ペア90
◎待つ人
春宵や夜の部を待つ人の列 ハードエッジ
バスを待つ人々春雨傘高低 成瀬正俊
待つ人のゐる明るさの春灯 片山由美子
噴水に待つ人に人来て去りし 嶋田摩耶子
月を待つ人皆ゆるく歩きけり 高濱虚子
人を待つ人に囲まれゆく聖樹 鶴岡加苗
日記手にレジ待つ人や我もまた ハードエッジ
◎表札
表札は佐々木信綱風光る 星野立子
表札は三橋敏雄留守の梅 三橋敏雄
近松といふ表札や近松忌 星野立子
表札の「鷹夫」へ菊を焚く烟 鈴木鷹夫
◎かさこそ
かさこそと紙の袋の雛あられ 長谷川櫂
かさこそと孤独なペンの夜長かな ハードエッジ
枕辺がかさこそするはクリスマス ハードエッジ
◎赤白黄
春灯下金平糖の赤白黄 高濱年尾
喝采や白粉花の赤白黄 ハードエッジ
◎消灯後
明日あると思ふ春燈消しにけり 三田きえ子
寒厨の灯を消し明日は花購はむ 岡本眸
◎ここは何処
ここは何処だらうか海苔が干してある 鴇田智哉
百合の香の中に目覚むるここは何処 鈴木鷹夫
眼が覚めてここは何処かな春隣 藤田湘子
◎雲間の光
雷雲の間に残光の空しばし 中村草田男
いなづまやなきとおもへば雲間より 炭太祇
雲間より稲妻の尾の現れぬ 高濱虚子
◎神事の裸
早苗饗の御あかし上ぐる素つ裸 高野素十
温泉の神に燈をたてまつる裸かな 飯田蛇笏
◎塵と蟻
塵とりにすこしかゝりて蟻のみち 大橋櫻坡子
塵取るや又つながりし蟻のみち 阿波野青畝
◎更地と空地
秋雨に草芽吹きたる更地かな ハードエッジ
駐車場くづれの空地いわし雲 押野裕
以上です