開発素句報 2017-13 おしろいの花のお祭り騒ぎかな

追記:2017.9.13

 

前号に引き続き、
「白粉花」がメインですが、
さっそく、息切れして、
後半は「虫」にフェードアウトしました

とはいえ、
このフェードアウトの感じ
(偶然の産物ではありますが)
なかなか気に入ってます

「白粉花」は前回同様、
おしろいばな、
と読んで、
あれ、字余りかな?と思ったら、
おしろい、
と、読み直してください

 

 

 

◎開発素句報 2017-13 お祭り騒ぎ

 

 

白粉花や色を違へて咲き乱れ
  ※違へて=たがえて
  いかにも大仰な、陳腐な言い回しではありますが、
  白粉花には豪華な花に負けない、花の密度があります

  しかも、
  立体的な充足です

  パンジーのような地表専属ではなく、
  また、
  朝顔のように、
  支柱や金網に頼ることもなく
  また、
  コスモスのように、
  茎部分がスカスカと言うのでもない

  自身が枝分れして、
  こんもりと茂ります
  地面はほとんど見えません

  さらに、
  茂りから抜け出す枝もあります

  フェンスを抜け出したりもします

  地表付近から頂上まで、
  満遍なく花が咲きます

  一株から、複数の色を咲かせるなど、
  小癪な真似もします

  花期も長いです

  丈は1mくらいですが、
  低いからと言って、なめてはいけません
  種や根には毒があります

  以上の諸条件に鑑み、
  白粉花に「咲き乱れ」を献上したいと思います

 

  参考句です
  島二つ色異にして霞みけり  鈴木花蓑(はなみの)
  霞んで、薄く淡くなりながらも、
  まだ、
  そこに色の違いがあるのです

  ハンカチを買ふはチェックの色違ひ  ハードエッジ

  牡丹の色違へども蘂の金  川崎慶子
  ※牡丹の=ぼうたんの、と5音で、蘂=しべ
  べたべたの金ではなく、
  色の中心にある、ひとつまみの金です

  日本人独特の感性、、、かどうかは、
  外国に不案内なので保留です

  池二つ涸れてその色異なれる  田中裕明
  ※涸れて=かれて

  色違ふ煙が焚火の根元より  ハードエッジ

 

  咲き乱す桃の中より初桜  松尾芭蕉(ばしょう)
  ぼってりした満開の桃の花に、
  清々しい桜の花の乱入です

  まぶしさや菜の花が咲き咲き乱れ  ハードエッジ
  咲き咲き、のリフレイン
単純な連続でなく、
句跨りなところが、作者得意です

  サロマ湖の撫子の咲き乱れたる  高野素十(すじゅう)

  望郷や土塀コスモス咲き乱れ  星野立子

 

 

おしろいの花も蕾も種も見ゆ
  前号にも類句がみられますが、
  今回は、
  蕾・花・種の3点セットを、
  キチッと文字にして書き留めました

  3アイテムが同時存在する植物は、
  多くはないハズです

  しかも、
  蕾と種が同じくらいの大きさで、
  緑と黒の色違いなのもポイント高いです
  花期も長いです
  園芸一口知識として、如何でしょうか?

  白粉花や蕾はみどり種は黒

 

おしろいの花のお祭り騒ぎかな

  おしろいがとりちらかしたやうに咲く  岡田史乃
  前号で、
  この句の鑑賞を書いていて、
  偶然、
  「お祭り騒ぎ」に至りました 感謝
  →開発素句報 2017-12

 

 

ぶつぶつと白粉花の種まるく
  赤、白、黄の花と違って、種はまっ黒です
  茶色じゃありません

  直径数ミリ
  艶消しの黒で、檸檬に似た形
  表面にぶつぶつがあります

  ぶつぶつは不平不満の表現にも使います
  そういう、やや無頼な語感もあって、
  種子一般ではなく、
  我こそは白粉花の種!
  といった矜持のようなものも感じます
  なかなか個性的な種です

  もし、これが、
  ツルッとして、光沢ある球体であったら、
  どうも、
  白粉花らしくないような、、、
  (まあ、後出しジャンケンではありますが)

 

白粉花や表通りにネオン点く
  さて、
  白粉花はどこに咲いているのでしょう、、、?

  なお、55DBには、
  「表通り」は1句、
  「裏通り」は20句以上、収録されています

  その裏通りには、荷風さんがいました
  襟巻やしのぶ浮世の裏通り  永井荷風(かふう)
  ※襟巻=えりまき
  いかにも、いかにもですね

  さらに、脱線して、
  ネオン絡みで、こんな曲はいかが?
  →UT:The Box Tops – Neon Rainbow

 

白粉花は闇に沈んで虫の声
  「闇に沈んで」、、、
  泣かせるフレーズではありませんか

  見えなくなった白粉花の色、
  それでも残る白粉花の香、
  鳴き出した虫の音、
  など、視覚、嗅覚、聴覚の、豪華三本立て!

  消失と出現の対比でもあります

  等と書くと、
  なんだか良さそうに思えませんか? (^_^;;;

  恋を得て蛍は闇に沈みけり  鈴木真砂女(まさじょ)

  虫籠を闇に沈めて月を待つ  ハードエッジ
  ※虫籠=むしかご

  →UT、井上陽水「最後のニュース」

 

鳴き通す虫の夜長となりにけり
  「秋の夜長を鳴き通す」の再構成です
  →UT:文部省唱歌「虫のこえ」

 

 

◎推敲状況

 

以上です
あれこれ理屈を捏ねましたが、
最後まで、ありがとうございました