全然堂歳時記 夏の部
【プール】
全然堂歳時記=現在、本号を含め106記事=春夏秋冬–年末年始=29-25-21-19–5-7
/2024.8.4
フレーズ:プール開き、夜のプール
人気成分:水
目次
◎葉書俳句
◎テキスト
海山に伍してプールを開くなり ハードエッジ
海山:
海山に線香そびえ夏の盛り 三橋敏雄
恐竜のころの海山雲の峰 ハードエッジ
弁当に海山のもの豊の秋 西宮舞
水入れてプール重たくなりにけり ハードエッジ
水入:
水入れて春田となりてかがやけり 長谷川かな女
桜餅子が寝て夫婦水入らず 西宮舞
水入れて鉢にうけたる椿かな 上島鬼貫
水入れて薬罐くもりぬ桃の花 小澤實
水入れて水を出さざる金魚池 右城暮石
水入れて壺に音する秋の暮 桂信子
水入の水をやりけり福寿草 正岡子規
きらきらとプール開きの真水かな ハードエッジ
真水:
流れこむ真水つめたき磯遊び 黒澤麻生子
砂浜を真水で洗ふ夕立かな ハードエッジ
ゆきずりの真水のやうな藍浴衣 佐藤郁良
行く秋の真水平らを尽しけり 若井新一
引きはじむ秋の出水へ真水打つ 神蔵器
みづうみは真水の寒さ舟を出す 長谷川櫂
年の瀬や真水で洗ふ消防車 ハードエッジ
たつぷりと真水を抱きてしづもれる昏き器を近江と言へり 河野裕子
学校のプール縦、横、高さかな ハードエッジ
縦横:
花散るや縦横に組む篝の字 ハードエッジ
襖みなはづして鴨居縦横に 高濱虚子
縦横に水羊羹の詰め合せ ハードエッジ
虫干や部屋縦横に紐わたし 高濱年尾
万緑を縦横に切る緯度経度 ハードエッジ
兵器庫の如く西瓜を縦横に ハードエッジ
縦横に客席満つる初芝居 ハードエッジ
プールとは水を注ぎ足し注ぎ足して ハードエッジ
注ぎ足:
氷鳴る麦茶注ぎ足しくるるとき 小川軽舟
注ぎ足して氷溶け出す麦茶かな 中本真人
帰らんとすれば麦茶を注ぎ足され 鶴岡加苗
熱き茶を夫へ注ぎ足す暑気払 安野良子
授業済みしプールに何か浮いてをる ハードエッジ
授業:
春の雪最後の授業飾りけり 稲畑汀子
囀や男女分かるる授業あり 北藤詩旦
夏雲や町を探検する授業 長町誠司
死について焚火を囲んでの授業 広瀬康
生徒去りプールの水のぐつたりと ハードエッジ
ぐつたり:
ぐつたりと鯛焼ぬくし春の星 西東三鬼
吾子の手にぐつたりとある土筆かな ハードエッジ
ぐつたりと掌にまがりたる蕨哉 前田普羅
ぐつたりとバナナの皮が役目終ふ ハードエッジ
菱採りしあたりの水のぐつたりと 波多野爽波
風邪熱の抜けて芯からぐつたりと ハードエッジ
プール出て引力圏に戻りけり ハードエッジ
引力:
ぶらんこの引力圏を脱すべく ハードエッジ
引力も長閑に花と遊ぶなり ハードエッジ
柿熟れて引力の効きはじめたる 大串章
数へ日の引力圏に引き込まれ ハードエッジ
教室にプール名残りの湿りあり ハードエッジ
湿り:
若草に突いたる膝の湿りかな 恩田富太
梅雨湿りしてゐる我を湯に放つ ハードエッジ
蛍火の闇を抜けきし身の湿り 木下ふみ子
教科書にぽたりプールの名残り水 ハードエッジ
教科書:
絵本より教科書小さし入学す ハードエッジ
入学の仮設教科書販売所 中本真人
バンドにて縛す教科書啄木忌 辻田克巳
まだ固き教科書めくる桜かな 黒澤麻生子
教科書をしばし離れて夏期講座 ハードエッジ
教科書のをはりの雪の詩なりけり 柳元佑太
教科書に虚数現る落葉舞ふ ハードエッジ
うつとりとプールのあとの授業受く ハードエッジ
うつとり:
うつとりと燠になるなり春の炉に 辻桃子
蛇穴を出でてうつとりしてゐたり 仙田洋子
うつとりと雲雀を聞きつ椿落つ ハードエッジ
川のはじまりうつとりと花盛り 松澤昭
ゆだち過ぎうつとりと夜の来たりけり 川原風人
うつとりと人見る奈良の鹿子哉 正岡子規
うつとりと大根抜かれし大根畑 ハードエッジ
もう一度午後のプールに来たといふ ハードエッジ
もう一度:
もう一度子猫に生れ会ひに来よ ハードエッジ
もう一度呼ばれて帰る秋夕焼 二村典子
もう一度神輿のとほる秋日和 柏柳明子
台風の天気予報をもう一度 ハードエッジ
水の香のプール帰りの五六人 ハードエッジ
プール帰り:
髪濡れてプール帰りの少女らし 舘岡沙緻
極楽やプール疲れに昼寝して ハードエッジ
極楽:
九十五齢とは後生極楽春の風 富安風生
極楽は衣も更へず仏だち 正岡子規
文学に地獄極楽桜桃忌 山田弘子
極楽の夜明けの色に蓮の花 ハードエッジ
極楽に行く人送る花野かな 永井荷風
吊し柿貧しき寺の極楽図 渋谷光枝
湯あがりの極楽浄土虫浄土 阿部みどり女
極楽の乗物や是桐一葉 巖谷小波
極楽は蓮の実飛で月丸し 正岡子規
極楽か地獄か冬の昼を寝て 鈴木鷹夫
極楽の島つ岩根の初日の出 坪内逍遥
極楽へ上る地獄の絵双六 ハードエッジ
客船がプールを乗せて海を行く ハードエッジ
客船:
客船に数多の窓や春の海 井上睦子
見上げたる豪華客船炎天下 ハードエッジ
接岸の豪華客船片かげり ハードエッジ
海の上の客船の上の白日傘 ハードエッジ
世界一周豪華客船金魚乗せ ハードエッジ
灯の函の豪華客船クリスマス 鷹羽狩行
豪華客船その吹き抜けに聖樹立て ハードエッジ
雷激しプール毛羽立ち始めけり ハードエッジ
毛羽立:
削られてアイスクリーム毛羽立ちぬ ハードエッジ
黒雲の底の毛羽立つ厄日なり 正木ゆう子
夕立にプール叩かれ叩かれて ハードエッジ
叩かれ:
叩かれて釘の頭や寒明くる ハードエッジ
抱く子に顔叩かれて婆涼し 高野素十
叩かれて昼の蚊を吐く木魚かな 夏目漱石
叩かれて毛虫吐き出す庭木かな ハードエッジ
叩かれて鮭のはららごこぼしけり 行方克巳
誰かれに頭叩かれ雪達磨 高倉和子
雨の日のプールサイドのアルミ椅子 ハードエッジ
雨の日:
雨の日の灯の明るさよ桜餅 鷹羽狩行
雨の日は雨の雲雀のあがるなり 安住敦
雨の日を閉ざす雨靄花菜畑 鷹羽狩行
雨の日の網戸は少し寂しかり ハードエッジ
雨の日の海を見てゐる海の家 ハードエッジ
雨の日も揚羽飛ぶなり百姓家 岸本尚毅
雨の日の海の民宿バナナ食ふ 辻内京子
雨の日をくりかへす間に秋の暮 阿部みどり女
明日はもう市民プールの最終日 ハードエッジ
市民:
父の日の市民農園父ばかり 星野麥丘人
元日の市民マラソン城めぐる 船坂ちか子
洗ひ終へしプールの底で跳んでみる ハードエッジ
本歌取り:
寒雀見てゐて少し跳ねてみる 岡本眸
◎初案17句
夕立が来てしまひけり日向水 ハードエッジ
洗ひ終へしプールの底で跳んでみる ハードエッジ
アキレスの如くプールを上りたる ハードエッジ
授業済みしプールに何か浮いてをる ハードエッジ
明日はもう市民プールの最終日 ハードエッジ
教室にプール終りし子がぞろぞろ ハードエッジ
水の香のプール帰りの家族連れ ハードエッジ
プールには直方体の夜の水 ハードエッジ
雷激しプール毛羽立ち始めけり ハードエッジ
海溝を過る船内プールかな ハードエッジ
もう一度午後のプールに来たといふ ハードエッジ
水入れてプール重たくなりにけり ハードエッジ
神主も来りてプール開きなり ハードエッジ
雨の日のプールサイドのアルミ椅子 ハードエッジ
プールから人が持ち去る水の量 ハードエッジ
少しづつ今日の水足すプールかな ハードエッジ
明日開くプール真水を湛へたる ハードエッジ
◎推敲一覧/pdf
全105句/2枚
全然堂歳時記 夏 【プール】推敲一覧
◎A4推敲 原稿/pdf
全1枚
全然堂歳時記 夏 【プール】_A4推敲 原稿
◎A4推敲 加筆/pdf
全1枚
全然堂歳時記 夏 【プール】_A4推敲 加筆
◎葉書推敲 原稿/pdf
全3枚
全然堂歳時記 夏 【プール】_葉書推敲 原稿
◎葉書推敲 加筆/pdf
全3枚
全然堂歳時記 夏 【プール】_葉書推敲 加筆
◎葉書俳句表側
◎データベース画面/桐v10
◎プール秀句
声もなく夜のプールを泳ぎ切る 中村汀女
仰向けに夜のプールに泳ぎをり 森重昭
夜のプール水に平らの戻りけり 鶴岡加苗
プールにも夕波の立ち初めにけり 西村和子
プールより生まれしごとく上がりけり 西宮舞
室内プール波立つ教師も母子も若く 伊丹公子
一着の飛沫の強きプールかな 柏柳明子
波残るプールに一礼敗者去る 古屋恵美子
乳児抱かれプールの中にあくびせる 山口波津女
よく笑ひよく泣きビニールプールかな 佐川盟子
選曲を間違へてゐるプールかな 近恵
知らぬ曲流るるプールサイドかな 鶴岡加苗
三人がプールみがきをして遊ぶ 藤田哲史
プール涸れて跳躍台を恐くする 秋元不死男
痩せつぽちプールに跳ねてばかりゐる 大塚次郎
身をあをく月のプールを泳ぎきる しなだしん
プールには陰無し天の真下なる 山口誓子
プールに水充たすもつとも深きより 岡本眸
プールの底掃く片側に水残る 岡本眸
プールサイド水の足跡戸口まで 林翔
村営のプール青嶺の水満たす 右城暮石
プール閉づ張りたる水の青きまま 池田秀水
水色のペンキ分厚しプール憂し 相子智恵
水張つて今年のプール出来上がる 池端よりこ
雨の中に雨降りずぶ濡れのプール 辻田克巳
雷鳴のプールに誰か抜手きる 寺田京子
生徒みな上がりしプール波残る 中本真人
いろいろな泳ぎ方してプールにひとり 波多野爽波
水は無しプールの底を碧く塗り 山口誓子
音消えてプールの水のなほ注ぐ 岡本眸
拡声器プールに低き私語をする 山口誓子
校舎までプールのホイッスル響く しのぶ日月
病室はプールの香なりといへば笑ふ 生駒大祐
教室にプールの水の匂ひ来る 茨木和生
水深の数字かすれしプールかな 青木ともじ
映画部がプールのカット撮りに来る 藤田哲史
女来て夜のプールを波だたす 長谷川浪々子
父へ手を上げる プールでならいまも 伊丹三樹彦
子等揚げてプールの水を休ませる 柴田奈美
プールサイドの鋭利な彼へ近づき行く 中嶋秀子
ともだちの流れてこないプールかな 宮本佳世乃
プール嫌ひ先生嫌ひみんな嫌ひ 澤田和弥
子の鼻血プールに交り水となる 赤尾兜子
似たやうな頭のうごくプールかな 西原天気
頭から突込むプール若旦那 加藤静夫
ヘヤピンがプールの底に夏終る 林昭太郎
髪濡れてプール帰りの少女らし 舘岡沙緻
髪剪つてプール開きを待つばかり 樋笠文
ヘアピンがプールサイドに錆びてをり 仲村青彦
ピストルがプールの硬き面にひびき 山口誓子
室内プールの水面ゆらめく窓枠も 村越敦
大時計プールの面にさかしまに 西村和子
明るきよプールの底に目開けば 椎野順子
プール開きあかんべえして眼の検査 玉木照子
歯並びのよくてプールのよく似合ふ 岡野泰輔
車内にて耳より零れだすプール 小池康生
耳を出てプールの水の温きかな 清水良郎
底に手のゆらりと触るプールかな 南十二国
プール深し掃除の子等のどの背より 岡本眸
ビニールプールに冷やす西瓜や子の座る 榮猿丸
家出するほども荷物を持ちプール 下田育子
にぎやかなプールサイドの荷物番 長田光弘
海べりにプール正しき矩形なす 山口誓子
水底に白線引かれプール満つ 山口誓子
白線の無垢なるプール開きかな 市ヶ谷洋子
一斉に居なくなりたるプールかな 奥坂まや
ヘアピンの形に錆ありプールの底 野崎海芋
老もまたプールサイドの椅子に在り 後藤夜半
プールにもお風呂のやうにゆつくりと 北大路翼
鉄梯はプールに沈み直ぐ尽きぬる 山口誓子
父の寂しさ水なきプールの鉄梯も 友岡子郷
放課後のプールしばらく揺れ残る 村上鞆彦
プール揺れ水底の線鎮まらず 山口誓子
プールより四五歩で慣れてあるきだす 大屋達治
ブラシ投げ入れろとプールから君は 藤田哲史
目覚ましのプールに入るも旅日課 嶋田摩耶子
プールよりあがるぽろぽろうろことれ 今瀬剛一
プール監視人へと蜻蛉集まり来 正木ゆう子
子供用プールを出せば蜻蛉来る 杉原祐之
ビニールプールベランダに干す月曜日 小松和子
市長もゐてプール開きの水しぶき 松村多代子
◎未練句/補遺/在庫処理
小学校プールこまごま賑はへり ハードエッジ
ある日金魚ビニルプールに放たれて ハードエッジ
バカンスの金魚ビニールプールへと ハードエッジ
子ら遊ぶビニルプールに金魚入れ ハードエッジ
空のプールに空は映らず水もなし ハードエッジ
冷たさの夜のビニールプールなり ハードエッジ
日に当てて温きビニールプールかな ハードエッジ
水を溜めさして工夫もなきプール ハードエッジ
驟雨なりプールの水を増やすほど ハードエッジ
プールの水で峰雲いくつ作れるか ハードエッジ
地球儀が二つプールに浮いてをる ハードエッジ
帽の頭のますます小さきプールかな ハードエッジ
ずぶ濡れで球を取り合ふプールなり ハードエッジ
プールなり水があらうと無からうと ハードエッジ
飛び込めばプールの底の炎ゆるごと ハードエッジ
原色のパイプ椅子あるプールかな ハードエッジ
以上です