ペアリング 62
◎つぼ焼の奥
壷焼の奥より文字のやうなもの 齋藤朝比古
壺焼の奥には雲のやうなもの 櫂未知子
田螺からは、
田螺より出て来る顔のやうなもの 西村麒麟
蛤なら、
蛤のもやもやと出す明日かな 上田信治
◎梅に来
ある日突然湯島の梅が見たくて来 鈴木真砂女
来て見れば来てよかりしよ梅椿 星野立子
◎一字づつ
ダンススクール西日の窓に一字づつ 榮猿丸
提灯の三つに一字づつおでん 下田實花
◎ひたひたに
ひたに入りひたひたに満ち田水たり 小川軽舟
古沼の水ひたひたに草茂る 正岡子規
ひたひたに睡蓮の水ありにけり ハードエッジ
◎現場周辺
音の辺に小さき白煙ラムネ抜く ハードエッジ
梨に刺す楊枝の先のしぶきかな 金子敦
◎金魚と竜宮城
出目金を買うて龍宮城も買ふ 木田千女
竜宮城洗つて金魚鉢に戻す 池田瑠那
金魚鉢に無用の用の竜宮城 斉田仁
◎冬の川
ながながと川一筋や雪の原 野澤凡兆
一月の川一月の谷の中 飯田龍太
◎雪と唄
雪の降る町といふ唄ありし忘れたり 安住敦
忘られし歌の数々吹雪の夜 ハードエッジ
◎へろへろ、すこすこ
へろへろとワンタンすするクリスマス 秋元不死男
すこすことボディーソープや除夜の鐘 ハードエッジ
◎追儺と氷
氷りたる雪をめがけて豆を撒く 岸本尚毅
灯のいろを踏めば氷や鬼やらひ 長谷川櫂
石をつつむ氷もありぬ鬼やらひ 宇佐美魚目
以上です