全然堂歳時記 類題
【鼻】はな
◎葉書俳句
◎テキスト
春
家族の春特急の窓に鼻押し当て ハードエッジ
上六、中六、下六です (^_^;;;
「家族の春」という言葉に出会ったのは、それほど昔でもないです
以下の俳句の解説がキッカケだったかも
家中が昼寝してをり猫までも 五十嵐播水
この句を紹介した「増殖する俳句歳時記」の解説より:
「家族の歴史にも盛りのときがあり、句の家族はまさに盛りの時期にあるわけだけれど、
哀しいかな、今が盛りだとは誰もが気がつかない。」/清水哲男
「春+家族」ではこんな句も、
いち抜けて長女が嫁ぐ春家族 鈴木鷹夫
定形で納めるために、
「春の家族」を「春家族」のように圧縮するのは、
俳句業界ではよく見かける手法です
好みは人それぞれ
新しき家族の春の始めかな ハードエッジ
特急が家族の春を乗せて行く ハードエッジ
鼻の穴に金の詰りし寝釈迦かな ハードエッジ
寝釈迦や涅槃像に金を絡めるのは有り勝ちではあります
→「金の寝釈迦」GGL検索
「寝釈迦+金」の秀句:
日照るとき金を横たふ寝釈迦かな 阿波野青畝
閉ざされし瞼も金の寝釈迦かな 若井新一
手まくらの金ことに照る寝釈迦かな 皆吉爽雨
猫の子の小さな鼻も桜色 ハードエッジ
「鼻+桜」の名句・迷句:
桜咲くゼロ系新幹線の鼻 涼野海音
今では、あれを団子っ鼻と呼ぶ人も多い
失礼じゃないか
当時は「夢の超特急」だったのに、、、悲しい
なお、あの鼻の部分(前照灯)は、
とんでもない技術で光ってると信じてましたが、
実は、中身は普通の蛍光灯を円錐状に並べたものでした
な~んだ!
本で読んだ時は愕然たる思い、でした
また、この句を読んでから、かなりの間、
あの新幹線の鼻を黒と思い込んでました
同時代の鉄腕アトムに出てくる、
犬の(おまわりさんの)パトカーとイメージがダブったようです
そうそう、初期の横尾忠則のポスターに、
小さく新幹線と桜が出てきたような、、、
ググったけど発見できず、、、思い過ごしか?
万人の鼻息に散る桜かな 正岡子規
夏
枯色をまとふ香水鼻を打つ ハードエッジ
今回、「鼻」の俳句を考えていて、
「鼻を打つ」という表現を思い出しました
高校の頃の教科書に出てた記憶 ←はるか昔
言葉に関するエッセイだったが、作者とかは不明
(知ってる方いたら、コメントください)
初案:
香水の枯色にして鼻を打つ ハードエッジ 2016
「にして」が目障りで今回推敲
順番を入れ替えたり受け身にしたり、あれこれ
半ば、匙を投げたところで、
「まとふ」を召喚、、、
平凡な措辞だけど、これで妥協/take-10
とはいえ、もう少し何かありそう/2019.11.5
香水の名句:
香水の正札瓶を透きとほり 星野立子
香水の一滴づつにかくも減る 山口波津女
香水や不死身のごときバーのママ 西村麒麟
負けずに自作も、
小癪なる香水瓶の小兵ども ハードエッジ
香水や諸肌脱ぎの夜会服 ハードエッジ
汗の香も香水の香も夜濯へ ハードエッジ
ぼろぼろの鼻の頭や日焼の子 ハードエッジ
「ぼろぼろ」の名句:
ぼろぼろの羽子を上手につく子かな 富安風生
秋
丸ごとの西瓜巻き取る象の鼻 ハードエッジ
もう少し小さい場合は、
風花や林檎もたぐる象の鼻 小川軽舟
「象の耳」では、
初春の風にひらくよ象の耳 原和子
初学の頃に出会った句で、
こんな俳句もあるんだと驚いた句です
白粉花の種のおしろい鼻に塗る ハードエッジ
白粉花の語源解説風俳句
黒い種を指で潰すと中から白い粉が出てきます
手のひらに乗せ、唾で伸ばして鼻筋に塗るとお祭り気分です
改案:
白粉花の種のおしろい鼻筋に ハードエッジ 2019.11.5
白粉花は得意季語です
おしろいの花のお祭り騒ぎかな ハードエッジ
冬
鼻先に提灯点せ炬燵の子 ハードエッジ
鼻提灯という言葉もいまや死語です
文明の進歩、生活の向上です
お大事に嚔・鼻水・鼻詰り ハードエッジ
風邪薬のCM
二筋の白炎を吐く鼻の凍て ハードエッジ
頭韻3連発
果たして二筋に見えるかどうかは検証せず
文芸の真!
冬眠の龍の鼻息聞くべかり ハードエッジ
「龍+眠」の秀句:
冬ごもり眠れる龍のかたはらに 長谷川櫂
生きものに眠るあはれや龍の玉 岡本眸
人の世の目くそ鼻くそ山眠る ハードエッジ
作句段階では、単に大小の比較のつもりだったのですが、
後々になって考えてみると、
「目糞鼻糞を笑う」のモジリではありませんか
ああ、胸くそ悪い道徳俳句にニアミス
それでも「山笑ふ」としなかっただけマシか?
いや、捨てるには惜しい、、、とか二転三転
「山眠る」の名句:
その重さとてつもなくて山眠る 鈴木鷹夫
自作も一句:
夢にみる月雪花や山眠る ハードエッジ
◎推敲葉書
以上です