追記:大階段/2020.12.22、城垣/2020.10.12
ペアリング74
◎除外して
流氷を見にゆく男をまじえずに 寺田京子
うぐひす餅食ふやをみなをまじへずに 森澄雄
◎男ばかり
雛もなし男ばかりの桃の酒 正岡子規
桜餅男ばかりの待つ部屋に 吉田林檎
鉾宿に男ばかりが嬉しさう 西村和子
ががんぼや男ばかりの飯を食ふ 佐藤郁良
◎僧一人
入学や父兄のなかの僧一人 河野静雲
山寺や涅槃図かけて僧一人 星野立子
炎天より僧ひとり乗り岐阜羽島 森澄雄
通し給へ蚊蠅の如き僧一人 小林一茶
僧ひとり枯野に降ろしバス発てり 畠山譲二
納豆や飯焚一人僧一人 正岡子規
病む僧の蒲団のすそに僧一人 高野素十
◎水に流す
花種の残りを水に流しけり 菅原鬨也
花びらを水に流して朝桜 ハードエッジ
夜濯の水に流すといふことを ハードエッジ
形代や何でも水に流す国 橋本喜夫
空蝉を水に流してやりにけり ハードエッジ
その後は、
蝉の殻流れて山を離れゆく 三橋敏雄
◎女ばかり
桜ばかり女ばかりの上野かな 正岡子規
我宿は女ばかりのあつさ哉 正岡子規
迎火を女ばかりに焚きにけり 高野素十
毛虫の季節エレベーターに同性ばかり 岡本眸
色鳥や女ばかりの露天風呂 小俣由とり
百舌鳥鳴くや女ばかりの日文科 櫂未知子
人日の女ばかりの集りに 星野立子
◎小石
山葵田の滅びしあとの小石原 細見綾子
炎昼のタイヤが噛んでいる小石 斉田仁
ゆつくりと金魚の口を出る小石 上田信治
河が呑む小石どぷんと蚊喰鳥 中村汀女
象の頭に小石のつまる天の川 大石雄鬼
大石の割目に小石冬ざるる 上田信治
その直前:
大石や二つに割れて冬ざるる 村上鬼城
春になれば(石の存在は不明なれど)、
城垣の隙のくらがり鳥雲に 正木ゆう子
木枯や鐘に小石を吹きあてる 与謝蕪村
初凪や小石奏づるほどの波 川崎展宏
◎大石段、大階段
み上げたる大石段の片かげり 久保田万太郎
広々と大石段や初詣 池内たけし
待春の大階段となりにけり 齋藤朝比古
※たいしゅん/まつはる
◎相手の目
蛇逃げて我を見し眼の草に残る 高濱虚子
狐を見てゐていつか狐に見られてをり 加藤楸邨
◎皿と種や皮
皿二つそらまめとそらまめの皮 行方克巳
皿のなかもう種ばかりさくらんぼ 鶴岡加苗
枇杷の種ことりと枇杷の皿の上 ハードエッジ
種を吐く葡萄と同じ皿の上 山口誓子
◎新年の空
高く飛ぶものはゆつくり初御空 ハードエッジ
大いなる雲は急がず初景色 吉田林檎
以上です