削除:1句/2019.5.21、追加:籐椅子/2020.9.10、月光2句/2020.8.27、北風/2020.4.8、ボート/2019.7.17、配管・丸ビル/2019.6.30、涼風/2019.5.21、恋猫/2019.4.16、金魚/2019.1.9、鶏頭・初刷/2019.1.9、小田急/2018.12.16、漂流/2018.9.10、天然色/2018.9.2、箪笥・湯気・煙突/2018.8.9、枯木に顔/2018.5.3、お雑煮/2018.4.13
ペアリング6
好対照の俳句を集めてみました
ペアになる句を捜すのは、
私にとっては、トランプの神経衰弱をするような、
楽しさがあります
なお、今までは、
当季の句を含んだペアでしたが、
(今回のペアも全て春の句を含んでいます)
在庫管理が面倒なので、
今後は、
発見次第、その季節とは無関係に追加登録していきます
(10ペアで1ページ)
◎曲折
塗畦のぐうつと曲りゐるところ 清崎敏郎
花吹雪ガードレールのふにやとあり 中原道夫
涼風の曲りくねつて来たりけり 小林一茶
籐椅子にひつかかりつつ出てゆきぬ 波多野爽波
蠅とんでくるや箪笥の角よけて 京極杞陽
北風に人細り行き曲り消え 高濱虚子
戸の隙におでんの湯気の曲り消え 高濱虚子
室内を煖爐煙突大まがり 藤後左右
◎流れに浮かぶ
寝台もまた流氷のたぐひにて 長谷川櫂(かい)
流氷のひとつ月光裡のベッド 小檜山繁子
漂流のごとくに暮るる春炬燵 今井聖
朧夜のベッド大陸移動説 仲寒蝉(かんせん)
※朧夜=おぼろよ
月光やベッド真白き舟となる 桂信子
◎カラーとモノクロ
記録映画の白黒のチユーリップ 夏井いつき
コピーして赤はグレーに昭和の日 山田露結(ろけつ)
鉛筆の鶏頭写生赤からず 阿波野青畝
天然色映画の雪が実に白し 内藤吐天
初刷の多色グラビア白は富士 上田五千石
◎型落ち
煙突がすこしむかしの春の山 田中裕明
エアコンの型が古くて貴船かな 岸本尚毅(なおき)
※貴船=きぶね=京都の地名
月涼し配管老いし雑居ビル 小川軽舟
丸ビルの古りゆくものにクーラーも 星野高士
冬の田を小田急旧き型が行く 岸本尚毅
◎土龍の土
蒲公英や土龍の土の真つ黒な ハードエッジ
※蒲公英=たんぽぽ、土龍=もぐら
すぐ乾く土龍の土や彼岸花 岸本尚毅
※彼岸花=ひがんばな=マンジュシャゲ
◎吸引力
ぬかるみのあれば吸ひつく落花かな 岸本尚毅
手のひらにぺたり吸ひつく金魚の死 ハードエッジ
畳まれてひたと吸ひつく屏風かな 長谷川櫂
※畳まれて=たたまれて、屏風=びょうぶ
◎お連れ様
妻連れて兵曹長や花ぐもり 高野素十(すじゅう)
※兵曹長=へいそうちょう=准士官(判任官一等)
襟巻の人をつれたる自衛官 岸本尚毅
※襟巻=えりまき
◎当て物
恋猫の鼻つけねむる板の上 加藤楸邨
蝌蚪一つ鼻杭にあて休みをり 星野立子
※蝌蚪=かと=オタマジャクシ、杭=くい
岸草にボート鼻突き休みをり 高濱虚子
かくれ鬼冬日の塀に顔あてて 上野泰
※塀=へい
女の子枯木に顔をあてて泣く 高野素十
◎再会
流木にその故郷の燕かも ハードエッジ
※故郷=ふるさと、燕=つばめ
白鳥を見舞ふ母国の大寒波 百合山羽公(ゆりやま・うこう)
◎その後
ゆくゆくはわが名も消えて春の雪 藤田湘子(しょうし)
忘れてもえゝぞなもしと鳴雪忌 川崎展宏(てんこう)
※鳴雪忌=めいせつき(内藤鳴雪の忌)
湯豆腐や死後に褒められようと思ふ 藤田湘子
※褒められ=ほめられ
死んでから先が楽しみ春の海 加藤静夫
◎まとめの3句
ゆくゆくはわが名も消えて春の雪 藤田湘子
エアコンの型が古くて貴船かな 岸本尚毅
畳まれてひたと吸ひつく屏風かな 長谷川櫂
以上です