追記:幾千万/2020.7.8、池二つ/2020.5.21
ペアリング69
◎やうな顔
水温むやうな顔して山羊の居り 大串章
明日も会ふやうな顔して卒業す 大塚次郎
蟇交む似たやうな顔うち重ね 岩田由美
そら豆のやうな顔してゐる子かな 星野高士
鵙のやうな辯舌蟇のやうな顔 正岡子規
鮟鱇の肝を潰したやうな顔 ハードエッジ
◎夜の羊羹
朧の夜羊羹黒き長四角 中戸川朝人
どこも夜水羊羹を切り分ける 山口優夢
◎蝶と花
春風の蝶々結びひっぱりぬ 池田澄子
蝶結びほどけば幾千万の蝶 対馬康子
解けやすきものにうすら氷花結び ハードエッジ
◎レジ
レジスター開きて遠き雪崩かな 山田露結
冷房とレジスターとが同じ色 山口優夢
暖房に毛皮とそれのレヂスター 中村汀女
がちゃちゃんと大つごもりのレジの音 高澤良一
日記手にレジ待つ人や我もまた ハードエッジ
◎二つの違い
大皿が二枚花烏賊桜鯛 ハードエッジ
皿二つそらまめとそらまめの皮 行方克巳
1枚で済ます場合は、
種を吐く葡萄と同じ皿の上 山口誓子
秋風や模様の違ふ皿二つ 原石鼎
池二つ涸れてその色異なれる 田中裕明
◎五六人
菜の花やスコップを手に五六人 山田露結
夕立や松とりまいて五六人 正岡子規
麦刈るや麦に沈める五六人 長谷川櫂
雨乞や棒のごとくに五六人 細川加賀
毒だみや夜遊びに行く五六人 ハードエッジ
五六人沖の満月へと泳ぐ 中村苑子
崖上に月見る聲や五六人 正岡子規
吉良邸に湯豆腐囲む五六人 ハードエッジ
葬送や雪踏み役の五六人 細川加賀
牡蠣船の入口にゐる五六人 ハードエッジ
左義長の焚き跡にまだ五六人 市堀玉宗
◎電波電磁波
新緑の夜空混み合ふ電波かな 仲寒蝉
電磁波の地球出てゆく星月夜 和田悟朗
◎東京タワー
東京タワー海より見ゆる夏料理 ハードエッジ
東京タワー見える茅の輪をくぐりけり 斉田仁
四万六千日東京タワーにも寄りて 小池康生
鯊釣るや東京タワー灯るまで 大島民郎
庭木刈つてみゆる東京タワーの灯 久保田万太郎
白粉花や東京タワー建設す ハードエッジ
毛皮着て東京タワーより寂し 小久保佳世子
灯の鋲の東京タワー年の暮 鷹羽狩行
◎一本つける
蚕豆に一本つけぬこと不服 稲畑汀子
その前に一本つけよ晦日蕎麦 鷹羽狩行
◎塩味
胡瓜揉み塩味の手となりにけり ハードエッジ
牡蠣すするわが塩味もこれくらゐ 正木ゆう子
以上です