追記:鉄板2句/2018.11.26、石鹸玉・チューリップ/2018.9.18、梵鐘/2018.9.7、麗か・落花・涼しさ/2018.9.3、線香花火/2018.7.31、椎の礫/2018.6.19
ペアリング9
◎離脱と命中
麗かや松を離るゝ鳶の笛 川端茅舎
一陣の落花が壁に当る音 岸本尚毅
梵鐘に発止とあたる落花かな 西村和子
涼しさや鐘をはなるるかねの声 与謝蕪村
釣鐘に椎の礫や秋の風 高井几董
木枯や鐘に小石を吹きあてる 与謝蕪村
※木枯=こがらし
飛んで来て鐘にぶつかる木の葉かな 岸本尚毅
◎一人遊び
しやぼん玉独りが好きな子なりけり 成瀬櫻桃子
猫の子のひとり遊びを見てひとり 細川加賀(かが)
ふらここやひとり遊びの子がふたり 西宮舞
チューリップ一人あそびの二人かな 行方克巳
◎丸善
丸善に檸檬わが家に桜餅 ハードエッジ
※檸檬=れもん
丸善にノートを買つて鰯雲 依光陽子(よりみつ・)
※鰯雲=いわしぐも
◎到達点
かき氷味無き場所に行き当たる 小野あらた
梨食うてすつぱき芯に至りけり 辻桃子
◎鉄板
鉄板を踏めばごぼんと秋の暮 岸風三楼(ふうさんろう)
鉄板を踏めば叫ぶや冬の溝 高濱虚子
鉄板を鳴らせし寒き歩中の歩 加倉井秋を
鉄板のガタンと鳴りぬ師走街 星野立子
※師走=しわす
◎即かず離れず
水音と即かず離れず紅葉狩 後藤比奈夫(ひなお)
焚火には即かず離れずして遊ぶ 後藤夜半
凍鶴の群れて即かざる離れざる 鷹羽狩行(たかは・しゅぎょう)
◎緩急
啄木鳥や落葉をいそぐ牧の木々 水原秋櫻子(しゅうおうし)
※啄木鳥=きつつき
木の葉ふりやまずいそぐないそぐなよ 加藤楸邨(しゅうそん)
線香花火火玉落ちるな落ちるなよ ハードエッジ
◎2つある
落葉はく箒に拳ふたつかな 清水良郎
※箒=ほうき、拳=こぶし
獅子舞の心臓ふたつもて怒る 大石雄鬼(ゆうき)
※獅子舞=ししまい
◎暖かなのは
手袋をとりたての手の暖かく 星野立子
セーターを脱ぎてセーターあたたかし 齋藤朝比古
◎東京は今
東京が瞬いてゐるクリスマス 茅根知子(ちのね・)
※瞬いて=またたいて
東京がじつとしてゐる初景色 黛まどか(まゆずみ・)
以上です