図書室は本の涼しさ夏休
二度寝して昼寝の贅を尽しけり
電車には都の生者盂蘭盆会
俳人、葉書俳句「開発素句報」「全然堂歳時記」発行人。
twitter発表句を推敲自選(7句)し、葉書サイズに印刷(特番20句あり)
図書室は本の涼しさ夏休
二度寝して昼寝の贅を尽しけり
電車には都の生者盂蘭盆会
片陰は天の賜お陰様
涼しくて笑ふが如しアッパッパ
さつちやんの遠くへゆきしバナナかな
ゴゴゴゴと地軸は廻る去年今年
初春のわが身を思ふわが齢
初夢の中をふはふはしやぼん玉
枯葉いま枯葉色なり銀杏は黄
悉く核融合や冬の星
年用意カレーも買つて抜かりなく
秋晴のマンション写真撮れさうな
桜紅葉桜黄葉とうち混じり
船外に泳ぎ遊ぶや天の川
朝顔の花が減り葉に穴があき
朝夕の六時の暗さ曼珠沙華
柿の実に装填されし種八個
荒ぶるや門の仁王と菊の武者
桃の実の花柱名残といふあたり
穴のあるナットと穴のなき木の実
紫外線浴びて真赤な鶏頭花
団栗が旨し縄文土器を焼く
失敗を面白がつて夜の長し
頂上の光るは雪か雲の峰
酷暑日は本も机もほつかほか
町川の夕立濁りの塵芥
万緑に光合成の今や旬
炎天をスポーツカーの真つ赤なり
水は清きわが故郷に帰省かな
木に白と書いて柏や柏餅
骨あまたぐいと曲げたる梅雨の傘
金銀は龍宮城の海月なり
あたたかや歳時記「春」が平積に
曇天の生みし華やぎ春の雪
日本を少し広げて潮干狩
蟻の列みる子に日傘さしかけて
飛び込めばプールの底の炎ゆるごと
曝す書の古き埃を払ふなり
滝壺に晒して瀑布純白に
夕立の流れ激しき外野席
生ぬるき水道水や原爆忌
鉄道の涼しく曲る青嶺かな
板塀も板戸も失せて蝉の殻
朝すでに汗の滴り原爆忌
学僧の夏痩たるも頼もしき
どこへ行くにも立ち漕ぎの夏休
空蝉や木の香失せたる木のベンチ
龍のこと語るは蛇の古老なり
気化熱を奪へと団扇猛らせて
夕日より高き乾杯ビヤホール
打ち返すテニスボールに春の壁
花も葉も蕾も茎も花菜和へ
恋猫のミアーオと鳴くイタリア語
針供養お針子さんにパリの夢
朝寝して聞くや大根を刻む音
ことことと小豆を茹でて春甘し
はるかなる北をも照らす冬日かな
使ひ捨てマスク業火に投ずべし
冬苺赤しケーキの断面に
神々は陸海空に初日の出
あけまして光るは金の福寿草
長男の負けてゆゆしや絵双六
冬たのし新幹線型スニーカー
大皿に青き山脈雪催
「翌年のパリ」の字幕に雪と兵
もやもやと腸のある南瓜かな
顔だけの食はれ残りの秋刀魚なり
行く秋の実を柔かに種硬し
打水に刹那の虹を賜りぬ
母と読むおばけ絵本や蚊帳のなか
絵日記もその子も燃えて終戦日
桜貝よりも色濃し蓮の花
八方へシャワー打ち出す畑かな
ドーナツ状に残土積み上げ蟻の穴
2020年発行の開発素句報
その葉書俳句、全6枚の画像
初詣神も佛も隔てなく
初夢といふ年玉を賜りぬ
綺羅星の月雪花の初芝居
大いなるものはゆるりと初日の出
人々の歩みゆくなり初詣
歳時記の古きを開く淑気かな
初刷にがばりと富士やインクの香
アルバムにもう懐しや初写真
正月を遊び尽して目出度けれ
ここに駅つくれと吹雪く関ヶ原
昼月や蜜柑に淡き花の跡
ノックして芯を出すペン春近し