ペアリング45 水に浮く柄杓の上の春の雪 高濱虚子

追記:柄杓の氷/2019.11.22、圧倒2句/2019.11.20、雨だれの音/2019.6.18

ペアリング45

◎春の涙

泣いてゆく向ふに母や春の風  中村汀女    ていじょ

娘泣きゆく花の人出とすれ違ひ  星野立子

 

 

◎柄杓の雪と氷

水に浮く柄杓ひしゃくの上の春の雪  高濱虚子   きょし

伏せた柄杓に闇より出でて雪つもる  金子兜太   とうた

くらがりの柄杓にさはる氷かな  炭太祇たん たいぎ

 

 

◎水と泥

かもはしよりたらたらと春の泥  高濱虚子

噴水ふんすいの鶴の口より春の水  星野立子

 

 

◎花と食べ物

ゆで玉子むけばかがやく花曇はなぐもり  中村汀女

満開の花より白し塩むすび  ハードエッジ

 

 

◎日本スタート

日本語のはじめはいろはさくらちる  田中裕明    ひろあき

初空や日の本明くる櫻色さくらいろ  正岡子規  しき

 

 

◎雨の風景

雨だれの音の向ふに梅雨つゆはげし  篠原梵しのはら ぼん

雨だれの向うは雨や蟻地獄ありじごく  岸本尚毅   なおき

玻璃はり越しに雨粒越しに虹立つよ  岡田一実

 

 

◎性格変化

父はもう母をしからず冷奴ひややっこ  栗坪和子

秋茄子あきなすややさしくなりし母かなし  星野立子

 

 

◎ごつと

ごつとれごつと離れて冷しうり  阿部静雄

鶏頭けいとうに鶏頭ごつと触れゐたる  川崎展宏    てんこう

寒鯉のごつとぶつかり煙るかな  小島健

 

◎圧倒

帚木ほうきぎが帚木を押し傾けて 波多野爽波はたの そうは

 

霜柱しもばしら伸び霜柱押し倒す 右城暮石うしろ ぼせき

 

 

◎寺の良さ

真つ暗な寒さのよけれ東大寺  矢島渚男    なぎさお

雪のふるさみしさよけれ善光寺  西本一都

 

 

◎孤独死

孤独死のきちんとたたんである毛布  北大路翼きたおおじ つばさ

  →北大路翼/増殖する俳句歳時記

孤独死のぞうくじらや正月や  金子兜太

 

 

以上です