ペアリング68 朝風呂へ雑煮の餅の数をきく 中村遠路

ペアリング68

◎素足の雨と水

春雨はるさめのぬるゝにまかせ素足すあしかな 高木晴子

如露じょろの水素足にかかる薄暑はくしょかな 清崎敏郎   としお

  ※水素足!

 

 

◎女傘

淡雪あわゆきやかりそめにさす女傘おんながさ 日野草城    そうじょう

女傘借りて見てをり花菖蒲はなしょうぶ 清水基吉    もとよし

 

 

◎ゐず

まだぬくき春の炬燵こたつにだれもゐず 長谷川櫂

昼寝より覚め父もゐず母もゐず 鷹羽狩行たかは しゅぎょう

炬燵にもふすまあけても母のゐず 石井とし夫

豆撒まめまいてわが家鬼ゐず吾子あこもゐず 橋本美代子

 

 

◎味噌汁と卵

味噌汁にうずらの卵ふきとう ハードエッジ

味噌汁におとすいやしさ寒卵かんたまご 草間時彦

 

 

◎評価

てのひらにのせて子猫の品定め 富安風生とみやす ふうせい

たけのこ首実検くびじっけんと申すべく 行方克巳なめかた かつみ

  ※人造人間なら首実験、かも

 

 

◎笑う老人

生き足りてにこにことうば山桜 森澄雄

にこにこと分らずじまひ生身霊いきみたま 清水基吉    もとよし
  にこにこの究極:
  地球一万余回転冬日にこにこ 高濱虚子たかはま きょし

 

 

◎数を聞く

焙炉ほいろ場の人数にんずをききにじょちゅう来る 高野素十    すじゅう
  ※婢=はしため/はした/おんな、などかも
  「婢」の読み方/ふりがな文庫
  ※人数=にんずう/にんず
  「人数」の読み方/ふりがな文庫

朝風呂へ雑煮ぞうにもちの数をきく 中村遠路

 

 

◎指と爪の劣化

老人のはだしの指のまばらかな 阿波野青畝あわの せいほ

爪古びたかの如くに素足かな 上野泰    やすし

 

 

◎残像

白牡丹はくぼたんの残像の歩きけり 永田耕衣   こうい

あぢさゐはすべて残像ではないか 山口優夢   ゆうむ

未生みしょうの空桃の残像流れゆく 柿本多映  たえ

仏像の残像 檸檬れもんそなえたく 和田悟朗

水仙や残像として闇につ 下村槐太   かいた

残像の少女の原色いつ失う 林田紀音夫  きねお

 

 

◎申さばや

柿若葉妙齢みょうれいとこそ申さばや 石塚友二   ともじ

箱根山すすき八里と申さばや 正岡子規  しき

 

以上です