追記:素足/2020.3.14
ペアリング41
◎洗顔と洗髪
見えぬ顔洗いながらに春寒し 池田澄子
目をつむる顔横向けて髪洗ふ 高野素十
◎しぐれ時
一ト足のちがひで逢へず春しぐれ 久保田万太郎
しぐるるや駅に西口東口 安住敦
◎遺品
春しぐれ遺品の中のわが手紙 内田美紗
我よりの賀状も君が遺品なる 池田瑠那
◎くるぶし、かかと、すあし
雛飾るくるぶしわれのおもひびと 高柳克弘
螢籠吊す踵を見られけり 西村和子
はづかしき三十路の素足ほめられて 岩田由美
◎深き処
渦潮の深きところや桜鯛 ハードエッジ
ソーダ水深きところを吸はれをる ハードエッジ
踏めばある深きところや竹落葉 岩田由美
落葉やゝ深きところが道らしき 高野素十
◎移動路
紅梅の紅の通へる幹ならん 高濱虚子
瀧の裏しづかに伝ふ水のあり 南うみを
◎空の準備
木蓮のため無傷なる空となる 細見綾子
鶴の来るために大空あけて待つ 後藤比奈夫
◎釘の戸
露の戸を突き出て寂し釘の先 眞鍋呉夫
朝顔や板戸にしみて釘のさび 長谷川櫂
◎ほろり身にしむ
さりげなく聞いて身にしむ話かな 富安風生
手にとりてほろりとしたる一賀状 岸本尚毅
◎背高
寒晴やあはれ舞妓の背の高き 飯島晴子
木の実独楽ひとつおろかに背が高き 橋本多佳子
以上です