年末 【年の暮】 吊り下げて鮭の朱を削ぐ年の暮

全然堂歳時記 年末の部
【年の暮】としのくれ

全然堂歳時記=現在、本号を含め98記事=春夏秋冬–年末年始=29-21-21-19–4-4
/2023.12.22日付

子季語:年の瀬、年詰る、歳末、歳晩、年末

 

◎葉書俳句

 

プリンタの目詰まりで一部の青が掠れています
中くらいのヘッドクリーニングでは解消されず、
互換インクの発注も年末なので控えているので、
解消は年明け、1月中頃の予定

 

◎テキスト

年のに午後の日差ひざしたまわりぬ ハードエッジ

午後の日:
午後の日の薄るる雪解雫かな 行方克巳
午後の日の晴れては曇る雪間かな ハードエッジ
午後の日の縁をそれゆく雛納め 片山由美子
午後の日の射し込む部屋や桜餅 星野立子
午後の日はとろりと睡し花蜜柑 菅沼琴子

敗蓮に午後の日射も三時まで 安住敦
麦蒔に午後の日の射すあてもなし 石塚友二
午後の日の今燃えてをり干蒲団 高濱虚子
大年や午後の日に舞ふ塵ほこり ハードエッジ

こんなにも青き青空年の暮 ハードエッジ

手堅いバージョン:
こんなにも青き空ある年の暮 ハードエッジ

ふと、季語は「お正月」でもイケルのでは、と慌てる
類句チェックの中の”季語の互換性”はあまり意識してなかった
でも、「お正月」では付き過ぎなので、
「年の暮」で良かったのではと言い聞かせる

あますところかぞふるところ年の暮 ハードエッジ

数ふる:
花びらの数ふるばかり散り初むる ハードエッジ
数ふるにひと穂ふた穂と狐火は ハードエッジ
数へ日の数ふるほどもなき日数 桂信子
頤で人を数ふる年忘 鈴木鷹夫
数ふるははぐくむに似て手毬唄 片山由美子

用心せよ警戒けいかいせよと年の暮 ハードエッジ

改案:
歳末特別警戒、ですから
用心せよ警戒せよと歳末は ハードエッジ

用心:
冬来ると心用心深くなる 西村和子
十二月火の神恋うて火の用心 中山純子
遠ざかる火の用心や雪女郎 ハードエッジ
火の用心さつしやりませう餅の反り 石塚友二

遠き町に雪の予報よほうや年の暮 ハードエッジ

予報:
暖かや天気予報のよく当る ハードエッジ
予報官言葉を濁しついりかな 稲畑廣太郎
かしはもち天気予報は雷雨とも 上田信治
父の日の天気予報を見てゐたる ハードエッジ
立秋と諭すが如く予報官 ハードエッジ

颱風の目つついてをりぬ豫報官 中原道夫
颱風のその後を同じ予報官 高澤良一
冬晴の一点張の予報かな 加藤静夫
セーターのあつたかさうな予報官 西原天気
東京に雪の予報やクリスマス ハードエッジ

聖夜待つ予報の雨の雪になれ 西村和子

年のの雪の覚悟かくごみぞれとは ハードエッジ

この20句中、純新作はたったの2句
この句はリリース前日の土壇場で捻り出した、
と言うか、授かった最後の1句
推敲の泥沼もこういう句があると報われます

雪と霙:
雪みぞれ降にまぎれて年暮ぬ 夏目吟江
けふ豊か霙のち雪そして愛 矢島渚男
連翹の雨がみぞれにみぞれが雪に 林原耒井
あらたまのみぞれは雪に我に雪 越智友亮
嶺の雪町は霙れて暮れにけり 島田青峰
霙にも雪にもならず唯の雨 高澤良一

あなどりし些事さじつまづく年の暮 ハードエッジ

侮り:
春の風邪あなどり遊ぶ女かな 三宅清三郎
あなどりし女人高野の冷ゆること 河野友人
文弱の徒とあなどりそ初詣 高濱虚子

抽斗ひきだしを引き抜きさがす年の暮 ハードエッジ

抽斗:
長火鉢抽斗かたく春の雪 久保田万太郎
佛壇のひきだしからも種袋 廣江八重櫻
抽斗に螢しまひし夜の火事 齋藤愼爾
漢方の百の抽斗十三夜 有馬朗人
忙しき抽斗ひとつ日脚伸ぶ 鈴木鷹夫

抽斗に翅をもつ種冬ごもり 鷹羽狩行
小引出し多き針箱年の暮 細見綾子

いてべてやして年の暮 ハードエッジ

掃いて:
花冷や掃いて女の塵すこし 稲垣きくの
春雨の上りし土を掃いてをり 星野立子
春泥にわたせる板を掃いてをる 京極杞陽
花掃いて流れにすすぐ竹箒 飴山實
身のまはり手で掃いて冬深まぬ 岡本眸

焚火跡うす墨色に掃いてある ハードエッジ
沢山の落葉を押して掃いてをり 上野泰
掃いてある落葉の道がみちびきぬ 中村汀女
お屋敷の子らが落葉を掃いてをる ハードエッジ
落葉掃いてそこここにある実生かな 五十嵐播水
その前をきれいに掃いて飾売る 山口青邨

山道の掃いてありたる初詣 富安風生

出刃でばの背をドンとドけり年の暮 ハードエッジ

出刃:
花冷えや出刃で掻き出す魚の腸 河合凱夫
出刃の背を叩く拳や鰹切る 松本たかし
出刃を呑むぞと鮟鱇は笑ひけり 阿波野青畝
食膳に着くなまはげの出刃を置く 中本真人

り下げてさけしゅぐ年の暮 ハードエッジ

削ぐ:
入道雲もくもくと吐く山を削ぐ 八木三日女
露の世に削ぎ残したる言葉かな 馬場駿吉
燭台の蝋削ぐことも盆支度 金子敦
干大根鼻削ぎにくる山の風 太田土男
冬薔薇の棘削ぐのみのアルバイト 金子敦

我はただ餅の黴削ぐむかし者 藤田湘子

飴色あめいろ大根だいこやせも年の暮 ハードエッジ

本歌取り:
乾鮭も空也の痩も寒の内 松尾芭蕉

飴色:
入道雲もくもくと吐く山を削ぐ 八木三日女
露の世に削ぎ残したる言葉かな 馬場駿吉
燭台の蝋削ぐことも盆支度 金子敦
干大根鼻削ぎにくる山の風 太田土男
冬薔薇の棘削ぐのみのアルバイト 金子敦

我はただ餅の黴削ぐむかし者 藤田湘子

たばで買ふ泥付葱どろつきねぎも年の暮 ハードエッジ

泥葱+:
妻亡きあといつまでも保つ泥の葱 宮津昭彦

ねぎよりも長きレシート年の暮 ハードエッジ

レシート:
レシートのとぐろ巻きたる年忘れ 金子敦
レシートが長くて川を渡りそう 八上桐子

クレーンをちぢませかせ年の暮 ハードエッジ

「縮ませ」は時系列の写生といえば、聞こえが良いが収まり悪し

別案:
クレーンを短く寝かせ年の暮 ハードエッジ

サイレンのドプラー効果年の暮 ハードエッジ

自己模倣:
数へ日にドプラー効果あるやうな ハードエッジ

年のの現場の指示しじしたがへと ハードエッジ

現場:
花見山現場の指示に従へり 加藤静夫
水打つて工事現場の昼休 杉原祐之
散らかつて山茶花の咲く現場かな ハードエッジ
雪折の現場近くを通りけり ハードエッジ
行く年や大きな橋の事故現場 ハードエッジ

年のの火事場帰りの消防車 ハードエッジ

通り過ぎるのは、
木枯の見てゆく火事の現場なり ハードエッジ

年のの五時の暗さよ月の出よ ハードエッジ

五時:
午後五時も明るくなりぬ花辛夷 ハードエッジ
五時起床空茫々と梅雨続く ハードエッジ
五時に暮れ六時真つ暗冬近し ハードエッジ
短日の三時四時五時六時かな 杉田菜穂
短日や五時と約して電話切る 星野立子

午後五時の空の暗さよ空つ風 ハードエッジ
四時五時のすでに寂しき水仙花 ハードエッジ

満潮まんちょうの夜の静けさ年詰としつまる ハードエッジ

満潮:
汐濁りして満潮の梅雨河口 今井杏太郎
満潮や涼んでをれば月が出る 夏目漱石
満潮に踊の足をあらひけり 森鴎外
満潮の向ふの町の秋祭 中村汀女
牡蠣船の満潮といふ揺れにあり 山田弘子

 

◎初案20句

 

 

◎推敲過程/テキスト/pdf

全103句/2枚

全然堂歳時記 年末【年の暮】テキスト推敲

 

 

◎A4推敲 原稿/pdf

全4枚

全然堂歳時記 年末 【年の暮】A4推敲 原稿

 

 

◎A4推敲 加筆/pdf

全4枚

全然堂歳時記 年末【年の暮】A4推敲 加筆

 

 

◎葉書推敲 原稿/pdf

全11枚

全然堂歳時記 年末 【年の暮】葉書推敲 原稿

 

 

◎葉書推敲 加筆/pdf

全11枚

全然堂歳時記 年末【年の暮】葉書推敲 加筆

 

 

◎葉書俳句表側

 

 

◎データベース画面/桐v10

 

 

◎年の暮秀句

うつくしや年暮れ切りし夜の空 小林一茶
乞ひに来ぬかけ乞こはし年のくれ 立花北枝
いねいねと人にいはれつ年の暮 八十村路通
行人に歳末の街楽変り 中村汀女
隠れん坊のやうに人逝く年の暮 伊藤伊那男

喪の花輪すぐにたたまれ年つまる 菖蒲あや
ぶらんこに老人のゐる年の暮 角川春樹
膝に来て消ゆる日ざしや年の暮 岸本尚毅
年の瀬や続く天気にはげまされ 星野立子
年の瀬の三日つづきて晴れわたり 細見綾子

年の暮なまじに月のひかりかな 久保田万太郎
灯の鋲の東京タワー年の暮 鷹羽狩行
火に捨ててくすりあやしき年の暮 加藤知世子
減りもせぬ海のうれしや年の暮 髙柳克弘
歳晩の人の流れを逆に来し 星野椿

もたいなやわれにも飽きて年暮るる 森澄雄
かかとねんごろに洗ふも年の暮 鷹羽狩行
海苔の艶玉子の照リや年の暮 久保田万太郎
羊羹の高きを買はむ年の暮 永井荷風
下駄買うて箪笥の上や年の暮 永井荷風

たてかけて年は暮れ行く竹帚木 川崎展宏
はんだいの箍こそみがけ年の暮 久保田万太郎
年の瀬のうららかなれば何もせず 細見綾子
何かしら遠し遠しと年暮るる 富安風生
京近く湖近く年暮るる 高野素十

江戸は江戸京は京にて年くれぬ 森川許六
静なる我住む町の年の暮 高濱虚子
歳晩の町にいつもの物を買ふ 岬光世
何もかもすみて巨燵に年暮るゝ 正岡子規
歳晩や市電廃れて軌を除けず 鷹羽狩行

歳晩やトラック滴るまで洗ふ 山口誓子
歳晩や火の粉豊かの汽車煙 中村草田男
すつぽんもふぐもきらひで年の暮 久保田万太郎
鮟鱇も河豚も喰ふなり年の暮 寺田寅彦
蛤のいける甲斐あれとしの暮 松尾芭蕉

花をまつ心に似たり年のくれ 正岡子規
年の瀬や一私事なれど一大事 安住敦
年の瀬はあわただしくて平和なり 岡崎陽市
誰彼がかれこれいふて年暮るる 会津八一

 

◎未練句/補遺/在庫処理

年の瀬の夜を流るる川の音 ハードエッジ
年の瀬のよく鳴る火災報知器よ ハードエッジ
落す湯に渦あらはるゝ年の暮 ハードエッジ
年の瀬に激しく風の吹く日かな ハードエッジ
潮みちて雨ふりだして年つまる ハードエッジ

抽斗の底板うすき年の暮 ハードエッジ
歳末を警め廻る消防車 ハードエッジ
年の瀬のサンタの色の消防車 ハードエッジ
消防車激しく濡れて年詰る ハードエッジ
年の瀬や真水で洗ふ消防車 ハードエッジ

オライ・オーライ・バックオーライ年詰る ハードエッジ

 

以上です