夏 【涼し2】 大陸と海を隔てし国涼し

全然堂歳時記 夏の部
【涼し2】すずし2

全然堂歳時記=現在、本号を含め105記事=春夏秋冬–年末年始=29-24-21-19–5-7
/2024.7.27

 

◎葉書俳句

※釈明:
背景の「涼し2」の各文字が微妙に左に寄つてバランスが悪いです/MediBang Paint Pro
横書き文字を1字づつ改行した為と思われます
あれこれ考えてみたところ、
ようやくフォント名の頭に「@」の付いたのが縦書きフォントを思い出しました
次回の全然堂歳時記「プール」では改善されると思います、、、多分/2024.7.31

 

◎テキスト

神々の星座涼しくかがやける ハードエッジ

締切ぎりぎりで投入
イントロにふさわしいヒット作、とその時は思ったものの、
印刷して読み返しているうちに色褪せてしまった凡作

口直しに聞いて下さい

フィフス・ディメンション『輝く星座 Aquarius/Let the Sunshine In』1969年

星座:
深吉野の花冷え星座にも及ぶ 鷹羽狩行
花冷えや昼の星座は見えずとも ハードエッジ
星座にはなれぬ嘆きの流れ星 ハードエッジ
流星のあと軋みあふ幾星座 福永耕二
神は星座組むとき妻は毛糸編む 鷹羽狩行

涼しさに住んでもみたき土星の輪 ハードエッジ

土星:
土星の輪すなはち永久の花筏 ハードエッジ
土星の輪涼しく見えて婚約す 堀口星眠
香水や土星にうすき氷の輪 津川絵理子
土星の輪見に来よといふ新樹かな 髙柳克弘
新涼の皿より薄し土星の輪 ハードエッジ
夕空の土星に秋刀魚焼く匂ひ 川端茅舎
火星より土星へ飛びぬ絵双六 宇志やまと

空をく大電流の涼しけれ ハードエッジ

電流:
青あらし電流強く流れをり 波多野爽波
夕立雲電流通り易きかな ハードエッジ
ひるがほに電流かよひゐはせぬか 三橋鷹女
電流の憧れてゐる流れ星 ハードエッジ
庭の木に電流通ふクリスマス ハードエッジ

大陸と海をへだてし国涼し ハードエッジ

隔て:

耕牛の谷を隔てて高く居る 高濱虚子
芝焼く火ひろがりて妻隔てけり 石田波郷
兄いもと遠く隔てゝ卒業す 大場白水郎
東京と十日隔てぬ夕雲雀 中村汀女
沈丁の香りも雨に隔てられ 星野高士

世を隔て人を隔てゝ梅雨に入る 高野素十
ハンカチは汗も涙も隔てなく ハードエッジ
氷屋に葦簾隔てて舊派もゐ 筑紫磐井
窓を隔てて金雀枝と金糸雀と 片山由美子
城若葉ホテルは濠を隔てたる ハードエッジ

さやうならさやうなら霧に隔てられ 野村泊月
おのづから世を隔てけり秋簾 大場白水郎
古酒の酔ひ新酒の酔ひも隔てなく ハードエッジ

谷隔てあひ傾ける冬菜畑 福田蓼汀

古梅園師走の音を隔てたり 西村和子

近所にも分け隔てなく初日差す ハードエッジ
初詣神も佛も隔てなく ハードエッジ

天龍てんりゅうの川としたる涼しさよ ハードエッジ

改案:
天の龍川と化したる涼しさよ ハードエッジ

化したる:
菜の花の化したる蝶や法隆寺 松瀬青々
朽縄を蛇と化したる神意かな ハードエッジ
白鶴の銀と化したる屏風かな 大石悦子
一日で塵芥と化したるマスク焼く ハードエッジ
枯草に石と化したる亀並ぶ 山田弘子

涼しさは水尾みお水輪みずわさざなみか ハードエッジ

水尾:
わが船の水尾をながむる遅日かな 日野草城
親鴨の水尾のかばへる子鴨かな 西村和子
物浸けて即ち水尾や秋の川 高濱虚子
雁の数渡りて空に水尾もなし 森澄雄
水尾引いて離るる一つ浮寝鳥 高野素十
水鳥の小さきが引ける水尾長し ハードエッジ
水鳥の水尾の交はる水の上 ハードエッジ
水鳥の水尾引き捨てゝ飛びにけり 松藤夏山
年過ぎてしばらく水尾のごときもの 森澄雄

ざつざつと水切るざるの涼しけれ ハードエッジ

水切:
水切りに半日かけて種俵 木内彰志
新豆腐水切りいだす如くせり 長谷川櫂
束子の水切つて切つて年終る 菖蒲あや
束子の水切つてそろそろ除夜の鐘 鈴木鷹夫
除夜の鐘水切籠は闇の中 ハードエッジ

どんぶりは涼しと猫の子が眠る ハードエッジ

丼/自作:
蓋あけて天丼匂ふ花の雨 ハードエッジ
天丼は箸水羊羹は匙 ハードエッジ
裸にて丼飯を食らふなり ハードエッジ
鰻丼にふとウナ電といふ言葉 ハードエッジ
ずつしりと丼重し濃紫陽花 ハードエッジ
親子丼親子で食べて秋の暮 ハードエッジ
庭先に鶉を飼つて中華丼 ハードエッジ
日本海海鮮丼や寒波急 ハードエッジ
丼に親指大事夜鳴蕎麦 ハードエッジ

積み上げし積木つみき涼しくくずれたり ハードエッジ

積み木:
春昼の積木崩しの悲鳴らし ハードエッジ
春雨の積木豪華な家作り 上野泰
崩れたる積木割れたる石鹸玉 ハードエッジ
宿の子の寝そべる秋の積木かな 田中裕明
初雪や積木を三つ積めば家 片山由美子
さびしさは木をつむあそびつもる雪 久保田万太郎
姉絵本弟積み木日向ぼこ 上野泰
枯るる中ことりと積木完成す 髙柳克弘

一字にて足る一、十、百、千、万涼し ハードエッジ

一字:

雛の灯や母の名一字もらひし子 岬雪夫
一字だけつかぬネオンや猫の恋 栗林明弘
花鳥もおもへば夢の一字かな 夏目成美

悲しさを漢字一字で書けば夏 北大路翼
夏という一字の走り出しそうな 神野紗希
ふとぶとと氷一字の旗よろし 松本たかし
簗といふ一字彫りあり簗の舟 高野素十

一字づつ文字を覚ゆる草の花 日原傳

冬ぬくし風呂屋の文字のゆの一字 野村喜舟
提灯の三つに一字づつおでん 下田實花
辞書割つて一字を寒燈下に拾ふ 佐野まもる
飛びたがる誤植の一字冬の蠅 秋元不死男

書初や平仮名一人一字づつ 久保田万太郎
一字なほにじみひろごる試筆かな 皆吉爽雨
年玉や上の一字を筆はじめ 正岡子規

かきとりちょうおほきなますの涼しさよ ハードエッジ

枡:
枡席に脱ぎし毛皮のうづくまる 品川鈴子
古枡や追儺の豆にあたたまり 百合山羽公
追儺豆枡もろともに祓はるる 宮内芳子
同じ枡より福の豆鬼の豆 阿波野青畝
豆撒の古き枡あり角も取れ ハードエッジ
枡酒の盛り上がりたる淑気かな 清水良郎

ばつさりとてて涼しき句集かな ハードエッジ

句集:
紅梅や句集出しても出さいでも 秋元不死男
ふところに薄き句集や夕涼み 野村喜舟
故人より借りつぱなしの黴句集 草間時彦
宝船津々浦々の句集積み 平畑静塔
読初は漱石句集鼻毛切る 小西昭夫

仮説かせつある日ひつくりかへる涼しさよ ハードエッジ

仮説:
黒揚羽仮説みごとに覆る ハードエッジ
爽やかに引きし補助線仮説成る ハードエッジ
反証に仮説あやふし夜食冷ゆ ハードエッジ

青といふ涼しき色に煮炊にたきの火 ハードエッジ

煮炊:
わづかなる煮炊に汚れあたたかし 岡本眸
暑に耐ふる煮炊のガスの炎の揃ふ 岡本眸
煮炊する湯気や煙や梅雨籠 ハードエッジ
日の暮の秋は煮炊の好もしき ハードエッジ
煮炊して留守守る童女鳳仙花 富安風生

濃き色を水で伸ばして涼しけれ ハードエッジ

濃き色:
濃き色を愛して梅雨に抗すなり 林翔
濃き色の紫蘇が混りて秋の草 ハードエッジ
濃き色は明日へと預け寒牡丹 能村登四郎

いまはただ遠く涼しくベンチャーズ ハードエッジ

今はただ:
今はただ苗札を読み水をやり ハードエッジ
今はただ蚊火もゆるのみ大雨かな 飯田蛇笏
いまはただ流れにまかす盆のもの 上村睦子

三十度切つて涼しと思ふ日も ハードエッジ

思ふ日:
朝顔の実を採らねばと思ふ日々 鷹羽狩行
春近く思ふ日遠く思へる日 高木晴子
隙間風さへも名残と思ふ日々 山田弘子
古きよき時代と思ふ日向ぼこ 田中裕明

千年の仏を守るどう涼し ハードエッジ

千年:
千年の昔のごとく耕せり 富安風生
千年杉の千年前の夏の雨 鈴木鷹夫
風音を千年聞きて滴れる 正木ゆう子
滴りの一千年の一つづつ 宮崎寒水
千年の留守に瀑布を掛けておく 夏石番矢
秋風や皆千年の物ばかり 正岡子規
千年の鶴万年の雪の上 ハードエッジ
舐めてみて千年甘し千歳飴 ハードエッジ

歳月さいげつの吹き抜けゆくや墓地ぼち涼し ハードエッジ

吹き抜け:
吹き抜けのジャングルジムに花吹雪 ハードエッジ
籠枕そを山風の吹き抜けて 飴山實
吹き抜ける風の自在に海の家 船坂ちか子

庭を掃くことも修行しゅぎょうそう涼し ハードエッジ

修行:
蚊遣火や京なつかしむ修行僧 小川軽舟
流星や修行の僧の大嚔 ハードエッジ

◎初案20句

作句順

青といふ涼しき色に煮炊きの火 ハードエッジ
夕立の大きな音の涼しさよ ハードエッジ
三十度切つて涼しくなりにけり ハードエッジ
容赦なく捨てて涼しき句集かな ハードエッジ
いまはただ遠く涼しくベンチャーズ ハードエッジ

天龍の川となりたる涼しさよ ハードエッジ
丼の涼しさにゐる子猫かな ハードエッジ
書取の枡に漢字や蛍籠 ハードエッジ
水切の笊になりなば涼しかろ ハードエッジ
積み上げし積木を崩す涼しさよ ハードエッジ

千年を仏に仕へ涼しけれ ハードエッジ
秋深く覆される仮説かな ハードエッジ
神々の姿の見ゆる星涼し ハードエッジ
大陸に少し離れて涼しけれ ハードエッジ
涼しさに住んでもみたき土星の輪 ハードエッジ

濃き色を薄く伸ばして涼しさよ ハードエッジ
一も一字十も一字の涼しさよ ハードエッジ
歳月の吹き抜けてゆく墓涼し ハードエッジ
庭を掃くことも修行や僧涼し ハードエッジ
涼しさは水尾か水輪かさざ波か ハードエッジ

 

◎推敲一覧/pdf

全114句/2枚

全然堂歳時記 夏 【涼し2】推敲一覧

 

◎A4推敲 原稿/pdf

 

◎A4推敲 加筆/pdf

 

◎葉書推敲 原稿/pdf

全6枚

全然堂歳時記 夏 【涼し2】_葉書推敲 原稿

 

◎葉書推敲 加筆/pdf

全6枚

全然堂歳時記 夏 【涼し2】_葉書推敲 加筆

 

◎葉書俳句表側

 

◎データベース画面/桐v10

 

 

◎涼し秀句

大仏にはらわたのなき涼しさよ 正岡子規
生かなし晩涼に坐し居眠れる 高濱虚子
じだらくに寝れば涼しき夕べかな 宗次
フラダンス笑顔涼しく後退る 太田うさぎ
風生と死の話して涼しさよ 高濱虚子

涼しいねと通夜の遺影のおん眼もと 殿村菟絲子
大の字に寝て涼しさよ淋しさよ 小林一茶
涼しさや石より雲の彫り出され 安里琉太
涼しさは波のうしろを次の波 岩田由美
無人島の天子とならば涼しかろ 夏目漱石

涼しさは沖に寝てゐる佐渡島 鈴木鷹夫
城垣の角なす石の涼しけれ 金原知典
白涼し紫も亦涼しく着 星野立子
金・銀で酬ゆる恩の涼しかり 筑紫磐井
口紅のいさゝか濃きも涼しけれ 久保田万太郎

もつれあふて涼し松風浪の音 正岡子規
涼しさや鐘をはなるるかねの声 与謝蕪村
その人の名の研究所涼しけれ 田中裕明
虚子もなし風生もなし涼しさよ 小澤實
どの子にも涼しく風の吹く日かな 飯田龍太

涼しさや縁より足をぶらさげる 各務支考
少食を子に叱られて涼しさよ 池田澄子
生卵小鉢に一つづつ涼し 小川軽舟
いつの間にがらりと涼しチョコレート 星野立子
円涼し長方形も亦涼し 高野素十

涼しくていつしか横に並びけり 西村麒麟
金網の中に涼しき佛かな 会津八一
涼しさうな処をよつて行き給へ 正岡子規
四方の景たがへて天守閣涼し 片山由美子
ここ涼しかしこ涼しと座をかへて 高濱年尾

紙コップ飛ぶ涼しさや舟遊び 吉屋信子

◎未練句/補遺/在庫処理

じだらくに寝たる宗次の涼しさよ ハードエッジ
誤字ひとつ見つけて涼し恐ろしき ハードエッジ
暑き句を詠み来て今日の涼しき句 ハードエッジ
自らの影に憩へば涼しかろ ハードエッジ
灯涼し即ち夜の涼しけれ ハードエッジ

火口湖の百万トンの水涼し ハードエッジ
涼しさや水底の栓抜きたれば ハードエッジ
エアコンに湿気も抜かれ風涼し ハードエッジ
雲を地に引き下しなば涼しかろ ハードエッジ
川風の川わたりくる涼しさよ ハードエッジ

大川の大きく曲る涼しさよ ハードエッジ
飛石は空を飛ばねど地に涼し ハードエッジ
デッサンに涼しき色を待たれをる ハードエッジ
黒よりも赤の金魚の涼しけれ ハードエッジ
涼しさや紅一点の蚊遣香 ハードエッジ

一文字でくすのきと読む涼しさよ ハードエッジ
一枡を一字で埋める涼しさよ ハードエッジ
大の字になつて涼しき板間かな ハードエッジ
問題の箇所の分りし涼しさよ ハードエッジ
墨染の衣涼しく吹かれをる ハードエッジ

涼しさや尼ぜの頭光らせて ハードエッジ
皺腹を掻つ捌きなば涼しかろ ハードエッジ
目薬の一滴で足る涼しさよ ハードエッジ
涼しさに二本の足を投げ出して ハードエッジ
ビル涼し食事の前のショッピング ハードエッジ

食べ盛り遊び盛りの涼しさよ ハードエッジ
高さうで地味な和服の涼しさよ ハードエッジ
一本の団扇を得たる涼しさよ ハードエッジ
紅薔薇棘あることの涼しさよ ハードエッジ
小さきもの涼しきものを並べ見る ハードエッジ

散らかつてゐても涼しき広さなり ハードエッジ
外に出て外の涼しきゆふべかな ハードエッジ
吊橋の涼しき揺れと思ふのみ ハードエッジ
次の間に次の間のある涼しさよ ハードエッジ
会議室一人で使ふ涼しさよ ハードエッジ

清水の舞台ならねど涼しけれ ハードエッジ
すずめすずめ弾めば涼し飛べばなほ ハードエッジ
ぱたぱたとロングスカート涼しさう ハードエッジ
歳月の永遠に流るる涼しさよ ハードエッジ
暑き句を書いて涼しくならざりし ハードエッジ

毒といふ涼しきものを手にしたる ハードエッジ
涼しさの外野席とはならざりし ハードエッジ
涼しさや白地に青くPの文字 ハードエッジ
涼しさや坊主頭に耳ふたつ ハードエッジ

以上です