ペアリング 61
◎春の明け方
春暁をまだ胎内の眠たさに 野澤節子
帰りなん春曙の胎内へ 佐藤鬼房
◎ポテチ
奔放なポテトチップス春疾風 ハードエッジ
かく反りてポテトチップス秋の風 桑原三郎
◎子分
風船を子分のやうに連れ回す 抜井諒一
褞袍着てなんや子分のゐる心地 大住日呂姿
◎不完全
ガーベラのラの埋もれたる苗札ぞ 神野紗希
修奈羅峠のお金の神様肩まで雪 小澤實
◎やり方、作り方
水切って醤油をかけて冷奴 高澤良一
縦に寝て横に手を伸べ昼寝人 岸本尚毅
手をあげて足を運べば阿波踊 岸風三楼
赤あげて横に広げて曼珠沙華 ハードエッジ
◎赤子に遠き
すやすやと赤子の眠る遠花火 ハードエッジ
ひつそりと遠火事あくびする赤子 西東三鬼
◎人類
人類を地球はゆるし鰯雲 南十二国
人類の若かりしとき葡萄摘 長谷川櫂
人類の旬の土偶のおっぱいよ 池田澄子
◎角の存在
ふつくりと桔梗のつぼみ角五つ 川崎展宏
ぼんやりと角の見えたる雑煮餅 小野あらた
◎柚子湯
柚子湯沁む無数の傷のあるごとく 岡本眸
眠たさの柚子湯に肌を慈しむ ハードエッジ
◎赤子誕生
三日まだ言葉を知らぬ赤子かな ハードエッジ
一と月の赤子なれどもお年玉 小圷健水
以上です