かはほりと蝙蝠傘とバットマン
新涼や水切籠に皿を挿す
桃すする幼なのほつぺ落ちさうな
俳人、葉書俳句「開発素句報」「全然堂歳時記」発行人。
twitter発表句を推敲自選(7句)し、葉書サイズに印刷(特番20句あり)
かはほりと蝙蝠傘とバットマン
新涼や水切籠に皿を挿す
桃すする幼なのほつぺ落ちさうな
申し訳なささうな黄を青蜜柑
菊の香のつんと神代の昔かな
一年で果つる虫草秋の風
柿の木がこの柿食へと枝垂れけり
湯煙の夜空に消ゆる紅葉かな
少しづつ天気良き日の冬支度
木枯に売るや箒を逆立てて
赤や黄の面影のある落葉かな
水鳥は冷たき水に素足なり
言葉さへ躓くやうに日短
食へといふ根・人・柑や冬至の夜
毛並よきものを誂へクリスマス
優しさは蜜柑の皮を剥くやうに
楽しくて体にも良き炬燵かな
少年の一人住む星クリスマス
濾過さるる珈琲豆や去年今年
新年や革のソファーに深々と
見開きの新年号の色香かな
昼寒し夜なほ寒し日々寒し
魂も冬青空も透き通る
雪に咲く白き椿の金の蕊
みちのくのここ千年の雪景色
身を細う落葉溜りの小草かな
ゆらゆらと磁石の針や春隣
伏せて置くバケツの上に雪丸う
自転車の籠にも雪の降り積る
雪の夜の地下に静かに閉架図書
差し足の鶴や氷をぴしぴしと
砕けては雪より白し玉霰
葱さげて家路の人となりにけり
金屏を立てたきほどの雪達磨
ここ掘れば雪にまみれし紅椿
派手好きの様見ておけと枯蓮
ラグビーのボール方向音痴なる
はるかぜを東の風と書くことも
春色を引く唇のまだ冷た
ビーナスに天使の降らす石鹸玉
光にも微かな重み石鹸玉
蕎麦にするか饂飩にするか梅見茶屋
暖かや前歯の欠けし女の子
海の見えるデパートで買ふ桜餅
俯せに本の眠れる蝶の昼
対岸の花に届けと花吹雪
花浴びて青草萌ゆる川原かな
火を焚くは戦の如し花篝
山々を押し開き行く春の川
細き枝の先の先まで芽吹きけり
恋猫でありし昔や猫ねむる
全山は今沸騰の桜かな
花びらは花を離れて空の旅
花びらは桜の花の涙かも
春暁の海滴るや桜海老
古き良きものの一つに春の風
蒲公英や波打際の波殺し
君知るや春あけぼのの豆腐店
生産地シールはピンク春キャベツ
食はるるを鶯餅はまだ知らず
暁闇の遅々たる刻を囀れり
囀りて羽搏きて尚もどかしや
囀や墨痕はまだぬらぬらと
禁色の紫を花菖蒲かな
紫と白の絢爛花菖蒲
三方へ絞りを垂れて花菖蒲
水底に暑さ忘るる豆腐かな
人魂も涼みに来れ蚊遣香
火も人も裸なりけり夜の海
神々の隆々たるや雲の峰
身を投げて溺るる如し籐寝椅子
夕焼に促されつつさやうなら
炎帝や入道雲を従へて
日本の海をぐるりと雲の峰
赤々と夕焼の中の夕日かな
お揃ひのすでに楽しき夏の旅
もう少し赤を強くと夕焼守
夕焼のなんと静かに消ゆること
夕焼や餓ゑて綺麗な肋骨
夕立に洗ひたてたる夕焼かな
ああああとサイレンの鳴る夕焼かな
耳にして暑さも峠てふ言葉
生き延びし女子供や終戦日
安らかや日は夕焼に包まれて
明日はもう市民プールの最終日
白粉花の種を零しつ咲き続く
改、豊年のお稲荷さんに稲荷ずし
白粉花や色を違へて咲き乱れ
白粉花や表通りにネオン点く
鳴き通す虫の夜長となりにけり