全然堂歳時記 類題
【口】くち
唇、歯、舌を含む
◎葉書俳句
◎春
暖かや前歯の欠けし女の子 ハードエッジ
少し前までは:
初蝶や子にゆるびたる歯が一つ 藤田湘子
春の色ずらり口紅売場なり ハードエッジ
「春色」では語感が弱いかと土壇場改善
触れてみて指より硬し雛の唇 ハードエッジ
雛だけでなく:
薄紅の唇硬し桜鯛 ハードエッジ
飴なめて口中甘し雪解川 ハードエッジ
歯に当ててぱりりと音や桜餅 ハードエッジ
数秒後:
さくらもち葉を噛み切れる快ありぬ 小澤實
直立の舌の純白紫木蓮 ハードエッジ
「木蓮+舌」の句:
舌のやうな木蓮を踏み逢ひに行く 今井聖
唇を磯巾着は飾り立て ハードエッジ
◎夏
豆ごはん豆のごはんと口々に ハードエッジ
その人の口の中なるさくらんぼ ハードエッジ
参考句:
くちすへばほほづきありぬあはれあはれ 安住敦
夏痩や封筒の舌折り返す ハードエッジ
得意ではない取り合せの句
舌を折り返すのは究極の夏痩っぽいのでは?
◎秋
口笛の如く流星刺さりけり ハードエッジ
「地に刺さる」では説明過ぎか?
唐黍を歯にて掻き取る子規忌かな ハードエッジ
正岡子規の食欲の名句:
健啖のせつなき子規の忌なりけり 岸本尚毅
◎冬・新年
立冬や歯磨で歯を美しく ハードエッジ
時に、図らずして、ナンセンスな句が出来たりします
どの季節でも良さそうですが、
真っ白な歯、雪のような白さ、、、で冬に
ふと、雪村いづみを連想したのは、
昔、「スーパーライオン」という歯磨きがあってですね、、、→雪村いづみ『ライオン歯磨 スーパーソング』
海底に鮟鱇は口ひしやげたり ハードエッジ
「かいてい」ではなく「うなぞこ」
闇汁に口が裂けても言へぬもの ハードエッジ
参考句:
鮟鱇の口が裂けても言へぬなり 安住敦
猫舌で寒さに弱き男かな ハードエッジ
猫舌なら、熱い食い物、飲み物が出てくるのが常套ですが、
「羹に懲りて膾を吹く」から、
冷たさ、寒さを取り合せました
参考句:
ねこ舌にうどんのあつし日短か 久保田万太郎
泣初の小さな口や歯が綺麗 ハードエッジ
半年くらい前なら:
万緑の中や吾子の歯生え初むる 中村草田男
いもうとへくちうつしなる手毬唄 ハードエッジ
葉書俳句発行後の推敲/2019.7.20:
手毬唄一節づつを口移し ハードエッジ
春待つや乳より白き歯が生えて ハードエッジ
乳歯!
寒紅の口を大きく笑ふなり ハードエッジ
3つ前が小さな口だったので、大きくしてみました
参考句:
口あけて腹の底まで初笑 高濱虚子
娘義太夫寒紅の口大開き 辻桃子
◎未練句
春色を引く唇のまだ冷た ハードエッジ
薄紅の唇硬し桜鯛 ハードエッジ
炎天の黒き鴉に赤き舌 ハードエッジ
夏痩せて舌先三寸の男 ハードエッジ
風鈴の舌の軽さよ翻る ハードエッジ
やかましき風鈴の舌千切りけり ハードエッジ
風鈴の舌を丸めて箱の中 ハードエッジ
風鈴の舌一枚の軽さかな ハードエッジ
粉つぽいものを食みをる蜘蛛の口 ハードエッジ
舌と歯とうすく冷たきくちびると ハードエッジ
凍滝は凍てて虫歯は抜かれけり ハードエッジ
湯たんぽの小さな口に熱湯を ハードエッジ
唇を舐めてマスクを外しけり ハードエッジ
冷たきは寒紅かその唇か ハードエッジ
銭湯で歯を磨く人大晦日 ハードエッジ
以上です