和語俳句 【に】 水にじむごとく夜が来てヒヤシンス 岡本眸

追記:握る 煮ゆ/2018.5.4、分割/2018.2.5、逃ぐ/2017.12.22、分割/2017.12.14、撫づ/2017.12.14
◎和語俳句、な行の「に」です

  →「な」
  →「ぬ」
  →「ね」
  →「の」

◎握る=にぎる

ふる金魚をゆるく握りしめ  川崎展宏てんこう

握り見て心に応ふ稲穂いなほかな  高濱虚子たかはま きょし

握りても雪さらさらと異国なり  松野苑子

 

 

◎逃ぐ=にぐ

  →逃る=のがる

生涯を数多の二月逃げ行けり  ハードエッジ
  ※数多=あまた

蟷螂は馬車に逃げられし馭者のさま  中村草田男(くさたお)
  ※蟷螂=とうろう=カマキリ、馭者=ぎょしゃ

闇汁の杓子を逃げしものや何  高濱虚子(たかはま・きょし)
  ※闇汁=やみじる、杓子=しゃくし

あたふたとラグビーボール逃げ惑ふ  ハードエッジ
  ※惑ふ=まどう

夜のうちに逃げ出してをり雪うさぎ  西宮舞

 

 

◎濁る=にごる

  季語の濁り鮒、濁り酒などを除く

点々と田を濁らせて植ゑ進む  ハードエッジ

濁り江の泡に皺よる暑さかな  高井几董(きとう)
  ※皺=しわ

桔梗や踏みて濁らぬにはたづみ  小川軽舟(けいしゅう)
  ※桔梗=きちこう=ききょう

潦にごれるままに氷りけり  室生犀星(むろう・さいせい)
  ※潦=にわたずみ=水たまり

剥きし牡蠣生きゐて水を濁らしむ  山口誓子(せいし)
  ※剥きし=むきし、牡蠣=かき

牡蠣の酢の濁るともなき曇りかな  高濱虚子(たかはま・きょし)

 

 

 

◎滲む=にじむ

春雪や水の面を滲ませて  ハードエッジ

水にじむごとく夜が来てヒヤシンス  岡本眸(ひとみ)

にじみ出てやがて一つや汗の粒  如月真菜(きさらぎ・まな)

老の眼にゝ(チュ)とにじみたる蠅を打つ  高濱虚子

置かれたる目高や石の上に滲み  ハードエッジ

 

 

◎煮ゆ=にゆ

雑魚ざこを煮て一塊いっかいとせり柿若葉  長谷川かい

鮟鱇鍋あんこうなべはしもぐらぐら煮ゆるなり  高濱虚子

埋火うずみびやつひには煮ゆるなべの物  与謝蕪村よさ ぶそん

下しても煮えたつ鍋や薬喰くすりぐい  下村梅子

 

その他のな行:

  →「な」
  →「ぬ」
  →「ね」
  →「の」

以上です