角川俳句賞2022 落選作 プランB 進むレジ進まぬレジや葱を手に

角川俳句賞 2022 落選作
プランB「ベンゼン環」50句

落選作

◎葉書俳句

 

◎テキスト

メリーゴーラウンド春光しゅんこうつむぎ出す ハードエッジ

改訂版:
メリーゴーラウンド春光をき散らし ハードエッジ 2022.9.16

回転木馬:
春星へ回転木馬輪をほどく 対馬康子つしま やすこ
夏痩なつやせてメリーゴーランドと沈む 大石雄鬼   ゆうき
閉園へいえんの油臭のメリーゴーラウンド 三橋敏雄みつはし としお

日めくりのまだ分厚ぶあつくて春の雪 ハードエッジ

日めくり:
日めくりの減るも涼しきひとつにて 正木まさきゆう子
日めくりの明日が透けて鰯雲いわしぐも 瀬間陽子
日めくりもさびしくなりぬおでん酒 ハードエッジ
大いなる日めくり紙漉女かみすきめの上に 辻桃子
日めくりの昨日枯葉のごとくつ 神長裕子

春雪しゅんせつりそめに組む花筏はないかだ ハードエッジ

かりそめ:
淡雪あわゆきやかりそめにさす女傘おんながさ 日野草城    そうじょう
かりそめのみつにふくるるはちの腹 ハードエッジ
かりそめの街とは言はじ夕櫻ゆうざくら 中村汀女    ていじょ
ひととせはかりそめならず藍浴衣あいゆかた 西村和子
かりそめのつゆにも影のありにけり 倉田紘文    こうぶん
かりそめに衣たるモデルの夜食かな 日野草城    そうじょう
七夕たなばたや別れに永久とわとかりそめと 鷹羽狩行たかは しゅぎょう
かりそめにかけし干菜ほしなのいつまでも 高濱虚子たかはま きょし
かりそめの赤目のあわ雪兎ゆきうさぎ ハードエッジ
かりそめのたすきかけたる春著はるぎかな 久保田万太郎
ふる雪のかりそめならず年用意としようい 久保田万太郎

ひんがしの山の雪解ゆきどけ日本海 ハードエッジ

日本海:
籾殻もみがらのひとり燃えゐて日本海 神蔵器かみくら うつわ
日本海の寒さのみしかに甘し 宮津昭彦みやつ あきひこ
短日たんじつの日本海鳴る下校かな 大峯おおみねあきら
 ※短日みじかびかも
冬のにじ消えて残りし日本海 菖蒲しょうぶあや
ねんねこやれし日よりの日本海 岡本眸    ひとみ
いくらでも雪捨てられて日本海 ハードエッジ
日本海に太平洋に千代の春 ハードエッジ

ふらここやくつを飛ばして足長き ハードエッジ

足長:
足長の飛蝗ばったなれどもひげ短か ハードエッジ

春燈しゅんとうの消えて闇夜やみよ影法師かげぼうし ハードエッジ

影法師:
土筆つくしんで立ち上りわが影法師 星野立子
芽ぐみたる枝にぎはしや影法師 富安風生とみやす ふうせい
児の墓に秋日の母の影法師 浜井武之助
影法師月に並んで静かなり 夏目漱石なつめ そうせき
影法師刈田かりたに沈みあぜにうき 高濱虚子たかはま きょし
かりあとやひとり案山子かかしの影法師 正岡子規  しき
虫聞くや庭木にとゞく影法師 高野素十    すじゅう
ひいき目に見てさへ寒し影法師 小林一茶   いっさ
冬の日や馬上に氷る影法師 松尾芭蕉    ばしょう
あをざめてゐし雪の上の影法師 西村和子
影法師のわれがあはれや懐手ふところで 高濱虚子たかはま きょし

何のか宿の菜飯なめし色違いろちがひ ハードエッジ

色違:
しやぼん玉兄弟髪の色違ふ 西村和子
春燈しゅんとうの色違ひたる二間ふたまかな 正木ゆう子
一枚の青田の青の色違ふ 山本一歩   いっぽ
牡丹ぼうたんの色違へどもしべの金 川崎慶子

切先きっさきするどきを地に挿木さしきかな ハードエッジ

切先:
きし湯に切先青き菖蒲しょうぶかな 中村汀女    ていじょ
肩に置く髪の切先冬に入る 正木ゆう子
寒稽古かんげいこに切先を向けにけり 加藤静夫
牡蠣鍋かきなべねぎの切つ先そろひけり 水原秋櫻子みずはら しゅうおうし
門松かどまつの竹の切鋒きっさきるメス 楠本憲吉くすもと けんきち

妻に子に我にへそあり万愚節ばんぐせつ ハードエッジ

臍:
鉄棒にぶらさがる子の春の臍 千野千佳ちの ちか
あんぱんの葡萄ぶどうの臍や春惜はるおしむ 三好達治みよし たつじ
臍もなき大和島根に春の富士 川崎展宏    てんこう
風船は涙のかたち臍もある ハードエッジ
鑿彫なたぼりの誕生佛たんじょうぶつの乳と臍 辻桃子
見つけたりかえるに臍のなきことを 横井也有   やゆう
大木の臍の高さに巣箱かな 石原百合子
永らへし臍もべそかく大暑たいしょかな 攝津幸彦せっつ ゆきひこ
臍出して雷様の大暴おおあばれ ハードエッジ
行水ぎょうずいかみなり臍を驚かす 正岡子規  しき
水着着てマネキンに臍らしきもの ハードエッジ
ダイバー消え水面みなもに臍のごときもの 小久保佳世子こくぼ かよこ
くら桜桃おうとうの種うづめたき 古田秀
秋風やなんじの臍に何植ゑん 藤田哲史ふじた さとし
木の実のごとき臍もちき死なしめき 森澄雄  すみお
くしゃみの巣臍の右とも左とも 宇多喜代子うだ きよこ
初湯出て臍もまたたくことをせし 野中亮介のなか りょうすけ

名札は胸に苗札なえふだは赤土に ハードエッジ

名札:
春かなし下駄箱げたばこの名札みながされ ハードエッジ
植木市うえきいち当て字ばかりの名札付く 右城暮石うしろ ぼせき
小さきちょう大き名札を付けられて ハードエッジ
産科さんかとふ名札はたのし春隣はるとなり 中村汀女    ていじょ
待春たいしゅん/まつはるの名札ばかりに百花園ひゃっかえん 中戸川朝人なかとがわ ちょうじん
門弟もんていの名札そろふや鏡餅かがみもち 中村吉右衛門きちえもん

古株ふるかぶに日の目を見せて根分ねわけかな ハードエッジ

日の目:
人参にんじんや日の目を見ずに日の色に ハードエッジ

遠足の園児えんじと聞けばそれだけで ハードエッジ

園児:
園児来ぬ日よふらここのさびしき日 後藤比奈夫
入園児母の刺繍ししゅうにうづめられ 福永耕二
菜の花に園児は見えず保母ほぼ二人 ハードエッジ
百日紅さるすべり園児ねむりのとききたる 飯田龍太
バス来たと園児らのこゑ天高し 金子敦
もどかしき園児の玉入れ運動会 高澤良一
赤鬼あかおにが好きな園児や鬼は外 ハードエッジ

復活ふっかつのなきやすらぎの涅槃像ねはんぞう ハードエッジ

復活/季語以外:
飛花落花ひからっか敗者はいしゃ復活戦ふっかつせんて ハードエッジ

ちょうになる夢を忘れししじみやも ハードエッジ

なる夢:
紅梅こうばい白梅はくばいとなる夢の底 秋元不死男あきもと ふじお
昼寝の象鼻長くなる夢を見る 瀬戸優理子
蚕豆そらまめは玉になる夢忘れしや ハードエッジ
鶏頭けいとうの木になる夢を捨てきれず 大串章おおぐし あきら
魚になる夢に目覚めてなほ寒し 辻美奈子
美しきちょうになる夢春を待つ ハードエッジ

辞書に並ぶ「ミサ」と「ミサイル」恋の猫 ハードエッジ

辞書:
暖かや辞書第一ページに「愛」 安住敦あずみ あつし
四隅よすみより辞書はほろびぬ花ミモザ 太田うさぎ
斯許かばかりの辞書のな行に夏・日本 ハードエッジ
見開きの辞書の昼寝や風も出て ハードエッジ
辞書の名のそのいずみや春を待つ 藤村克明

あくびなら子猫も負けてをらざりし ハードエッジ

あくび:
永き日や欠伸あくびうつして別れ行く 夏目漱石なつめ そうせき
口まげしそれがあくびやちょうの昼 清崎敏郎きよさき としお
寝ておき大欠おおあくびして猫の恋 小林一茶   いっさ
春はまだくま欠伸あくびふきとう ハードエッジ
花嫁はなよめの小さなあくび聖五月せいごがつ 鎌田保子かまた やすこ
らちもなや蚊遣かやりの妻の大あくび 日野草城    そうじょう
岸に釣る人の欠伸や舟遊ふなあそび 高濱虚子たかはま きょし
ひつそりと遠火事とおかじあくびする赤子 西東三鬼さいとう さんき
かれ深し欠伸を包むたなごころ 岡本眸    ひとみ
やはらかな赤子のあくび年明くる ハードエッジ

切つてあるハムやチーズや朝桜あさざくら ハードエッジ

ハム:
多喜二忌たきじきや糸きりきりとハムの腕 秋元不死男あきもと ふじお
紫陽花あじさいやハムを土台の目玉焼 ハードエッジ
どんと置く骨抜ハムや冬深し ハードエッジ
ハムの切口のうず巻くクリスマス 鷹羽狩行たかは しゅぎょう
ウインドのハムにもリボンクリスマス 西村和子

ゴジラいま地球の味方花吹雪はなふぶき ハードエッジ

味方:
敵味方入り乱れたるシャワーかな 齋藤朝比古さいとう あさひこ
みづすまし味方といふは散りやすき 鷹羽狩行たかは しゅぎょう
敵味方ともに香りて菊人形 林昭太郎  しょうたろう
とんぼ連れて味方あつまる山の国 阿部完市あべ かんいち
膝掛ひざかけをして味方得し思ひかな 片山由美子
ふりがなを付けると味方らしくなる 月波与生つきなみ よじょう

花吹雪はなふぶき本気を出して来りけり ハードエッジ

本気:
百足虫むかで打つ妻の本気を垣間かいま見る 市堀玉宗いちぼり ぎょくしゅう
逃げられて本気になりし泥鰌掘どじょうほり 大久保白村      はくそん

若草に厩出まやだしといふ一大事 ハードエッジ

一大事:
我生の今日の昼寝も一大事 高濱虚子たかはま きょし
しぐるゝやこれ俳諧はいかいの一大事 加藤郁乎かとう いくや
年の瀬や一私事しじなれど一大事 安住敦あずみ あつし

六月の朝の六時の空の青 ハードエッジ

六時:
豊年ほうねんの午後の六時の真つ暗な ハードエッジ
午後五時が六時のごと日短ひみじか ハードエッジ
短日たんじつの三時四時五時六時かな 杉田菜穂  なほ

右のほおに左の頬に梅雨つゆひげ ハードエッジ

右の頬:
ひこばえや愛は左右の頬打たす 有馬朗人ありま あきと
枯木折るし「右の頬打たれなば」 秋元不死男あきもと ふじお

片陰かたかげが道の右から左へと ハードエッジ

右から:
右からも左からも蛙ぴよんぴよん 種田山頭火たねだ さんとうか

シャワー「弱」さへ日焼の肩にみ付きぬ ハードエッジ

推敲:
シャワーそく日焼の肩に噛み付きぬ ハードエッジ

噛み付:
夕立やかみつくやうな鬼瓦おにがわら 小林一茶   いっさ
噛みつきしありが小さく小さくて 右城暮石うしろ ぼせき

装束デザインで買ひし麦酒ビールのハズレかな ハードエッジ

一寸、ひねり過ぎ

買ひし:
年玉としだまで買ひしトランプひな祭 ハードエッジ
妻買ひし岐阜提灯ぎふちょうちんを妻へる 小原啄葉おばら たくよう
今買ひし服に著替きがへて避暑ひしょ夫人 中村芳子
青森に林檎りんごを買ひし夜汽車よぎしゃかな ハードエッジ
十二月ついでに買ひしもの重し 井上あや子

豆飯まめめし莢豌豆さやえんどうのおみおつけ ハードエッジ

うすものはがね仕立に甲羅こうらかな ハードエッジ

甲羅:
亀鳴けばぽかんと開く甲羅やも ハードエッジ
亀鳴くや甲羅の内の鏡張かがみばり ハードエッジ
雨乞あまごいかめの甲羅に二三言 小澤實
冬凪ふゆなぎに潜水艦の甲羅干し 伊藤伊那男  いなお
はすは枯れかめは甲羅を干しにけり 南うみを

蛞蝓なめくじの百の重さのひきがえる ハードエッジ

推敲:
蛞蝓の百の重みの蟇 ハードエッジ

茄子なす胡瓜きゅうり牛蒡ごぼう大蒜にんにく萵苣ちしゃも咲き ハードエッジ

も咲き:
野に山にちょうの舞ふ日や花も咲き ハードエッジ
去年こぞも咲きことしも咲くや桜花 上島鬼貫うえじま おにつら
有刺鉄線ゆうしてっせんにも咲きて薔薇ばらの園 鷹羽狩行たかは しゅぎょう
松葉牡丹まつばぼたんちら~白も咲きそへる 鈴木花蓑    はなみの
人生は秋晴もあり野菊も咲き 京極杞陽きょうごく きよう
菊も咲きぬ新酒盗みに來ませ君 正岡子規  しき
日かげにも咲きつらなりて草の花 深見けん二
破魔矢はまやありつぼ一枝いっしの梅も咲き 岸風三楼きし ふうさんろう

甘藍かんらん外葉そとば大いにり返る ハードエッジ

 

水たまり秋の欠片かけらを浮べたる ハードエッジ

欠片:
春昼しゅんちゅうに月の欠片のごときもの ハードエッジ
うすらひのかけら光りぬ竹箒たけぼうき 南うみを
猫にやる愛のチョコレートの欠片 ハードエッジ
地虫じむし出づ吸ひ取り紙に字のかけら 西原天気
かたまりも欠片も真白ましろ夏の空 ハードエッジ
いづくにもにじのかけらをひろず 山口誓子   せいし
かはらけの欠片のおど噴井ふけいかな 押野裕おしの ひろし
あり運ぶちょう模様もようのかけらかな 髙柳克弘たかやなぎ かつひろ
音を生みけり凍滝いてだきの一とかけら 行方克巳なめかた かつみ
火のかけら皆生きてゐる榾火ほたびかな 岸本尚毅   なおき
枯木より氷のかけら落ちてきし 長谷川櫂はせがわ かい
木に残る枯葉の欠片らしきもの ハードエッジ

さわやかに引きし補助線ほじょせん仮説かせつる ハードエッジ

補助:
柿の秋バスに補助席ありしころ ハードエッジ

空缶に鉄やアルミや秋の風 ハードエッジ

空缶:
空缶の水いてをり野火のびて 北村保

あまの川より一滴いってきの耳かざり ハードエッジ

耳飾:
遠雷えんらいやはづして光る耳かざり 木下夕爾きのした ゆうじ
葉桜はざくらやちりりと銀のイヤリング ハードエッジ
花売に寒し真珠しんじゅの耳飾 夏目漱石なつめ そうせき

かつかつ書くベンゼンかん夜学やがくかな ハードエッジ

かつかつ:
おもやつれしてかつかつと夜食かな 高濱虚子
原爆許すまじかにかつかつと瓦礫がれきあゆむ 金子兜太
かつかつと聖夜せいやの皿にナイフの音 ハードエッジ
寒鴉かんがらすかつかつはしを鳴らしけり 杜雨

休暇きゅうか包帯ほうたいの子がもう一人 ハードエッジ

包帯:
包帯でつなぐ命の接木つぎきかな ハードエッジ

菊のかわけば消ゆる水たまり ハードエッジ

水+消ゆる:
蝌蚪かと小さし浮かびて消ゆる水泡みなわよりも 中村草田男   くさたお
水掛けて消ゆる罪あり初詣はつもうで 江川由紀子

瓢箪ひょうたんになれず糸瓜へちまのぶらさがる ハードエッジ

ぶら下:
涼しさやえんより足をぶらさげる 各務支考かがみ しこう
湖に足ぶらさげて涼みかな 正岡子規  しき
ぶら下るとんぼの羽根や蜘蛛くも留守るす 寺田寅彦    とらひこ
老鶏ろうけいひきぶらさげて歩くかな 飯田蛇笏いいだ だこつ
ぶらさげて青大将あおだいしょうの長さ見す 成瀬正俊なるせ まさとし
昼飯をぶらさげて居るかゞしかな 小林一茶   いっさ
稲運びあきし子稲架はざにぶらさがる 高野素十    すじゅう
へうたんとなつて天下にぶら下る ハードエッジ

みしみしと土龍もぐらひび霜柱しもばしら ハードエッジ

みしみし:
夜桜のみしみしるゝまへうしろ 川崎展宏    てんこう
四五人のみしみし歩く障子しょうじかな 岸本尚毅   なおき

白狐しろぎつねたれてたおる白きまま ハードエッジ

白狐:
やみ割れて白狐びゃっこあらはる夏芝居なつしばい 西村和子
白狐しろぎつねもとよりおどり上手じょうずなり ハードエッジ

進むレジ進まぬレジやねぎを手に ハードエッジ

を手に:
子を探す母風船を手にしをり 青葉三角草あおば さんかくそう
菜の花やスコップを手に五六人 山田露結   ろけつ
衣更ころもかへてすぐ包丁ほうちょうを手にしたり 山口波津女   はつじょ
まくなぎを手に持つもので払ひけり 高濱虚子たかはま きょし
悲しみの黒きよそお薔薇ばらを手に 藤木如竹
秋行くか羽ある種子しゅしを手にとれば 山口誓子   せいし
鷹匠たかしょうが二人一人はたかを手に 京極杞陽きょうごく きよう
たこを手に祖母そぼうずめに行く子なり 今瀬剛一いませ ごういち

かぞへ日にドプラー効果あるやうな ハードエッジ

効果:
揚雲雀あげひばり宣傳せんでん効果なしとせず 中原道夫

年の瀬の火事場帰りの消防車 ハードエッジ

消防車:
消防車洗つて春の平和な日 武者圭司
かげろふに消防車解体中かいたいちゅうも赤 西東三鬼さいとう さんき
消防車を日向ひなたに出して黴退治かびたいじ 田川飛旅子たがわ ひりょし
消防車れてもどりぬ秋の暮 本庄登志彦
大迂回だいうかいして山火事へ消防車 右城暮石うしろ ぼせき
消防車待つ間も燃ゆるわが家かな 皆吉司みなよし つかさ
消防車救急車パトカー散乱さんらん毛布の上 今井聖いまい せい
数へ日のかねまばらに消防車 ハードエッジ

くりやには油のねし古暦ふるごよみ ハードエッジ

跳ねし:
春の夜の水面みなもに跳ねしものや何 ハードエッジ
永き日の生簀いけすみて跳ねしもの 鷹羽狩行たかは しゅぎょう
栗鼠りす跳ねしあとゑくぼなす春の雪 宮津昭彦みやつ あきひこ
夜の魚湖面こめんに跳ねしテントかな 薮内小鈴やぶうち こすず
断崖だんがいを跳ねしいとどの後知らぬ 山口誓子   せいし
海老えび跳ねしくりやの音か除夜じょやかね 水原秋櫻子    しゅうおうし

新年

飛行機の操縦室そうじゅうしつ初御空はつみそら ハードエッジ

操縦:
操縦桿そうじゅうかん引いて青野をかたむかす 駿河岳水するが がくすい

買初かいぞめの銀座京橋日本晴にほんばれ ハードエッジ

日本橋じゃなくて、日本晴れ、という引っ掛け問題 (^_^;;;

幼子おさなご首筋くびすじ寒き春著はるぎかな ハードエッジ

首筋:
薄氷はくりょうを踏む首筋を虚空こくうかな 永田耕衣ながた こうい
昼みれば首筋赤きほたるかな 松尾芭蕉    ばしょう
首筋の寒さがそでにぬけにけり 上野泰    やすし
聖夜せいやミサ首筋やはらかく祈る 鷹羽狩行たかは しゅぎょう

雪山に取り囲まれて弓始ゆみはじめ ハードエッジ

取り囲:
日焼子に取り囲まれて赤ん坊 ハードエッジ
赤い羽根取り囲まれて付けらるる 中本真人なかもと まさと
水仙すいせんを取り囲みたる書斎しょさいしょ ハードエッジ

大寒だいかんの海のさかなや食べごろの ハードエッジ

海の魚:
春光しゅんこうや海の魚を海へ干す ハードエッジ
散る花に覚め深海の魚に似たり 橋閒石はし かんせき
深海の魚が空とぶ走馬灯そうまとう 井沢正江いざわ まさえ

ティアラして雪のディズニーランドかな ハードエッジ

夏バージョン:
ティアラして夜店を帰る女の子 ハードエッジ

 

◎初案50句

メリーゴーラウンド春光みぎひだり ハードエッジ
日めくりのまだ分厚くて春の雪 ハードエッジ
ふる雪や川に筏を組むでもなく ハードエッジ
雪解川西へ北へと日本海 ハードエッジ
ぶらんこに靴を飛ばして足長き ハードエッジ
春燈や健気なものに影法師 ハードエッジ
いつもとは色違ひなる菜飯かな ハードエッジ
断面の鋭きを地に挿木かな ハードエッジ
妻に子に臍のありたる四月馬鹿 ハードエッジ
名札は胸に苗札は地に刺して ハードエッジ
古株に日の目を見せて根分かな ハードエッジ
遠足の園児思へばそれだけで ハードエッジ
復活のなき安らぎの涅槃像 ハードエッジ
蝶になる夢を見てゐる蜆かな ハードエッジ
近くある「ミサ」と「ミサイル」恋の猫 ハードエッジ
猫の欠伸子猫の欠伸我が欠伸 ハードエッジ
切つてあるハムやチーズや朝桜 ハードエッジ
目の前のこれが本気の花吹雪 ハードエッジ
ゴジラ今は地球の味方寒桜 ハードエッジ
若草に厩出しといふ一大事 ハードエッジ
六月の朝の六時の晴れ渡り ハードエッジ
髭剃りに片頬伸ばす梅雨入かな ハードエッジ
片陰や道の右から左へと ハードエッジ
湯浴みして日焼の肩を噛まれけり ハードエッジ
缶ビールの野暮なデザイン味は良し ハードエッジ
豆飯に莢豌豆の味噌汁も ハードエッジ
羅と書けども蟹の甲羅かな ハードエッジ
蛞蝓の百倍重き蟇 ハードエッジ
茄子・胡瓜・牛蒡・大蒜・萵苣も咲き ハードエッジ
甘藍の外葉大いに反り返る ハードエッジ
水たまり秋の欠片を浮べたる ハードエッジ
爽やかに総崩れなる仮説かな ハードエッジ
空缶に鉄やアルミや秋の風 ハードエッジ
流星の滴る如きイヤリング ハードエッジ
かつかつとベンゼン環の夜学かな ハードエッジ
休暇明け包帯の子の人気なり ハードエッジ
夏雲の乾けば消ゆる水たまり ハードエッジ
瓢箪になれず糸瓜の垂れ下がる ハードエッジ
大寒の海の魚や食べごろの ハードエッジ
ティアラして雪のディズニーランドかな ハードエッジ
みしみしと土龍の穴に霜柱 ハードエッジ
白狐撃たれて倒る白きまま ハードエッジ
進むレジ進まぬレジや買初の ハードエッジ
数へ日にドプラー効果ありにけり ハードエッジ
年の瀬や火事場帰りの消防車 ハードエッジ
高々と飛んで機長の初仕事 ハードエッジ
買初や日本晴なる日本橋 ハードエッジ
幼子の首筋寒き春著かな ハードエッジ
雪山に神の坐す弓始 ハードエッジ
一年を柱で過ごす暦果つ ハードエッジ

◎推敲過程 テキスト

角川俳句賞 2022 プランB 推敲 テキスト

 

◎推敲過程 プリントに手書き

角川俳句賞 2022 プランB 推敲 手書き

◎葉書俳句表側

◎データベース画面/桐v10

 

◎落選葉書一覧

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以上です