追記:反則/2020.8.29
ペア72
◎足跡硬軟
足跡のそのまま乾き春田かな 稲畑汀子
足跡のふやけて浅き水田かな 西山泊雲
◎先人の旅
ほしいまま旅したまひき西行忌 石田波郷
その旅の一笠一杖翁の忌 下村梅子
稲光一遍上人徒跣 黒田杏子
◎鹿脚屈伸
起つときの脚の段取り孕鹿 鈴木鷹夫
ひとつづつ脚たたみ鹿もう寝るか 相子智恵
卓袱台のごとく脚折り冬の鹿 小久保佳世子
◎部分集合
分け入れば水音ばかり春の草 加賀千代女
分け入れば水音 種田山頭火
◎虚実
化猫の人声つかふ涼しさよ 生駒大祐
足のある影絵の魚夜の秋 二村典子
蘭鋳や足腰弱き火星人 ハードエッジ
灯火親し英語話せる火星人 小川軽舟
◎遠出不能
旅に出ねばそれもあこがれ雲の峯 森澄雄
もう旅は無理か端居も更けにけり 岡本眸
◎強制再起動
螢籠昏ければ揺り炎えたたす 橋本多佳子
焚火かなし消えんとすれば育てられ 高濱虚子
◎無声無文字
マネキンの言葉知らねば涼しけれ 大木あまり
蟻・とかげ声持たぬ愛はげしかり 熊谷愛子
蟻強しこゑもことばも持たぬゆゑ 高柳克弘
◎直球勝負
反則のやうな青空真夏の喪 照屋眞理子
かなかなや一直線にくる寂しさ 正木ゆう子
死は何かどまん中なり雪ちらちら 金田咲子
◎愛妻
柚子湯出て慈母観音のごとく立つ 上田五千石
除夜の妻白鳥のごと湯浴みをり 森澄雄
以上です