開発素句報 2024-03 堪へ難キヲ堪へ帝國の秋日濃し

開発素句報 2024-03 「残暑見舞号

◎葉書俳句

 

◎テキスト

図書室としょしつは本のすずしさ夏休 ハードエッジ

図書室:
図書室のこの窓が好き雪割草 行方克巳
図書室の深きに日ざし漱石忌 納谷浩一

だらだらと続く残暑ざんしょにだらだらす ハードエッジ

だらだら:
だらだらと下る寺町春しぐれ ふけとしこ
週末や朝寝の後もだらだらと ハードエッジ
日盛のだらだら続く負け戦 ハードエッジ
母の日の母にだらだらしてもらふ 正木ゆう子
だらだらとだらだらまつり秋淋し 久保田万太郎
ニュースにもならずだらだら祭果つ 中本真人
雨二日だらだらまつり濡らしけり 大野林火
コスモスや貨物列車はだらだらと 秋元正
湯の町のだらだら坂の柿落葉 高木晴子
初夢の中もだらだらしてをりぬ 川名将義

二度寝にどねして昼寝のぜいつくしけり ハードエッジ

贅を尽し:
花篝火花に贅を尽したる ハードエッジ
はじめから贅を尽くして囀れる 鷹羽狩行
花に贅落花に贅を尽したる 後藤比奈夫
一片の落花に贅を尽したる ハードエッジ
病む夏のシャボンに贅を尽しけり 大石悦子
素麺の食後に贅を尽したる ハードエッジ

がたキヲ帝國ていこく秋日あきひし ハードエッジ

堪へ難:
身の黒き蟻も寒さに堪へがたし 山口誓子
稲苅りし後の寒さは堪へがたし 相馬遷子
耐へがたきまで蓮枯れてゐたりけり 安住敦

電車にはみやこ生者せいじゃ盂蘭盆会うらぼんえ ハードエッジ

生者:
春暁の死者も生者も横たはる 小池康生
群がつて生者の歩く花のころ ハードエッジ

死者送る生者ぞろぞろ油照り 篠原飄
扇風機ひとつの風に死者生者 今瀬剛一
いづこにも生者ゐて喪の夏座敷 辻田克巳

またひとり生者の抜ける踊の輪 川名将義
死者ありて生者八月十五日 ハードエッジ
生者には暑し八月十五日 ハードエッジ
流燈や生者は橋を引き返し 杉良介
いくたりか生者と遭ひぬ墓参り 上田五千石
迎火を焚けば生者の寄りきたる 大串章
お供への桃を生者が分つなり ハードエッジ

降る雪は生者に翳り死者に照る 加藤知世子
死者生者共にかじかみ合掌す 西東三鬼

死者も聞け生者も聞けと除夜の鐘 相生垣瓜人

青と赤しほからとんぼあかとんぼ ハードエッジ

青と赤:
春燈の赤青黄色ネオン街 ハードエッジ
赤になり青になる音種袋 後藤立夫
涅槃図に顔赤きもの青きもの すずきみのる
囀や心臓模型赤と青 利普苑るな
青い目の子猫と赤い目の魔女と ハードエッジ

赤い灯も青い灯も夏果てんとす ハードエッジ
赤と青闘つてゐる夕焼かな 波多野爽波
夏空は青く夕焼は赤く ハードエッジ
夏山や万象青く橋赤し 正岡子規
紅い父青い母走馬灯かこむ 鷹羽狩行
赤の他人青の他人や夜店の灯 ハードエッジ
扉をあけて青赤のもの冷蔵庫 山口波津女
夏休みマーブルチョコの赤青黄 金子敦
子にゑがきやる青き蟹赤き蟹 福永耕二

冷やかや抗癌剤の赤青黄 椎野順子
赤鬼も青鬼もゐて唐辛子 藤岡筑邨
ほほづきの軸まで赤し青きもあり 川崎展宏
桃青し赤きところの少しあり 高野素十
曼珠沙華赤すぎる空青すぎる 稲岡長

大寒や血管の図の青と赤 岡本眸
雲青くなり寒夕焼赤くなり 抜井諒一
赤憎し青恐ろしと追儺豆 ハードエッジ
青き炎(ほ)をつつむ赤き炎久女の忌 岡田一実
すずかけ落葉ネオンパと赤くパと青く 富安風生

重ね刷る赤青緑年賀状 ハードエッジ

炎帝えんていを吹き飛ばしたる野分のわきかな ハードエッジ

吹き飛:
青嵐木々の雨粒吹き飛ばし ハードエッジ
夏帽や吹き飛ばされて濠に落つ 正岡子規
蟻の列吹き飛ばしたる帚かな 野見山朱鳥
馬の屁に吹き飛ばされし蛍かな 小林一茶

吹き飛ばす石は浅間の野分かな 松尾芭蕉
旅僧の吹き飛ばさるゝ野分哉 正岡子規
台風やまだ吹き飛ばぬ屋根瓦 ハードエッジ
虫籠を吹き飛ばしたる野分かな ハードエッジ

おでんやの湯気吹き飛ばす空ッ風 高濱虚子
赤き目を吹き飛ばされし雪うさぎ ハードエッジ

※別件ながら、駆逐艦「野分」はこちら

 

◎推敲一覧/pdf

全43句

開発素句報 2024-03 推敲一覧

 

◎葉書推敲 原稿/pdf

全4枚

開発素句報 2024-03_葉書推敲 原稿

 

◎葉書推敲 加筆/pdf

全4枚

開発素句報 2024-03_葉書推敲 加筆

 

◎葉書俳句表側

 

以上です