ペアリング56 太陽の育てし地球蝌蚪生まる 生駒大祐

追記:透かし模様・虫払・新年詠/2020.3.16、贋作のブルー2句/2020.3.13、妖物/2019.10.25

ペアリング56

◎老人の存在

向うにも老人のゐる春の暮 石田勝彦

もやもやと老人のゐる夏祓なつばらえ 小原啄葉    たくよう

ぶらんこに老人のゐる年の暮 角川春樹

 

 

◎おばけの話

春の夜のしょく消しておばけ物語 正岡子規  しき

長き夜をお化けと遊ぶ物語 ハードエッジ

  本物なら、
  出るかと妖物ばけものをまつ夜長哉よながかな 高井几董   きとう

 

 

◎ガス燃焼

ガスののきれいにそろひ春の雪 行方克巳なめかた かつみ

秋雨の瓦斯ガスが飛びつく燐寸マッチかな 中村汀女    ていじょ

ガスのの力揃ひて冬に入る 岡本眸    ひとみ

ガスの火の青き王冠時雨しぐれ降る 籬朱子まがき しゅこ

 

 

◎無人と静か

卒業歌とどく無人の教室にも 中塚健太

運動会静かな廊下ろうか歩きをり 岡田由季

 

 

◎どこへも行かぬ水

みづうみはどこへも行かず西行忌さいぎょうき 櫂未知子かい みちこ

秋風や何処どこへも行けぬうみの波 ハードエッジ

水郷すいごうのどこへもゆかぬ水の秋 鷹羽狩行たかは しゅぎょう

そのみづのどこへもゆかぬ火事の跡 大塚凱    がい

 

 

◎どこへも行かぬ人や物

日本はどこへも行かず春の海 加藤静夫

ふらここをぐにどこへも行けざるよ 辻桃子

内裏雛だいりびなどこへも行けぬ母に笑む 大柄輝久江おおがら き く え

豆の花どこへもゆかぬ母に咲く 加畑吉男かばた よしお

  名解説が下記にあり
  →加畑吉男の句/増殖する俳句歳時記

白玉しらたまは何処へも行かぬ母と食ぶ 轡田進くつわだ すすむ

赤い羽根つけてどこへも行かぬ母 加倉井秋を

返り花どこへも行けぬ木々のため ハードエッジ

 

 

◎地球とおたまじゃくし

太陽の育てし地球蝌蚪かと生まる 生駒大祐いこま だいすけ

あをあをと地球も蝌蚪のひもの中 波戸岡旭はとおか あきら

蝌蚪ほろぶのち満水の地球かな 仁平勝にひら まさる

 

 

◎変な

長梅雨の変なところに変な虫 ハードエッジ

颱風たいふうが残してゆきし変なもの 櫂未知子

 

 

◎にせもの

うららかや贋作がんさくのあをうつくしく 柳元佑太やなぎもと ゆうた

贋札にせさつかし模様に春の雪 ハードエッジ

贋物にせもののいく代めでたし虫払むしばらい 高井几董   きとう

贋作と分りてよりのさくらんぼ 波多野爽波はたの そうは

にせものときまりしつぼの夜長かな 木下夕爾   ゆうじ

贋作の青空冬の来るらし 田中裕明    ひろあき

この中に贋の新年詠しんねんえいがある 福田若之    わかゆき

 

 

◎ピンセット

露草つゆくさ分銅ふんどうつまむピンセット 小川軽舟    けいしゅう

はつふゆの分銅つまむピンセット 岡田由季

 

 

◎鍋の火

なべに火のすぐきいてくるしぐれかな 久保田万太郎

鍋物に火のまはり来し時雨しぐれかな 鈴木真砂女   まさじょ

埋火うずみびやつひには煮ゆる鍋の物 与謝蕪村よさ ぶそん

 

以上です