言葉 谷野黄沙
湯豆腐や誰からか句を作り出す 岡本眸
顔見世の役者来て居る湯豆腐屋 荒木鴨石

湯豆腐の膳に父なく銚子なし 荻野嘉代子
湯豆腐を好みし母も夫もなく 中道愛子
湯豆腐や姿見せねど行きとどき 中村汀女
湯豆腐の夭々たるを舌が待つ 能村登四郎
湯豆腐や持薬の酒の一二杯 久保田万太郎

湯豆腐や無ければなくて済める酒 黒坂紫陽子
湯豆腐に昼酒すこしかたむけぬ 星野麥丘人
湯豆腐や昭和に酌婦てふありし 鎌田保子
湯豆腐に醤油はヒゲタ贔屓かな 安住敦
湯豆腐に微塵の脂泛きにけり 高澤良一

湯豆腐や走らして買ふ葱少し 小沢碧童
湯豆腐のまづ箸にして葱甘し 石川桂郎
混沌として湯豆腐も終りなり 佐々木有風
湯豆腐やむかし其角の茅場町 小沢碧童
湯豆腐や木と紙の家に住みてこそ 瀧春一

湯豆腐やあるかなきかの浮き沈み ことり
湯豆腐の一つ崩れずをはりまで 水原秋櫻子
湯豆腐の崩れぬはなく深酔す 福永耕二
湯豆腐やテレビは大雪の渋谷 藤雪陽

 

◎未練句/補遺/在庫処理

豆腐消え湯が減り湯豆腐の終り ハードエッジ
湯豆腐にふつふつと我が考へる ハードエッジ
「さて」といふ湯豆腐の火を消してより ハードエッジ
湯豆腐の火を消したれば湯気も消え ハードエッジ
湯豆腐の湯加減そして出汁加減 ハードエッジ

湯豆腐の湯加減をみるツマミなり ハードエッジ
湯豆腐に雪より白き豆腐かな ハードエッジ
湯豆腐の湯気に曇りし窓に雪 ハードエッジ
湯豆腐やふりだしてはや雪まじり ハードエッジ
湯豆腐やふりつむ雪はみえねども ハードエッジ

湯豆腐の豆腐失せたる湯の香り ハードエッジ
湯豆腐の食後にハンバーガーも食ふ ハードエッジ
湯豆腐や葱の甘きを言ひもして ハードエッジ
湯豆腐にふつと昆布の端の泡 ハードエッジ

以上です