角川俳句賞 2021
プランB「汗の笑顔」50句
制作総数:原句106句/推敲総数592句 平均推敲数=5.6
内、捨句:原句57句/推敲総数229句→最終稿0句 平均推敲数=4.0
最終稿 :原句49句/推敲総数363句→最終稿50句 平均推敲数=7.3
落選作
◎葉書俳句
◎テキスト
春
春昼や糸の尾ながきティーバッグ ハードエッジ
糸の尾:
針のひく糸の尾ながき弥生かな 久保田万太郎
春昼や糸の尾長くグルーガン 利普苑るな
成田フライトインフォメーション地虫出づ ハードエッジ
菜の花や明日ある如く咲き続く ハードエッジ
明日ある:
明日あると思ふ春燈消しにけり 三田きえ子
もの芽出づ明日あることの確かさに 山田弘子
身を折りて明日あるための髪洗ふ 舘岡沙緻
稲妻のほしいままなり明日あるなり 石田波郷
揚花火明日に明日ある如く 阪西敦子
夏
初夏のガードレールの緑色 ハードエッジ
ガードレール:
花吹雪ガードレールのふにやとあり 中原道夫
ばつた跳ねガードレールをかんと打つ 中本真人
すでに子ら汗をいとはぬ五月かな ハードエッジ
先頭のすでに:
すでにして声とどかざる野に遊ぶ 中村汀女
すでにして玉の莟の玉椿 ハードエッジ
すでに書を読めぬ暗さの端居かな ハードエッジ
すでに女は裸になつてゐた「つづく」 加藤静夫
すでにして嬰を抱くかたち毛糸編 岡本眸
すでにして寄鍋らしき厨なり ハードエッジ
公園に木の椅子乾く薄暑かな ハードエッジ
乾く椅子:
虹立ちてたちまち雨の乾く椅子 岸本尚毅
新妻の新緑の旅衣かな ハードエッジ
「新」の読み方2種、句跨り
新妻:
新妻のかひがひしくも夏痩せて 山田弘子
新妻の靴ずれ花野来しのみに 鷹羽狩行
新緑や白と黒なるチェスの駒 ハードエッジ
白と黒:
十字路で別れ日傘の白と黒 鶴岡加苗
虫干や伏せ字の白と黒の丸 高千夏子
蒟蒻の白と黒とが秋水に 辻桃子
新緑を虫が好めり鹿も食ふ ハードエッジ
好めり:
雀らも色を好めり藪椿 松本ヤチヨ
鯉もまた日ざし好めり冬の山 茨木和生
青空も見えて若葉の雨宿り ハードエッジ
雨宿り:
背の子の燕見てをり雨やどり 福田蓼汀
雨やどり虹消ゆるまで見つくせり 塚本回子
夕立に幾人乳母の雨やどり 森川許六
雨宿りしてしばらくは薔薇の前 山口青邨
牡蠣舟に雨宿りせり淀屋橋 冨田みのる
梅雨空のグラデーションの濃きところ ハードエッジ
濃きところ:
古町の春色の濃きところかな 日野草城
風が見ゆ青田もつとも濃きところ 池田秀水
裸婦像に翳濃きところ薔薇園 鷹羽狩行
猫が知る冬日もつとも濃きところ 伊藤伊那男
雑炊の卵の黄身の濃きところ 澤田和弥
金屏にともし火の濃きところかな 高濱虚子
緑濃きところは捨てて葱白し ハードエッジ
横にして傘をバサバサ梅雨の日々 ハードエッジ
ばさばさ:
ぱさぱさと木ごもる羽音夜の雪 宇佐美魚目
梅雨明けの小学校が乾くなり ハードエッジ
小学校:
猫の仔に小学校のチャイム鳴る 岡田由季
菜の花や小学校の昼餉時 正岡子規
日焼して小学校の教師たり 星野高士
富士見ゆる小学校や夏休 高田風人子
青葉しげれる小学校の鼓笛隊 穴井太
貧しげな小学校や秋の暮 京極杞陽
風花や小学校の昼やすみ 上村占魚
湯の町の小学校や冬休 高田風人子
小学校/自作:
遠足の小学校のがらんどう ハードエッジ
村々の小学校の桜かな ハードエッジ
麦秋や小学校の二階建 ハードエッジ
長き夜の小学校の椅子机 ハードエッジ
小学校老人の日の静けさに ハードエッジ
荒海や小学校の冬休 ハードエッジ
夜明けなり決死の蝉が穴を出づ ハードエッジ
決死:
凍激し人は決死の形相に 久米三汀
早起にあれもこれもと夏休 ハードエッジ
早起き:
早起の夫に仕へて明易し 京極杞陽
簗守は早寝早起燈を持たず 大橋越央子
世につらきこと早起きよ霜柱 嶋田摩耶子
旅なればみんな早起き柳絮飛ぶ 溝口博子
早起き/自作:
湖の宿に早起き蜆汁 ハードエッジ
囀や早起き鳥の月曜日 ハードエッジ
豆腐屋の早寝早起き冷奴 ハードエッジ
早起きのお城を巡る捕虫網 ハードエッジ
早寝早起き避暑地の日々に少し飽く ハードエッジ
早起や胡瓜のみどり茄子の紺 ハードエッジ
寒雀みな早起きでありにけり ハードエッジ
よき初夢に早起きをしてしまふ ハードエッジ
日盛りの地下水を吸ふ木の根かな ハードエッジ
木の根:
地に覚めて木の根草の根雛祭 矢島渚男
炎昼の木の根のごとき兜太の字 友岡子郷
木の根に晝寝餓ゑに酔ひたる如かりき 中村草田男
地蔵盆木の根に赤子置かれある 黛執
猪の雪につまづく木の根かな 正岡子規
遠く這へる大木の根や草の花 西山泊雲
草の根も深き木の根も冬に入る 藤田湘子
アスファルトもコンクリートも日の盛り ハードエッジ
雑木の芽コンクリートの乾きゆく 上田信治
コンクリの基礎の部屋割り紫木蓮 小池義人
さくら咲くコンクリートを煉つてゐる 加倉井秋を《かくらい あきお》
川底もコンクリートや花筏 相子智恵
コンクリの中の鉄筋桃の花 ハードエッジ
健気なりコンクリートも大根も ハードエッジ
永遠はコンクリートを混ぜる音か 阿部青鞋
炎天をのらりくらりと松が伸び ハードエッジ
くらり:
春愁やくらりと海月くつがへる 加藤楸邨
余花の谷くらりと深し晩年や 殿村菟絲子
腐りつつものの融けゆく暑さかな ハードエッジ
腐り:
秋立つや達磨の尻のくさりより 正岡子規
盆供物腐りて紙にへばりつく 辻田克巳
相触れてより白桃の腐りそむ 中田剛
冬牡丹咲かで腐りし蕾かな 正岡子規
皺腹を掻つ捌きなば涼しかろ ハードエッジ
涼しかろ:
炎天も雲の中なら涼しかろ ハードエッジ
無人島の天子とならば涼しかろ 夏目漱石
水切の笊になりなば涼しかろ ハードエッジ
ぶかぶかの水着にすれば涼しかろ ハードエッジ
時もまた滴一滴と滴るよ ハードエッジ
一滴:
香水の一滴づつにかくも減る 山口波津女
二滴一滴そして一滴新茶かな 鷹羽狩行
つひの一滴のこきんと新茶かな 鷹羽狩行
空を行く血の一滴の蚊なりけり ハードエッジ
酸橘一滴正鵠を射るやうに 佐藤郁良
抱きついて汗の笑顔をこすりつけ ハードエッジ
こすり:
女来て枯木に煙草こすり消す 阿波野青畝
きゆつきゆつとシャワーはいつも全開に ハードエッジ
籐椅子の母に抱かれし古写真 ハードエッジ
母に抱かれ:
母に抱かれてわれまつさきに囀れり 八田木枯
いい匂ひ春著の母に抱かれて ハードエッジ
うすぐらき蚊帳の昼寝を好みけり ハードエッジ
好みけり:
今日の月馬も夜道を好みけり 村上鬼城
鯛焼を人には告げず好みけり 富安風生
干菜風呂火の粉は闇を好みけり ながさく清江
監獄を襲ひし日なり巴里祭 ハードエッジ
監獄:
監獄の塀の外なる氷かな 京極杞陽
消毒や日焼の腕の脱脂綿 ハードエッジ
消毒:
花冷や消毒液にメス沈む 椎野順子
秋
弱虫も泣虫も来よ西瓜切る ハードエッジ
弱虫:
病院一の弱虫患者黄水仙 石田波郷
泣虫:
泣き虫の子猫を親にもどしけり 久保より江
どろんこの泣虫洗ふシャワーかな ハードエッジ
泣き虫のまた泣かされて胡麻の花 高倉和子
夏
お多福型スプーンで食ふアイスかな ハードエッジ
お多福:
天狗にはお多福の妻御田植 中本真人
掬ひたるアイスクリーム毛羽立ちぬ ハードエッジ
毛羽立つ:
黒雲の底の毛羽立つ厄日なり 正木ゆう子
ぽたぽたの氷菓の棒は急ぐべし ハードエッジ
失敗作
焼そばの人と相席掻き氷 ハードエッジ
焼そば:
アラビアン焼そばを食ふ熱帯夜 ハードエッジ
虹消えてカップ焼そば出来上る ハードエッジ
焼そばの箸を燃やせる海の家 ハードエッジ
捕虫網幼き兄を先頭に ハードエッジ
先頭:
二次会へ行く先頭のサングラス 金子敦
貌を先頭にして蛇長し ハードエッジ
天高く先頭を行く教習車 ハードエッジ
先頭を男踊りの少女かな 齋藤朝比古
先頭は早稲の香に入る葬の鉦 鈴木鷹夫
一月の先頭を切る寒さかな ハードエッジ
渋滞の先頭にゐしラッセル車 杉原祐之
先頭の水鳥澪を長うして 佐々木六戈
土くれを穴から運び出す蟻も ハードエッジ
土くれ:
土くれと同じ色なる花の種 ハードエッジ
土塊をちんとひねりし雛のかほ 高田正子
土塊を一つ動かし物芽出づ 高濱虚子
土くれはどんな味する燕の子 正木ゆう子
土くれにはえて露おく小草かな 村上鬼城
蚊を殺し尽せし煙明易し ハードエッジ
働いて働き蟻を全うす ハードエッジ
働いて:
働いて楽しさうなる撒水車 ハードエッジ
働いて太ることなし蟻の列 ハードエッジ
ほんまやなものの五分で蟻たかる ハードエッジ
ものの五分:
身仕度のものの五分や桃の花 大西朋
初富士をものの五分で通過して ハードエッジ
蓮の花に自壊の兆なかりけり ハードエッジ
向日葵にこれはバールのやうなもの ハードエッジ
地球儀と西日の部屋の全てかな ハードエッジ
夕焼が地下へ沈んでゆくところ ハードエッジ
地下:
春なれや地下の浅きを銀座線 加藤静夫
蟻の列ここより地下に入りゆけり 山口波津女
蝉の穴地下から掘つて来りけり ハードエッジ
地下を出て地下より暗し秋の暮 藤田湘子
銀行の地下に金庫や秋の風 ハードエッジ
駅と駅地下で結ぶよ星祭 ハードエッジ
曼珠沙華地下に血脈あるごとし 福田蓼汀
曼珠沙華地下に束ね持つ手あるかに 福田蓼汀
地下深くミサイル立てて枯野かな ハードエッジ
クリスマス地下に京橋日本橋 鷹羽狩行
クリスマス愚者の楽園地下にあり 福田蓼汀
職業は寺山修司夜店の灯 ハードエッジ
交番に夜の向日葵を諭すなり ハードエッジ
交番:
腰かけ憩ふ交番うらの鞦韆に 中村草田男
※鞦韆=しゅうせん、ふらここ、ぶらんこかも
交番へ冷し中華の届けられ 近恵
螢火や庭に埋めし宝物 ハードエッジ
宝物:
行く春や土に隠せば宝物 山田露結
山寺の宝物見るや花の雨 高濱虚子
雛の灯に子の宝物ありつたけ ハードエッジ
宝物のことごとく武具夏館 高井紅雨
命終のぽたりと落る蚊遣の蚊 ハードエッジ
命終:
命終に一つは欲しき流れ星 ハードエッジ
命終や埋火のこの純白は ハードエッジ
これもまた一夜の命蚊遣の火 ハードエッジ
一夜:
われら一夜大いに飲めば寒明けぬ 石田波郷
夜桜の一夜をかけし落花なり ハードエッジ
征くひとに一夜の宴の蛍籠 大野林火
揃へある一夜かぎりの踊り下駄 染矢恵二
芋虫の一夜の育ち恐ろしき 高野素十
猪の血抜の一夜音やまず 小澤實
一夜経て虫吐きにけり木の実独楽 山田みづえ
煮凝に一夜の闇を閉じ込めぬ ハードエッジ
寒鮒の一夜の生に水にごる 桂信子
風音や大つごもりへあと一夜 鈴木鷹夫
喰て寝てことしも今よひ一夜哉 小林一茶
秋
山奥の清き流れの紅葉かな ハードエッジ
清き:
白魚や清きにつけてなまぐさき 炭太祇
はんけちのたしなみきよき薄暑かな 久保田万太郎
拍手に白息きよき初詣 森澄雄
雪よりも清き狐の母ならむ 竹岡一郎
銭湯の朝影きよき師走かな 広瀬惟然
冬
山々のはつきり見ゆる空つ風 ハードエッジ
はつきり:
はつきりと一つ一つや花辛夷 ハードエッジ
木蓮のはつきり白し雨曇 日野草城
はつきりと柳の中の桜かな 正岡子規
はつきりと桜の中の柳かな 正岡子規
はつきりと翡翠色にとびにけり 中村草田男
はつきりと富士の見えたる寒さ哉 正岡子規
奈良寒し鼻孔はっきり鬼瓦 森田智子
耳うごくときはつきりと狩の犬 後藤比奈夫
はつきりと月見えてゐる枯木かな 星野立子
汗かいてゐる鯛焼の哀れかな ハードエッジ
汗かいて:
睾丸の汗かいて居るあはれ也 正岡子規
四十年前汗かいて波郷ゐし 藤岡筑邨
埋火のありし空間純白す ハードエッジ
純白:
白木蓮に純白といふ翳りあり 能村登四郎
山百合の純白守り抜く香なり 廣瀬町子
花野来て夜は純白の夜具の中 岡本眸
純白で私を避ける雪ばかり 櫂未知子
街に雪この純白のいづくより 橋本榮治
狐火見し純白の夜を妊れり 齋藤愼爾
◎初案49句
季語順
最終稿の順とは異なる
季語も異なることあり
初案=最終稿:10句
49句しかないのは、
推敲過程で原句から最終稿が2句出たため
永き日の長き糸ひくティーバッグ ハードエッジ
成田フライトインフォメーション地虫出づ ハードエッジ
菜の花や明日ある如く咲き続く ハードエッジ
腐るより他に手も無く腐る夏 ハードエッジ
皺腹を掻つ捌きなば涼しかろ ハードエッジ
すでに子ら汗をいとはぬ五月かな ハードエッジ
軽暖のガードレールの緑色 ハードエッジ
公園の木の椅子乾く薄暑かな ハードエッジ
アスファルトもコンクリートもみな暑し ハードエッジ
大木を涼しき水の上るなり ハードエッジ
梅雨晴間小学校の乾くなり ハードエッジ
梅雨空のグラデーションの濃きところ ハードエッジ
ばさばさと翼を畳む梅雨の傘 ハードエッジ
炎天をのらりくらりと松の枝 ハードエッジ
地球儀は西日の部屋に孤独なり ハードエッジ
夕焼が丸ごと西へ沈みゆく ハードエッジ
なすすべもなくて滴るにはあらず ハードエッジ
扁平な匙でアイスを削るなり ハードエッジ
抱きついて汗の笑顔を拭かんとす ハードエッジ
ぽとぽとと蚊の征伐や蚊遣香 ハードエッジ
見てをれば長き命の蚊遣かな ハードエッジ
蚊を殺すひと夜の命蚊遣香 ハードエッジ
ラーメンの客も混りて掻き氷 ハードエッジ
新しき籐椅子に写る父と母 ハードエッジ
消毒の涼しき別れ脱脂綿 ハードエッジ
舐めて解かし暑さで解けしアイスかな ハードエッジ
涼しさや昼寝の蚊帳の薄暗き ハードエッジ
職業は寺山修司夜店の灯 ハードエッジ
捕虫網持つて幼き兄として ハードエッジ
早起の楽しみ幾つ夏休 ハードエッジ
監獄を襲ひし日なり巴里祭 ハードエッジ
シャワー激しく排水孔へ流れ込む ハードエッジ
働いて働き蟻を全うす ハードエッジ
つくづくとものの五分や蟻たかる ハードエッジ
拡張の土塊を出す蟻もかな ハードエッジ
螢火と庭の盥の小舟かな ハードエッジ
蝉いでて決死の穴の残りけり ハードエッジ
新緑や白と黒なるチェスの駒 ハードエッジ
新緑を食べる虫ゐる鹿も食ふ ハードエッジ
新妻と行く新緑の旅衣 ハードエッジ
明け方の雨に若葉の雨宿り ハードエッジ
向日葵軍団自壊の兆しあり ハードエッジ
真剣で切れば血を噴く向日葵か ハードエッジ
交番に夜の向日葵が保護されて ハードエッジ
弱虫も泣虫も来よ西瓜切る ハードエッジ
清流に棒を流しぬ初紅葉 ハードエッジ
山々が見えて盆地の空つ風 ハードエッジ
埋火が埋めし処にて消ゆる ハードエッジ
汗かいてゐる鯛焼の袋かな ハードエッジ
◎推敲過程データ/pdf
最終稿まで残った句:推敲数363句→50句
角川俳句賞 2021 プランB
途中放棄の句:推敲数229句→0句
角川俳句賞 2021 プランB 断念句
◎推敲過程 プリント+手書き
角川俳句賞 2021 プラン B 推敲 手書き
◎落選葉書一覧
DuckDuckGo 検索:
最新版はこちら
Google検索:
最新版はこちら
以上です