追加:花野/2019.7.4
◎期待と期待外れ
行く春や披露待たるる歌の選 夏目漱石
行く春や撰者を恨む歌のぬし 与謝蕪村
山蟻や定家の捨てし歌の数 南うみを
◎子の手と親の手
青き踏む左右の手左右の子にあたへ 加藤楸邨
歩く子の手に父母の手やチューリップ 嶋田一歩
両の手を父母に与へて七五三 ハードエッジ
◎花篝の始終
燃え出づるあちらこちらの花篝 日野草城
また一つ消えて最後の花篝 ハードエッジ
◎温度の発見
手をつけて海のつめたき桜かな 岸本尚毅
精霊舟降ろすや海のなまぬるき 南うみを
さしいれて手足つめたき花野かな 赤尾兜子
◎魔法の品
野を焼くや魔法使ひの杖をもて 西村和子
花種蒔いて魔法の水を掛けてやる ハードエッジ
◎重なりぬ
形代の男女ひらひら重なりぬ 山田みづえ
われの銀河なれの銀河へ重なりぬ ハードエッジ
◎ぎいと
川船のぎいとまがるやよし雀 高濱虚子
大鯉のぎいと廻りぬ秋の昼 岡井省二
山門をぎいと鎖すや秋の暮 正岡子規
ぎいと鳴る三つの添水の遅速かな 河東碧梧桐
◎キスの邪魔
鳥渡る接吻のとき鼻が邪魔 仲寒蝉
蔦枯るる壁くちづけに髪が邪魔 正木ゆう子
◎ひらひら落葉
ひらひらと深きが上の落葉かな 高濱虚子
高きよりひらひら月の落葉かな 日野草城
◎明るい古畳
朝夕に座右の冬光古畳 飯田蛇笏
北窓を開けて明るし古畳 ハードエッジ
以上です