ペア87 湯ぶねより一とくべたのむ時雨かな 川端茅舎

ペア87

 

◎スポンジ

スポンジに春のうれひはなかるべし ハードエッジ

かの子忌のスポンジの泡とめどなし 奥坂まや

スポンジにグラスの泣ける青葉の夜 林昭太郎

 

 

◎大根の緑

春大根おろしすなはち薄みどり 鷹羽狩行たかは しゅぎょう

うすみどり大根おろしたまり来る 篠原梵しのはら ぼん

大根おろしにほのかなるみどりいろ 小澤實おざわ みのる

 

 

◎束ね髪

鳥雲とりくもに輪ゴム一つの束ね髪 若井新一

涼しさやわらで束ねし洗ひ髪 井上井月    せいげつ

時雨しぐるるや和紙で束ねし巫女みこの髪 戸恒東人とつね はるひと

 

 

◎一尺の花

菜の花の一尺にして花の数 ハードエッジ

一尺の木に花さかる木槿むくげかな 正岡子規  しき

面白おもしろや一尺の木も櫨紅葉はぜもみじ 正岡子規

 

 

◎渾身の花

菜の花に渾身こんしんの黄のありにけり 平井照敏    しょうびん

渾身の仕舞ひ芙蓉ふようといふべかり 中原道夫

 

 

◎明るき雨

ぎわの明るき雨や苗代田なわしろた 日野草城    そうじょう

連翹れんぎょうの明るき雨となりにけり 今井杏太郎    きょうたろう

明るき雨みみず急ぐがごとく伸ぶ 原田種茅   たねじ

あし刈つて明るき雨となりにけり 日原傳ひはら つたえ

 

 

◎夜の駅

秋の夜やこうと明るき通過駅 長谷川櫂はせがわ かい

あかあかと除夜の駅ある怒涛どとうかな 小川軽舟    けいしゅう

 

 

◎起点

警察の前にはじまる草の市 会津八一あいづ やいち

みちのくや駅に始まる秋祭 小川軽舟    けいしゅう

 

 

◎風呂問答

湯ぶねより一とくべたのむ時雨しぐれかな 川端茅舎かわばた ぼうしゃ

朝風呂へ雑煮ぞうにもちの数をきく 中村遠路

 

 

◎消しゴム屑

消しゴムの消屑けしくずをわが掃納はきおさめ 鷹羽狩行たかは しゅぎょう

消ゴムの屑吹きとばし春よ来い 辻田克巳   かつみ

 

 

以上です