ペア83
◎赤子抱く
麗かや赤子を抱いて家族連れ ハードエッジ
順番に赤子を抱く雛の客 抜井諒一
◎午後の日
午後の日の縁をそれゆく雛納め 片山由美子
敗蓮に午後の日射も三時まで 安住敦
午後の日の今燃えてをり干蒲団 高濱虚子
枯菊に午前の曇り午後の照り 桂信子
年の瀬に午後の日差を賜りぬ ハードエッジ
大年や午後の日に舞ふ塵ほこり ハードエッジ
◎容器の闇
真暗な壺中の歓喜桃を挿す 小檜山繁子
真つ暗な花瓶の中に蟻溺る ハードエッジ
熱湯を入れて湯婆の真暗闇 ハードエッジ
よく弾む手毬の中の真暗闇 ハードエッジ
◎白い夏
白きもの白く干されし夏はじめ 齋藤朝比古
白きもの白く塗り直されて夏 望月周
◎拡大版
緑蔭の奥に大緑蔭を成す 倉田紘文
広間よりさらに涼しき大広間 ハードエッジ
◎生と死
生年と歿年の間露けしや 田中裕明
俗名と戒名睦む小春かな 中村苑子
◎石段開始
石段のはじめは地べた秋祭 三橋敏雄
坂道に続く石段初詣 ハードエッジ
石段に一歩をかけぬ初詣 高濱虚子
◎火の釘
釘の出てをりし焚火の燠のあり 後藤夜半
釘の頭の赤く怒れる焚火かな ハードエッジ
火の中の釘燃えてゐる追儺かな 津川絵理子
◎藍と茜
初空の藍と茜と満たしあふ 山口青邨
藍すがし茜めでたし初日の出 ハードエッジ
◎初夢の加工
初夢のいくらか銀化してをりぬ 中原道夫
初夢を蒸留したる美酒ならむ 中塚健太
以上です