秋 【秋の暮】 この町に産科の灯あり秋の暮

全然堂歳時記 秋の部
【秋の暮】あきのくれ

全然堂歳時記=現在、本号を含め95記事=春夏秋冬–年末年始=29-21-21-17–3-4
/2023.11.25

◎葉書俳句

 

◎テキスト

神々もさびしかりしや秋の暮 ハードエッジ

寂しかり:
麦踏の手ぬぐひの揺れさみしかりけり 江渡華子
日当りてさびしかりけり捨雛 山口青邨
肩の辺のさびしかりける寝釈迦かな 安住敦
菜の花の一本づつはさみしかり 西岡美代子

真裸の果てはしくしくさびしかり 能村登四郎

父の咳母の咳よりさびしかり 正木ゆう子
雑炊も人のなさけもさびしかり 河野南畦
いつの生か鯨でありし寂しかりし 正木ゆう子

空白はさみしかりし日日記閉づ 岡本眸

寂しかり/自作:
雨の日の網戸は少し寂しかり ハードエッジ
秋の暮橋を渡るは寂しかり ハードエッジ
秋雨に暮るるは寂し寂しかり ハードエッジ
手拍子の寂しかりける盆踊 ハードエッジ
ゆふぐれは寂しかりけり息白き ハードエッジ

沖縄おきなわも暮れて日本の秋の暮 ハードエッジ

日本の秋:
日本の秋縁側に日の射して 岩城久治
日本の秋をアベベよ円谷よ ハードエッジ

屋上のコンクリートの秋の暮 ハードエッジ

コンクリート:

水草生ふコンクリートの川底に 古川朋子
コンクリの基礎の部屋割り紫木蓮 小池義人
さくら咲くコンクリートを煉つてゐる 加倉井秋を
川底もコンクリートや花筏 相子智恵

アスファルトもコンクリートも日の盛り ハードエッジ

コンクリートの亀裂泡立つ冬の海 右城暮石
健気なりコンクリートも大根も ハードエッジ

永遠はコンクリートを混ぜる音か 阿部青鞋

校庭こうていに人影長し秋の暮 ハードエッジ

校庭:

校庭に降つて湧きしや苗木市 鷹羽狩行
校庭に大きな花の水たまり ハードエッジ
校庭へ打ち広げたる花吹雪 ハードエッジ

校庭の納涼映画裏から見る 石原透

校庭を駐車場とし村祭 中本真人
校庭の隅までくれば昼の虫 安部元気

校庭の柵にぬけみち冬あたたか 上田五千石
校庭のすべての氷割られたる ハードエッジ

原つぱも喇叭らっぱも消えて秋の暮 ハードエッジ

原つぱ:
原つぱも不敗の独楽も疾うに無し 正木ゆう子

缶けりのかんからかんと秋の暮 ハードエッジ

缶けり:
罐蹴りの子に春愁のなきにしも 行方克巳
缶蹴の缶が夕立の中にかな ハードエッジ

町の子に町のさびしさ秋の暮 ハードエッジ

町の子:

街の子や雨後の溜りの水遊び 石塚友二
この町の子供ばかりの佞武多かな 増田手古奈

鴛鴦を見る町の子等みな貧しく 富安風生

残りたる子らで遊べり秋の暮 ハードエッジ

残りたる:

玉消えてシャボンの匂ひ残りたる 山口昭男
大き樹の売れ残りたる植木市 右城暮石
残りたるあられは鯉に雛納め ハードエッジ
花見茶屋畳み自販機残りたる 中本真人

朝顔の売れ残りたる日向かな 尾崎紅葉
爺死んで婆残りたる茅の輪かな ハードエッジ

晩鐘に散り残りたる暑さかな 加賀千代女
残りたる暑さも今はちりぢりに 相生垣瓜人
売れ残りたること知らず虫の声 ハードエッジ

一つ葉に初霜の消え残りたる 高濱虚子
球根の焦げ残りたる焚火跡 右城暮石

かあかあとからすが鳴いて秋の暮 ハードエッジ

鴉+鳴:

涅槃図のはるか遠くを鳴く鴉 馬場龍吉

鴉鳴いて遠くまで行く枯野かな ハードエッジ
鳴くたびに枝踏みゆるゝ寒鴉 高濱虚子
寒鴉かつかつ嘴を鳴らしけり 杜雨
寒鴉嘴あけてやがて鳴く 星野立子

青空に鴉また鳴く年の市 大峯あきら

新年の上野寂寞と鴉鳴く 正岡子規
初空を鳴きひろげたる鴉かな 井上井月
初烏鳴くべし鵯は黙すべし 相生垣瓜人

秋の暮さびしがり屋をとりこにす ハードエッジ

虜:
炎帝の虜となつてとぼとぼと ハードエッジ
空想の楽しき虜ハンモック 森田峠

ひともせば明るくなりぬ秋の暮 ハードエッジ

明るくな:

春風が吹いて明るくなりにけり ハードエッジ
春灯の明るくなりて暮れてをり 稲畑汀子
花筏川が明るくなりにけり ハードエッジ

夏の雨明るくなりて降り続く 星野立子

秋の暮橋を渡るはさびしかり ハードエッジ

橋を渡:

石橋を渡る長閑な教習車 ハードエッジ

初夏の橋を渡つてゆく風呂屋 ハードエッジ
新しき橋を渡りて帰省かな 遠藤若狭男
神輿いま危き橋を渡るなり 久米三汀
螢火や橋を渡れば真の闇 ハードエッジ

海の見える橋を渡りぬ秋の暮 ハードエッジ
家近く夜寒の橋を渡りけり 高濱虚子
花野きて又しも橋を渡りけり 上村占魚
月見舟くゞりし橋を渡りけり 前田普羅

木枯の橋を渡れば他国かな 尾崎一雄
頭巾二人橋を渡りて別れけり 正岡子規
探梅の橋を渡りて何もなし ハードエッジ

対岸もやがて途切とぎれて秋の暮 ハードエッジ

対岸:

対岸の蝶々が見えるほどの川 ハードエッジ
対岸の二階の灯る桜かな ハードエッジ
対岸の菜の花此岸の夕まぐれ 仁平勝
対岸の人に日当る柳かな 岸田稚魚
対岸の花にも届け花吹雪 ハードエッジ

対岸の熔接の火や梅雨晴間 村上喜代子

対岸に雨の秋灯夥し 西村和子
対岸の火として眺む曼珠沙華 能村登四郎

対岸の焚火を見つつ家路かな ハードエッジ
対岸と競ふが如き焚火かな ハードエッジ

ふる雨に流れ解散かいさん秋の暮 ハードエッジ

解散:
遠足果てし解散なほも走ることよ 中村草田男

空腹くうふく家路いえじしみじみ秋の暮 ハードエッジ

空腹:

空腹を宥めつつ朝寝坊かな ハードエッジ
空腹を彼に知らるな芹の花 池田澄子

空腹(すきばら)に雷ひゞく夏野哉 小林一茶
新茶よりはじまるけふの空腹か 加藤楸邨

空腹のここちよきまで秋澄みぬ 森澄雄

空腹や冬空に舞ふ葉一枚 小野あらた
ストーブの空腹の灰かかれをる ハードエッジ

鍋底なべぞこのテフロン黒し秋の暮 ハードエッジ

鍋底:

鍋底の泡がつぎつぎ昇って春 池田澄子

鍋底が炎に浮ぶ秋の暮 ハードエッジ

鍋底の丸くて平ら神無月 ハードエッジ
鍋底に猪のあぶらの薄茶色 島田牙城

胡麻ごま金平きんぴら牛蒡ごぼう秋の暮 ハードエッジ

点線の終点は点秋の暮 ハードエッジ

終点:
泥寒し市電終点より先は 宮津昭彦
大学構内バスの終点日脚伸ぶ 斉田仁

終点/自作:

終点で降りて歩いて春の月 ハードエッジ
終点はぶらんこのある寺の前 ハードエッジ

行く秋のバス終点の出湯かな ハードエッジ

短日の終点にゐる電車かな ハードエッジ
短日や終点のその先の車庫 ハードエッジ

まだりしことなき駅の秋の暮 ハードエッジ

降りし:

薄氷にふたたび降りし雀かな 皆川盤水

人降りし納涼船の灯を消さず 鈴木貞雄

バス降りし婆が一礼稲穂道 岸田稚魚

探梅や降りし電車の戻りゆく 佐藤至朗

この町に産科さんかあり秋の暮 ハードエッジ

産科:
春燈や激しく叩く産科の戸 澤田和弥

産科とふ名札はたのし春隣 中村汀女

 

◎初案20マイナス1句

 

◎推敲過程/テキスト/pdf

全3枚/164句

全然堂歳時記 秋 【秋の暮】 テキスト推敲

 

◎推敲過程/A4プリント 原稿/pdf

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◎推敲過程/A4プリント 加筆/pdf

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◎推敲過程/葉書プリント 原稿/pdf

葉書俳句プリント原稿 全9枚

全然堂歳時記 秋 【秋の暮】葉書推敲 原稿

 

◎推敲過程/葉書プリント 加筆/pdf

葉書俳句プリント加筆 全9枚

全然堂歳時記 秋 【秋の暮】葉書推敲 加筆

 

◎葉書俳句表側

 

◎データベース画面/桐v10

 

◎秋の暮秀句

知らぬ間に暮れてをりけり秋の暮 田中裕明
秋のくれ毎日あつて淋しけれ 三宅嘯山
われら皆むかし十九や秋の暮 高柳重信
遊び居る子を呼び返す秋の暮 正岡子規
別れてはひとりひとりの秋の暮 能村登四郎

泣けば子が何故に泣くかと秋の暮 野見山ひふみ
なみだつぶなむあみだぶつあきのくれ 中塚健太
さびしさのうれしくも有秋の暮 与謝蕪村
去年より又さびしいぞ秋の暮 与謝蕪村
さびしさや一人にあまる秋のくれ 正岡子規

さびしさを鳴子にひくや秋のくれ 正岡子規
淋しさに二通りあり秋の暮 三橋敏雄
地下を出て地下より暗し秋の暮 藤田湘子
火とともに消ゆる火の音秋の暮 神尾久美子
噴煙を噴火が照らす秋の暮 望月周

みえてゐて瀧のきこえず秋の暮 久保田万太郎
くつきりと黒々と皆秋の暮 岸本尚毅
鍍金より純金暗し秋の暮 小川軽舟
声のして戻りこぬ子よ秋の暮 福永耕二
疲労困ぱいのぱいの字を引く秋の暮 小沢昭一

アルバムの奥へ奥へと秋の暮 葦たかし
秋の暮老婆もろとも暮れにけり 草間時彦
日のくれと子供が言ひて秋の暮 高濱虚子
秋の暮四人子たれも文くれぬ 吉野義子
もう誰もゐない地球の秋の暮 小川双々子

髭のびて剃刀さびぬ秋のくれ 正岡子規
灯を点けて顔驚きぬ秋の暮 小川軽舟
足もとはもうまつくらや秋の暮 草間時彦
鉄板を踏めばごぼんと秋の暮 岸風三楼
日本がすつぽり入る秋の暮 後藤信雄

村々のその寺々の秋の暮 鷹羽狩行
山門をぎいと鎖すや秋の暮 正岡子規
乗りてすぐ市電燈ともす秋の暮 鷹羽狩行
乗り替へるだけの米原秋の暮 北川英子
秋の暮大魚の骨を海が引く 西東三鬼
馬の子はつながで行くよ秋のくれ 室生犀星

 

◎未練句/補遺/在庫処理

現地には現地の時間秋の暮 ハードエッジ
この先の一期一会よ秋の暮 ハードエッジ
人生を棒の如くに秋の暮 ハードエッジ
楽しくて秋、寂しくて秋の暮 ハードエッジ
ビルも車も影絵の如し秋の暮 ハードエッジ

しつとりと雨後の静けさ秋の暮 ハードエッジ
石けりの石を選びて秋の暮 ハードエッジ
石蹴りの石蹴りにけり秋の暮 ハードエッジ
理科室を片付けてゐる秋の暮 ハードエッジ
柿色もたちまち消えて秋の暮 ハードエッジ

沈黙は金の冷たさ秋の暮 ハードエッジ
青を失ひ白をも失くし秋の暮 ハードエッジ
鐘の音は音速で消ゆ秋の暮 ハードエッジ
自転車の父に乗せられ秋の暮 ハードエッジ
母がまだ元気なころの秋の暮 ハードエッジ

鍋底が炎に浮ぶ秋の暮 ハードエッジ
海の見える橋を渡りぬ秋の暮 ハードエッジ
都には四つ角多し秋の暮 ハードエッジ
屋上の吹きつ曝しの秋の暮 ハードエッジ
来てみれば屋上広し秋の暮 ハードエッジ

縁側の人の消えたる秋の暮 ハードエッジ
バックオーライバックオーライ秋の暮 ハードエッジ
山間の宿へ近づく秋の暮 ハードエッジ

以上です