ペアリング49
◎鯨の昔
水温む鯨が海を選んだ日 土肥あき子
梅雨深し鯨が陸を歩きし日 矢島渚男
◎明るい晩ごはん
夕餉まだ日のあるうちや桜鯛 森澄雄
明るくて夏の夕餉はすでに終ふ 山口波津女
ゆふがたの空の明るき豆ごはん 金子敦
このごろの夕餉明るし豆ごはん ハードエッジ
夕餉あと尚明るくて蚊食鳥 山口波津女
十薬のまだ見えてゐる夕餉かな 本庄登志彦
◎良妻
よくできた奥さん梅雨の晴間かな ハードエッジ
胡瓜もみ世話女房といふ言葉 高濱虚子
◎部分と全体と重複
一日に日の出・日の入・日の盛 ハードエッジ
昼寒し夜なほ寒し日々寒し ハードエッジ
年の暮月の暮日のくれにけり 正岡子規
◎かすかとほのか
星涼し飢ゑかすかなる夜行バス 大塚凱
ひぐらしや尿意ほのかに目覚めけり 正木ゆう子
◎はかなき世
夢の世の砂のお城と海の家 ハードエッジ
露の世や畑のなかのラブホテル 折勝家鴨
◎未婚と既婚
玉葱や専業主婦にまるをする 福田英子
マスクして家事手伝と記入せり 黛まどか
◎たらり
秋簾とろりたらりと懸りたり 星野立子
元日のお日はたうたうたらりかな 中島月笠
◎べつたり
べつたりと河豚を載せたる秤かな 岸本尚毅
べつたりと羽子板卓に置かれある 小澤實
◎巨体
大寒ののつしのつしと来る如く 中嶋音路
その重さとてつもなくて山眠る 鈴木鷹夫
以上です