ペアリング43 行く春や撰者を恨む歌のぬし 与謝蕪村

追加:花野/2019.7.4

ペアリング43

◎期待と期待外れ

行く春や披露ひろう待たるる歌の選  夏目漱石なつめ そうせき

行く春や撰者せんじゃうらむ歌のぬし  与謝よさ蕪村ぶそん

山蟻やまあり定家ていかの捨てし歌の数  南うみを

 

 

◎子の手と親の手

青き踏む左右さうの手左右の子にあたへ  加藤楸邨    しゅうそん

歩く子の手に父母ふぼの手やチューリップ  嶋田一歩

両の手を父母に与へて七五三  ハードエッジ

 

 

◎花篝の始終

燃え出づるあちらこちらの花篝はなかがり  日野草城     そうじょう

また一つ消えて最後の花篝  ハードエッジ

 

 

◎温度の発見

手をつけて海のつめたき桜かな  岸本尚毅   なおき

精霊舟しょうろうぶね降ろすや海のなまぬるき  南うみを

さしいれて手足つめたき花野かな  赤尾兜子あかお とうし

 

 

◎魔法の品

野を焼くや魔法まほう使ひの杖をもて  西村和子

花種はなだねいて魔法の水をけてやる  ハードエッジ

 

 

◎重なりぬ

形代かたしろの男女ひらひらかさなりぬ  山田みづえ

われの銀河なれの銀河へ重なりぬ  ハードエッジ

 

 

◎ぎいと

川船のぎいとまがるやよし雀  高濱虚子たかはま きょし

大鯉のぎいと廻りぬ秋の昼  岡井省二

山門をぎいととざすや秋の暮  正岡子規  しき

ぎいと鳴る三つの添水そうず遅速ちそくかな  河東碧梧桐かわひがし へきごとう

 

 

◎キスの邪魔

鳥渡る接吻のとき鼻が邪魔じゃま  仲寒蝉なか かんせん

つた枯るる壁くちづけに髪が邪魔  正木ゆう子

 

 

◎ひらひら落葉

ひらひらと深きが上の落葉かな  高濱虚子

高きよりひらひら月の落葉かな  日野草城

 

 

◎明るい古畳

朝夕に座右ざうの冬光古畳ふるだたみ  飯田蛇笏   だこつ

北窓を開けて明るし古畳  ハードエッジ

 

 

以上です