追記:行き給へ/2020.12.17
ペア78
◎夢の寒さ
夢の世に覚めたる夢の余寒かな 山田露結
落ちる夢落ちきらず覚む朝寒し 小川軽舟
◎天井と植物
天井につかへて甕の山桜 長谷川櫂
天井にとどくゴムの木年忘れ 岸本尚毅
◎黴の人物
黴くさき婚の写真の私かな 松野苑子
黴のアルバム母の若さの恐ろしや 中尾寿美子
◎日焼
夫かなしくすし通ひに日焼して 岡本眸
医者通ひ日焼さそひて癒えそめぬ 古賀まり子
◎旧姓
旧姓といふ空蝉に似たるもの 辻美奈子
バイブルに残る旧姓クリスマス 千原叡子
賀状書くわが旧姓のおとうとへ 内田美紗
◎魚の骨
秋風や魚のかたちに骨のこり 鷹羽狩行
秋の暮大魚の骨を海が引く 西東三鬼
◎映画の人
夜長に見る映画の人やなべて亡き 押野裕
正月映画の主役は故人ばかりなり 小久保佳世子
◎道と道案内
涼しさうな処をよつて行き給へ 正岡子規
月明の道あり川ともつれつつ 松本たかし
月の村川のごとくに道ながれ 上田五千石
道なりに来なさい月の川なりに 恩田侑布子
◎百花園の枯れ
見るところみな枯草や百花園 星野立子
一めんのすゝきの枯レや百花園 久保田万太郎
◎初富士の句会
初富士を眺めの句座をしつらへん 高木晴子
初富士をどすんと据ゑて句会かな 大谷弘至
誰も富士詠まんと黙す初句会 福田甲子雄
以上です