春 【涅槃会】 復活を説かず寝釈迦の大いなる

全然堂歳時記 春の部
【涅槃会】ねはんえ

全然堂歳時記=現在、本号を含め71記事=春夏秋冬–年末年始=22-9-17-16–3-4
/2023.2.15

子季語:涅槃ねはん涅槃図ねはんず涅槃絵ねはんえ寝釈迦ねしゃか
人気成分:悲し、嘆き、泣く、涙、月、象

 

◎葉書俳句

全然堂歳時記 春 【涅槃会】

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◎テキスト

復活ふっかつかず寝釈迦ねしゃかの大いなる ハードエッジ

復活:
ユダのもまた復活す労働歌 加藤楸邨    しゅうそん
イエスには復活木には返り花 岩岡中正いわおか なかまさ

ふる雪にお涅槃ねはんの寺ま白なり ハードエッジ

涅槃会の雪:
降りしらみたちまち雪の涅槃寺 阿波野青畝あわの せいほ
お涅槃のかたきまぶたや雪明り 前田普羅  ふら

花にまだ間のある寝釈迦ねしゃかやすらかに ハードエッジ

間のある:
花にまだ間のある雨にれにけり 久保田万太郎
食ひつくすまでに間のある紙魚しみの本 ハードエッジ
すいつちよのちよといふまでの間のありし 下田實花しもだ じっか
夕暮に少し間のある時雨しぐれかな ハードエッジ

さえずりを聞きつ寝釈迦ねしゃか金色こんじきに ハードエッジ

聞きつ:
うつとりと雲雀ひばりを聞きつ椿つばき落つ ハードエッジ
松のことは松に聞きつつ手入かな 山田弘子
木の実降る音を聞きつゝひにけり 高濱虚子たかはま きょし
学校のことも聞きつつ毛糸編む ハードエッジ
聖菓せいか売る声を聞きつつ人を待つ 金子敦かねこ あつし

寝返ねがえりのこちら向きなる寝釈迦ねしゃかかな ハードエッジ

寝返り:
寝返りし子の片頬かたほほひな明り 今瀬剛一いませ ごういち
寝返りを打ちてそろそろ昼寝覚ひるねざめ 稲畑汀子いなはた ていこ
寝返りもなくて昼寝のあうら見せ 高濱年尾たかはま としお
寝返りてなほ颱風たいふうのさ中なり 山口波津女   はつじょ
地の中に寝返りを打ち春を待つ ハードエッジ
まぬやうに寝返りしたつもり ハードエッジ
寝返りてせき寝返りてせき夜明けまで 中井亜由
寝返りを打つや去年こぞから今年へと 安里道子やすざと みちこ

沈黙ちんもく寝釈迦ねしゃかは金歯かもしれぬ ハードエッジ

金歯:
総金歯の美少女のごとき春夕焼 高山れおな
獅子舞ししまいの金歯ぞろりと顔の前 相子智恵あいこ ちえ

ひねもすの眠りの猫や涅槃像ねはんぞう ハードエッジ

眠る猫:
恋猫の鼻つけねむる板の上 加藤楸邨    しゅうそん
子猫ねむしつかみ上げられても眠る 日野草城    そうじょう
まぶしくて眠くて子猫目をぢる 抜井諒一ぬくい りょういち
猫のよく眠ることよの鰯雲いわしぐも 久保田万太郎

眠る猫/自作:
恋猫でありし昔や猫眠る ハードエッジ
夢の世の子猫よ眠れ母のそば ハードエッジ
乳房たのし子猫をあまた眠らせて ハードエッジ
どんぶりは涼しと猫の子が眠る ハードエッジ
手袋はもしや眠れる猫の下 ハードエッジ

犍陀多かんだたのはかなかりしを寝釈迦かな ハードエッジ

犍陀多は芥川龍之介『蜘蛛の糸』に登場する悪党
 『蜘蛛の糸』/Wikipedia
 『蜘蛛の糸』/青空文庫

はかなかり:
朝顔もはかなかりしが蝉時雨せみしぐれ ハードエッジ
ゆふぐれのはかなかりける息白し ハードエッジ
頼家よりいえもはかなかりしが実朝忌さねともき 水原秋櫻子    しゅうおうし

涅槃会ねはんえ白妙しろたえ飯粒めしつぶの数 ハードエッジ

飯粒:
飯粒は籾米もみまいよりものどかなる 三橋敏雄みつはし としお
鼻先に飯粒つけて猫の恋 小林一茶   いっさ
飯粒のねばり強さよ雲のみね 日原傳ひはら つたえ
かまつけて飯粒沈む清水しみずかな 正岡子規  しき
顔に付く飯粒はえにあたへけり 服部嵐雪はっとり らんせつ
飯粒の一粒づゝにはえとまる 正岡子規  しき
風呂吹ふろふきや飯粒沈むわんの底 会津八一あいづ やいち

するするとひも引き上げて涅槃ねはん絵図えず ハードエッジ

紐:
春浅く子のもの干して紐るる 皆吉爽雨みなよし そうう
風船浮く紐がたたみにさはりをり 小川軽舟    けいしゅう
白酒しろざけの紐のごとくにつがれけり 高濱虚子たかはま きょし
紐すこしもらひに来たり雛納ひなおさめ 能村登四郎のむら としろう
紐解ひもといてふた開けて雛飾ひなかざりけり ハードエッジ
花衣はなごろもぬぐやまつはる紐いろいろ 杉田久女    ひさじょ
甚平じんべいの紐に都電の定期券 舘岡沙緻たておか さ ち
武者むしゃ人形かぶとの紐の花結び 高橋淡路女   あわじじょ
はぎくくるいままで何くくりし紐 加倉井かくらいあき
寒鴉かんがらす紐のごときをちよとくわへ 行方克巳なめかた かつみ

涅槃図ねはんず贔屓ひいき菩薩ぼさつありにけり ハードエッジ

贔屓:
宿の子をかりのひいきや草相撲くさずもう 久保より江
湯豆腐ゆどうふ醤油しょうゆはヒゲタ贔屓かな 安住敦あずみ あつし
義士ぎしの日や本所ほんじょに老いて吉良きら贔屓 大島民郎おおしま たみろう
年越としこしの親子贔屓の蕎麦屋そばやあり 安住敦あずみ あつし
羽子板はごいたや母が贔屓の歌右衛門うたえもん 富安風生とみやす ふうせい

天井てんじょうに届く悲しみ涅槃ねはん絵図えず ハードエッジ

天井:
天井にとどけひいな高御座たかみくら 高濱虚子たかはま きょし
享保雛きょうほびな天井の灯をいぶかしむ ハードエッジ
宇宙とは天井の裏亀鳴かめなけり 中塚健太
天井につかへてかめの山桜 長谷川櫂はせがわ かい
かびの香に天井高きやかたかな ハードエッジ
布団の厚さぶん天井が近い 古田秀
天井の天女てんにょすすも払ひけり 内藤鳴雪ないとう めいせつ
女湯に天井つづく初湯はつゆかな 小川軽舟    けいしゅう

涅槃図ねはんず剥落はくらくをわがたなごころ ハードエッジ

剥落:
女身仏に春剥落のつづきをり 細見綾子ほそみ あやこ
涅槃図の剥落も又なげきかな 吉田美佐子
花もまた春剥落といふことを ハードエッジ
金屏きんびょうの金の剥落山桜 齋藤愼爾さいとう しんじ
こい老いて黒剥落す山ざくら 森澄雄
美しき黒の剥落揚羽蝶あげはちょう ハードエッジ
鏡台きょうだいりの剥落近松忌ちかまつき 鈴木真砂女  まさじょ

涅槃図ねはんずの猫描きたるはその弟子でしか ハードエッジ

弟子:
たこの弟子たこ師匠ししょうの前走る 山科誠やましな まこと
花仰はなあお生前せいぜんの弟子その後の弟子 山崎ひさを
弟子となるなら炎帝えんてい高弟こうていに 能村登四郎のむら としろう
弟子達の一つ灯に寄る夜長かな 村上鬼城むらかみ きじょう
よき師匠ししょうよき弟子かくて秋深き 久保田万太郎
合弟子は佐渡さどへかへりし角力すもうかな 久保田万太郎
を央の日向ぼつこや弟子もり 杉本寛
弟子どもの右往左往うおうさおうを見たまへり 筑紫磐井つくし ばんせい

涅槃図ねはんずの涙ながらにせゆくも ハードエッジ

褪せ:
雛納ひなおさひなのあられも色褪せて 高濱虚子たかはま きょし
金褪せず色褪せにけり古雛ふるひいな 大橋敦子おおはし あつこ
一点の朱唇しゅしん褪せざるひいなかな 行方克巳なめかた かつみ
涅槃図の悲しみ褪せてをらざりし 藤崎久を
むらさきの褪せしがごとく昼寝覚ひるねざめ 加倉井かくらいあき
書き込みの赤の褪せたる書をばくす ハードエッジ
あぢさゐや月に色づき日に褪せて 成瀬櫻桃子なるせ おうとうし
夕暮の赤の褪せゆく秋の風 ハードエッジ
ぼろ市の箱の褪せたるプラモデル 中本真人なかもと まさと

涅槃ねはん唐天竺からてんじくも月を上げ ハードエッジ

唐天竺:
寧楽ならと書けば唐天竺や春霞はるがすみ ハードエッジ

涅槃図ねはんずに光を当てて撮影さつえいす ハードエッジ

涅槃ねはん方程式ほうていしきかいふたつ ハードエッジ

方程式:
ソーダ水方程式を濡らしけり 小川軽舟    けいしゅう

涅槃ねはん黒板拭こくばんふきに文字のくず ハードエッジ

文字:
黒板に遅日ちじつの文字の消し残し 中村汀女    ていじょ
壷焼つぼやきの奥より文字のやうなもの 齋藤朝比古さいとう あさひこ
苗札なえふだの同じ花の名違ふ文字 ハードエッジ
絵も文字も下手な看板海の家 小野あらた
白靴しろぐつの中なる金の文字が見ゆ 波多野爽波はたの そうは
夏負けに飲むビタミンの頭文字かしらもじ ハードエッジ
かさといふ文字もんじ重たしあぢさゐ 北見さとる
七夕竹たなばただけ惜命しゃくみょうの文字かくれなし 石田波郷   はきょう
葡萄ぶどうまだ小文字のoの大きさに ハードエッジ
落ちてゐる紙に文字ある枯野かな 杉本零    ぜろ

涅槃ねはんを過ぎて仏生会ぶっしょうえも近し ハードエッジ

近し/春夏秋冬以外:
満月のゆたかに近し花いちご 飯田龍太いいだ りゅうた
菜種なたね咲いて小村近しと見ゆるかな 正岡子規  しき
あま酒の地獄じごくも近し箱根山はこねやま 与謝蕪村よさ ぶそん
運動会近しよブラス風に乗り 高澤良一たかざわ よしかず
七夕や銀河は遠く月近し ハードエッジ
黄菊先づ車窓すなり町近し 中村汀女    ていじょ
成人式近しフランス・ギャルの死よ ハードエッジ

◎推敲過程/テキスト/pdf

全2枚/127句

全然堂歳時記 春 【涅槃会】テキスト推敲

 

◎推敲過程/A4印刷+手書き/pdf

全2枚

全然堂歳時記 春 【涅槃会】A4推敲

◎推敲過程/葉書印刷+手書き/pdf

葉書全11枚/A4-3枚

全然堂歳時記 春 【涅槃会】葉書推敲

◎葉書俳句表側

全然堂歳時記 春 【涅槃会】 表

◎データベース画面/桐v10

涅槃会 桐v10画面

◎涅槃会秀句

なあるほどこれは大きな涅槃像 夏目漱石なつめ そうせき
ほろほろとりゅうの涙や涅槃像 正岡子規  しき
山寺や涅槃図かけて僧一人 星野立子
土不蹈つちふまずゆたかに涅槃したまへり 川端茅舎かわばた ぼうしゃ
おん顔の三十路みそじ人なる寝釈迦かな 中村草田男   くさたお
涅槃会やが乗り捨ての茜雲あかねぐも 上田五千石   ごせんごく
涅槃図につかありし夕日かな 安住敦あずみ あつし
涅槃図は黄金光こがねびかりにひびわれぬ 阿波野青畝あわの せいほ
大いなる身をはばからず寝釈迦かな 長谷川櫂はせがわ かい
夕焼のいよいよ暗き寝釈迦かな 岸本尚毅   なおき
みづからの光のなかに寝釈迦あり 岡崎陽市
涅槃図にぽぽつぽぽつと和らうそく 西村和子
はりといふ強きものある涅槃寺 大牧広おおまき ひろし
囲まれて仕合せさうな寝釈迦かな 後藤比奈夫  ひなお
いつまでもくなら涅槃圖へおき 中原道夫
涅槃図の野次馬やじうまめきし菩薩ぼさつかな 中本真人なかもと まさと
涅槃会の水に穴あくこいの口 三橋敏雄みつはし としお

◎未練句/補遺

僧去つて大涅槃図の静けさよ ハードエッジ
涅槃図のひねもす泣いて日が暮れて ハードエッジ
満月の高く小さく涅槃かな ハードエッジ
涅槃図のこちら側なる我らかな ハードエッジ
印度いんどにはぞうが多くて涅槃像 ハードエッジ
切られたる供華くげの悲しみ涅槃像 ハードエッジ

以上です