ペアリング42
◎金文字
啓蟄や汽罐車の金文字曇りゐて 鷹羽狩行
白靴の中なる金の文字が見ゆ 波多野爽波
◎七十歳
七十の母がかしづく雛かな 山田みづえ
七十の妹が掃く落葉かな 田畑比古
◎魚の反り
笹鰈焙れば反りぬ春の雪 南うみを
若鮎の強火に反りて木曾の宿 鷹羽狩行
◎鉄の籠
くろがねの籠の目荒し花篝 ハードエッジ
文化の日鉄の屑籠雨の中 飯田龍太
◎音がして
音がして火花は空へ花篝 ハードエッジ
音がして蟋蟀のゐる畳かな 岩田由美
あかつきや歩く音して籠の虫 岸本尚毅
◎人の多少
燃えさかる花の篝に人すくな 五十嵐播水
花篝衰へつつも人出かな 高濱虚子
◎地下鉄怠し
地下鉄の押し来る空気花疲 小川軽舟
地下鉄のぬるき風圧春うれひ 佐藤郁良
◎ボスの物
親方のあれが妾や鰊群来 小野寺夢城
天高しこれが社長のキャデラック 西村麒麟
◎変顔
顔じゅうを蒲公英にして笑うなり 橋閒石
風邪の面たはしの如くなりにけり 迷水
◎鉄の門扉
鉄の門の錆びたれば山脈青かりき 富澤赤黄男
倒れ居る鉄の扉や草いきれ 会津八一
紅薔薇や鉄の扉は凍つるとも ハードエッジ
以上です