和語俳句 【な】 敗戦忌腹べんべんと存へし 中戸川朝人

習ふ/2017.12.22、分割/2017.12.14、撫づ/2017.12.14、萎ゆ/2017.12.13、濁る/2017.9.15
◎和語俳句、な行の「な」です

  →「に」
  →「ぬ」
  →「ね」
  →「の」

◎眺む=ながむ

陽炎を眺めてわれもかげろふか  八染藍子(やそめ・あいこ)

こいびとを日がな眺めて春の風邪  池田澄子
  ※風邪=かぜ

母たのし汐干にあそぶ子を眺め  星野立子
  ※汐干=しおひ=潮干狩

 

 

◎存ふ=ながらう

敗戦忌腹べんべんと存へし  中戸川朝人(ちょうじん)
  「べんべん」収録数は3句
  「べんべん」は太棹の音でもあり、
  個人的には筋肉質の響きを感じます
  それでいて、
  「腹べんべん」と言うと、
  いかにも下卑た男が思われるのが不思議です
  聖戦に敗退
  しかし、
  戦死や空襲の死は免れた
  しかし、しかし、、、なのであります

  突如、
  べんべん、、、太鼓腹、、、でんでん太鼓に笙の笛、、、の連想
  お聞きください
    →初音ミクの「江戸子守唄」

  さらに、腹べんべんで一句/2017.7.21
  蟷螂の腹べんべんと枯れゆくも  ハードエッジ
  ※蟷螂=とうろう=カマキリ

狼は亡び木霊は存ふる  三村純也
  ※亡び=ほろび、木霊=こだま
  亡びなかったものも、また、虚なのであります

冬紅葉照りながらへてさながらに  日野草城(そうじょう)

 

 

◎嘆く=なげく

臥すは嘆き仰ぐは怨み流し雛  岡本眸(ひとみ)

返り花日の短きを嘆くかな  ハードエッジ

 

 

◎撫づ=なづ

包丁を取りて打撫で桜鯛  松本たかし

激流を鮎の竿にて撫でてをり  阿波野青畝(せいほ)
  ※激流=げきりゅう、鮎=あゆ、竿=さお

撫で切りの秋風を我が女体とす  永田耕衣(こうい)

手で顔を撫づれば鼻の冷たさよ  高濱虚子(たかはま・きょし)

襟巻となりし狐を撫でてやる  ハードエッジ
  ※襟巻=えりまき、狐=きつね

茹で上げし冬菜の湯気が顔を撫で  西村和子
  ※茹で=ゆで、湯気=ゆげ

撫でて在る目のたま久し大旦  三橋敏雄
  ※大旦=おおあした=元旦

 

 

◎嬲る=なぶる

負うた子に髪なぶらるる暑さかな  斯波園女(しば・そのめ)

白髪と見て秋風の嬲りもの  中尾寿美子

一輪を嬲る風ある芙蓉かな  鈴木花蓑(はなみの)
  ※芙蓉=ふよう

 

 

◎萎ゆ=なゆ

  →萎る=しおる、萎ぶ=しなぶ、萎む=しぼむ

やはらかに萎えたる花やげんげ束  星野立子

毒草の萎えて枯れざる大旱  岡野よしを

 

◎習ふ=ならう

暑し暑しと詮なき事をいふ習ひ  ハードエッジ
  ※詮なき=せんなき

村人の傘さす習ひ雪になし  上村占魚

世のつねに習ふ賀状を書き疲る  富安風生(ふうせい)

 

その他のな行:

  →「に」
  →「ぬ」
  →「ね」
  →「の」

以上です
お読み頂きありがとうございました