秋 【葡萄】紫も緑も黒も葡萄なり

全然堂歳時記 秋
【葡萄】ぶどう

◎葉書俳句

全然堂歳時記 秋 【葡萄】

 

◎テキスト

夏は西瓜すいか秋は葡萄ぶどうの種をき ハードエッジ

 

針金のたくましき張り葡萄棚ぶどうだな ハードエッジ

  逞しきの秀句:
  注連縄しめなわの逞しきよりの子産め 鷹羽狩行たかは しゅぎょう

 

葡萄まだ小文字のoの大きさに ハードエッジ

  文字系の葡萄:
  葡萄食ふ一語一語の如くにて 中村草田男   くさたお

 

砂時計の砂の静けさ葡萄る ハードエッジ

  テレビ愛媛『聞ける俳句』2019年9月/神野紗希選

 

恋人と葡萄のそのに昼寝して ハードエッジ

  寝てみる葡萄の秀句:
  たのしさはねて見上ぐる青葡萄 岩田由美

 

紫の雨に煙るや葡萄園 ハードエッジ

  雨の葡萄の秀句:
  紫のぶだうを置いて雨の音 細見綾子   あやこ

  溟濛めいもう葡萄の房の濃むらさき 山口青邨    せいそん

 

盆地の灯ぱらぱら消ゆる葡萄かな ハードエッジ

  盆地の四季:
  春祭盆地は音をこぼさずに 鈴木鷹夫   たかお

  奈良盆地猫も歩かぬ暑さかな 大木あまり

  日本の暑さをきそう盆地かな 北川美美  びび

  たはやすく盆地ひゞけりおどづつ 飴山實あめやま みのる

  寧楽なら盆地寒気のふたまりけり 矢島渚男    なぎさお

  山々の小春こはる盆地に町小さく 宮津昭彦みやつ あきひこ

 

夜空より紫紺しこんしたたる葡萄かな ハードエッジ

  紫紺の名句:
  ぎわの紫紺の五月きたりけり 森澄雄  すみお

 

むらさきも緑も黒も葡萄なり ハードエッジ

  色々な葡萄:
  黒きまで紫深き葡萄かな 正岡子規  しき

  亀甲きっこうの粒ぎつしりと黒葡萄 川端茅舎    ぼうしゃ

  敵手と食ふ血の厚肉と黒葡萄 能村登四郎のむら としろう

  月さしてむらさき煙る葡萄かな 日野草城    そうじょう

  雨月なる卓にみどりのマスカツト 波多野爽波はたの そうは

 

二三粒葡萄沈みし洗桶あらいおけ ハードエッジ

  葡萄の算数:
  一粒を食べて欠きたる葡萄の房 橋本多佳子

  二三粒欠け洗ひ上ぐ黒葡萄 土生重次はぶじゅうじ

 

黒雲のごとき葡萄が皿の上 ハードエッジ

  黒雲自作:
  黒雲も夕立ゆだちの前の静けさに ハードエッジ

  黒雲秀句:
  黒雲の底の毛羽立けばだ厄日やくびなり 正木ゆう子

  黒雲の見ゆる避暑地ひしょちを指してゆく 岸本尚毅   なおき
  黒雲やわれめわれめのけふの月 正岡子規  しき

 

灯を少し暗くして食ふ葡萄かな ハードエッジ

  暗い灯の秀句:
  春の夜にへよとくらき灯なりけり 久保田万太郎

  春の灯のあるひは暗くやはらかく 久保田万太郎

  春の灯のむしろくらきをよろこべる 久保田万太郎

  暗き灯をおきて追儺ついなの僧だまり 福田蓼汀    りょうてい

 

食べ終へて骨格残る葡萄かな ハードエッジ

  食べ終える俳句:
  時かけてつくりし草餅くさもちすぐ食べふ 山口波津女   はつじょ

 

えん閉ざすころには雪か葡萄村 ハードエッジ

  「葡萄村」までは呻吟グ・ブルージーンズ ←『ヒッピー・ヒッピー・シェイク』
  葡萄園(園がダブル)、黒葡萄(月並)、葡萄狩(苦しい)など

  果樹のその後:

  葡萄摘ぶどうつみ終りし谷のうすもみじ 山口青邨

  採りつくしたる林檎りんご園雪嬉々ききと 上田五千石   ごせんごく

 

 

◎推敲過程

全然堂歳時記 秋 【葡萄】

 

以上です